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第1019号(平成16年2月20日) |
―子ども予防接種週間を成功させよう―
「1歳になったら麻しんのワクチンを」
日本小児科医会公衆衛生委員会

接種率向上は急務
予防接種は,ワクチンを用いて免疫能を特異的に高めることで,後に侵入する病原体による感染症を成立させえない方法である.平成6年の予防接種法の改正で,従来,集団・義務接種であったものが,個別・努力義務になり,副反応に対し,より考慮されるようになった.ポリオ・ジフテリア・百日咳・破傷風・麻しん・風しん・日本脳炎の子どもを対象とした1類疾病と,結核予防法による結核との8疾患が定期の予防接種として認められ,別に高齢者を対象とした2類疾病のインフルエンザがある.
各疾患によって決まっている接種率以上にならないと集団発生を予防できず,感染症の危険を忘れがちではあるが,国民への日常的な啓発活動が必要である.これらの予防接種のなかで唯一問題となるのは麻しんである.麻しんは最も一般的な疾患でありながら,免疫がないと必ずいつかは発病する高い感染性をもち,原因治療はできずに高熱が続き,まれならずに肺炎・脳炎・脳症など重篤化し,重度重複障害となる亜急性硬化性全脳炎(SSPE)も100万人に8.5人,また,年間数十人も死亡している疾患である.米国などのように徹底したワクチン接種により撲滅した地域も拡大しており,わが国は麻しんの輸出国などと揶揄され,公衆衛生上の課題となっている.
次代を担う子どもの健全育成のための「健やか親子21」では,1歳6カ月健診時の麻しんの接種率を2010年までに95%にすることを目標にしている.この社会啓発運動は,行政とともに地域の多くの団体・機関と協働して達成することが望まれており,医師の役割は大きい.
麻しんワクチン接種率の動向
厚生労働省の麻しん予防接種実施率は,定期接種の実数を分子とし,標準的接種年齢の12カ月人口を分母とした算出法をとり,95%を超えている.予防接種研究班は分子は同じだが,分母に接種漏れ者を加えており,81%という接種率となっている.ほかに崎山は累積接種率と接種完遂率を算出している.しかし,いずれも実態を正確には表していないきらいがある.
そこで,日本小児科医会は,平成14年度の1年間に1歳6カ月健診受診者中の接種済み者を各県1─2カ所全75地区で調査した.その結果は,80.5%の接種率であった.横浜でも,平成11年度(32,942人)と13年度(36,154人)に麻しん予防接種予診票から接種者を月齢ごとに集計し,接種時期は12〜17カ月が全体の82%(71%),18〜23カ月が8%(15%)となり,12〜23カ月の接種者総数を当該1歳人口で除すと96%(85%)となっており,いずれも著明に上昇していた(( )内数字は前回調査結果).しかし,いまだ先の数値目標からは乖離している.
麻しんワクチンをはじめ予防接種勧奨の種々の取り組み
麻しん予防接種率の向上には,日本医師会・日本小児科医会の作成したポスターの掲示,乳幼児健診や日常診療のなかで,「満1歳に達したら麻しんワクチン接種を」との勧奨,1歳6カ月と3歳児健診での接種漏れ者への勧奨,保育園・幼稚園入園時の勧奨などあらゆる機会に市民へのPRをしている.
また,平成14年3月の学校保健法の一部改正に従い,小学校の就学時健診において予防接種状況調査をすることとされた.しかし,自治体によっては不徹底の地域も多く,校医として確実に実施するように指導し,未接種者に対して強力に接種勧奨をする必要がある.
その一環として,3月初旬に子ども予防接種週間が行われることとなった.この機会に各地域で特色ある活動が継続的に展開されることを期待したい.各地の小児科医会・外来小児科研究学会が中心に「はしかゼロ作戦委員会」「はしかゼロプロジェクト」などと銘打って活発に展開し,また,沖縄のように行政と協定して,「沖縄県麻しん発生時対応ガイドライン」を作成している地域がある.
診療機関においても種々の工夫がなされている.例示すると,受診時に麻しん未接種者がいたときにカルテの表に大きくマークをつけ強力に接種勧奨をする,診察券の裏面に啓発表示をする,インターネットや電話案内で情宣するなど,あらゆる機会にアピールしている.生活環境の変化に呼応して,休日・夜間に接種を実施している診療所も出現している.
学生が感染源となったり,重症化することもあり,看護学校・医学部などの医育機関,保育専門学校等の幼稚園保育園関係養成機関では,抗体価測定のうえでワクチン接種をする.さらに,全従業者・新人にも同様な対応を行う必要がある.園医・校医・産業医として指導してほしい.
新たな予防接種に関する情報
昨年暮れに厚生労働省より「予防接種の実施について」の新たな通知,同時に,予防接種ガイドライン検討委員会より新たなガイドラインが発行された.それらの主な変更点について列記する.
1. 実施計画の策定について
「1歳6カ月児健康診査,3歳児健康診査において接種歴を確認」としていたところを,文部科学省と協議した結果「就学時健康診断等」を加えた.
2. 実施要領の名称変更
インフルエンザについては,別途,インフルエンザ予防接種実施要領が策定されていることから,「予防接種(一類疾病)実施要領」と名称を変更した.
3. 麻しんの予防接種の標準的な接種年齢
平成15年3月にとりまとめられた「今後のポリオ及び麻しんの予防接種に関する提言」(ポリオ及び麻しんの予防接種に関する検討小委員会)に基づき,麻しんの予防接種の標準的な接種年齢を「生後12月から生後24カ月」としていたところを「生後12月から生後15月」に変更した.
4. 個別接種における保護者の同伴
平成11年7月にとりまとめられた予防接種問題検討小委員会報告書に基づき,小学生以下については,保護者の同伴が原則であることを明記したうえで,中学生については,保護者が同伴しない場合の個別接種を,保護者に別途連絡をとって,予診結果の説明を行い,保護者の同意が確認できる場合に認めることとした.なお,保護者が同伴しない場合は,保護者のサイン欄には,事前に保護者がサインをするとともに,予診後,被接種者本人のサインも併せて記入することとする.
5. 予診票の保管について
予診票の保存期間を5年間と設定した.
子ども予防接種週間を皆さんの力で有意義なものに
入学・進級・就職の直前の平成16年3月1日からの1週間に,予防接種の関心を高め,接種率を上げようとするものです.医師各位の絶大なるご協力を切望いたします.
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