日医ニュース
日医ニュース目次 第1029号(平成16年7月20日)

勤務医のひろば

地方の勤務医不足はいつまで続くのか

 医師過剰時代の到来が叫ばれて久しいが,地方では,いまだ医師不足の状況が継続しており,特に,勤務医の不足は極めて深刻である.
 プライマリ・ケアを重視した新医師臨床研修制度がスタートしたことにより,多くの若い医師が地域医療に興味をもち,地方で働いてくれることを期待するが,まだまだ難しいのでは,という危惧もある.
 新潟県では,大学病院を含め十二の管理型(単独型)臨床研修病院が合同ガイダンスを開催し,本年度は九十九名の研修医が県内での研修を開始した.本来であれば,新たな医師が育ってくれば,やがて医師は充足していくはずであるが,各診療科とも当分の間,勤務医の充足は難しいのが現状である.
 なぜ,地方における勤務医不足は解消されないのであろうか.
 若い勤務医のほとんどは,責任感に燃えて精一杯がんばっている.しかし,個人の努力のみではやがて疲れてしまう.休暇もとれない,当直の翌日も通常勤務が欠かせない,困った患者も気軽に相談できない,学会へも行けず,新しい医学情報に触れることもままならない.大量の書類の記載も重労働である.現在の状況が改善されないかぎり,やがて多くの勤務医は疲れ果てて開業する.そしてまた勤務医不足,まさに悪循環である.
 昨今,本邦では,総医療費の削減が大きな目標とされている.日本の医療水準は平均寿命世界一が示すように極めて高いが,総医療費は欧米に比し,必ずしも高くない.これもまた,恵まれているとはいえない状況のなかで勤務医ががんばっている証拠ではないか.
 地方の勤務医不足を解消するには,その就労状況,労働条件を改善し,支援体制を整え,勤務医が生き甲斐を持って働ける環境の整備が不可欠である.

(新潟大学医歯学総合病院医科総合診療部教授 鈴木栄一)

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