日医ニュース
日医ニュース目次 第1034号(平成16年10月5日)

植松会長
東北医師会連合会総会特別講演

混合診療に対する結束を呼びかける

 小泉純一郎首相の指示により,混合診療の解禁に向けた動きが活発化するなかで,植松治雄会長は,九月十二日,山形市で開かれた東北医師会連合会総会において特別講演を行い,混合診療に対する考え,今後の活動方針などを次のように語った.

「地域医師会がなければ地域医療は成り立たない」(植松会長)
 小泉首相が進めようとしている「医療改革」は,いかに医療費を抑制し,公的医療保険の負担を少なくできるかということが根本にあり,そこには医療をどのように良くしていこうかという話は,まったく出てこない.
 しかも,その方針は,経済財政諮問会議,規制改革・民間開放推進会議など,医療関係者がまったく入っていないところで議論され,小泉首相のトップダウンで決定されている.こういう構造のなかで,われわれの考えを実現させるということは,大変難しい状況にあり,私どもは,ここが一番の問題であると考えている.
 その規制改革・民間開放推進会議から,九月三日に,年末までに重点的に検討すべき十四の事項が示された.
その内の六つの事項は,医療に関連した事項となっており,彼らが,医療における規制緩和というものに,いかに大きな関心を持っているかが分かる.

混合診療解禁がもたらすもの

 そのなかの一つに,混合診療の解禁というものがある.
 混合診療を解禁すれば,短期的には医療機関の収入が増えることもあり,その点だけを捉えて,医師のなかにも,混合診療の解禁に賛成する人たちがいる.
 しかし,長期的な視点で,このことが将来どのような事態をもたらすのかということを考えてみると,これは国民皆保険制度の形骸化ということにつながっていく問題であり,われわれとしては,認めるわけにはいかない.
 混合診療を解禁すれば,国民の受診時の負担は増える.負担が増えればどうなるかというと,国民は,その費用負担に備えるために,今,テレビなどで宣伝している民間の医療保険というものに頼らざるを得なくなってくる.
 しかし,民間で売っている医療保険は,必ず会社がけるように設定がされるわけで,会社側はなるべくリスクを小さくし,利益を安定的に得るために,リスクの大きい人は保険に加入させない,あるいは保険料を高く設定するという形で対応してくる.
 その結果,重い病気の前歴がある人,特に,高齢者は,疾病にかかるリスクが高いので,こういう方々は,保険に入れない,あるいは,保険料を高く設定するという事態が必ず起こってくる.保険者が被保険者を選ぶという逆選択が起こってくるわけである.
 つまり,現在は国民皆保険制度の下で平等に受けられている医療というものが,混合診療を解禁してしまうと,貧富の差によって,受けられる医療が違ってくるということが起きてしまうことになる.
 このようなことが良いことなのか悪いことなのかということは明らかなことである.そのような点を国民,あるいは混合診療の解禁に賛成している一部の医師に理解してもらうため,現在,いろいろな機会を通じて,話をしているところである.

日医の考えを実現させる方策

 政府の方針が,首相のトップダウンで決定されてしまう状況のなかで,われわれの考えを実現させていくにはどうすれば良いのかを考えたとき,従来行ってきた国会議員の先生方を通じてのロビー活動だけでは,なかなか困難な面も出てきている.
 それならばどうすれば良いのかということになるが,今の小泉首相の拠り所は,国民の支持率であり,国民がどちらを向いているのかということに一番気を使っている.
 やはり,広く国民に,われわれの考えを理解してもらい,国民はわれわれと同じ考えであるということを小泉首相に示していくのが,一番の力になるのではないかと考えている.
 そのためには,私どもの声,話というものを国民に聞いてもらえるようにしなければならないが,一番大切なことは医師個人,あるいは医療機関として安全で良質な医療を提供していくことである.
 それに加えて,環境問題など,国民が抱えているさまざまな問題に対して,われわれが関心を示し,積極的に発言し,時間はかかるかも知れないが,市民運動に参画して,プロフェッションとしての知識を国民に提供していくといった地道な活動をしていくことが,大事になるのではないかと考えている.
 また,各医師会が地域で行っている地域医療活動に関しても,行政が提供しているように見えるが,実際には,医師会の存在なくしては成り立っていかないのだということを,国民にもっとアピールし,医師会というものに対する国民の悪いイメージを払拭していくことも必要なのではないだろうか.
 そういう意味で,医師会の原点である地域医師会,あるいはそのまとめ役としての都道府県医師会の役割は,ますます重要になってくると思われる.

植松会長/東北医師会連合会総会特別講演/混合診療に対する結束を呼びかける

国民の声を政府に届ける

 そこで,今後はそういうルートを使って,現在崩壊の危機に瀕している国民皆保険制度を守る,特に,当面は混合診療の解禁,あるいは株式会社の医療経営参入を防ぐというキャンペーンを実施したいと考えている.
 そのために,現在,執行部内で,キャンペーンをどのように展開していくかという議論を始めたところであり,キャンペーンに使用してもらうための資料を準備し,都道府県・郡市区医師会にも送付する手はずを整えているところである.
 いずれにしても,これからが大変重要な時期であり,最大のヤマ場は,小泉首相および規制改革・民間開放推進会議もいっているように,十一月末から十二月になるだろう.
 それまでに,われわれが,いかに国民の声を政府に届くような大きな声の集合体にできるかということが,一つの大きな課題であるし,私ども執行部に課せられた最初の大きな仕事になるのではないかと思う.
 その趣旨を十分理解いただき,国民のため,また,日本の医療のため,協力してもらいたい.


 なお,その後,日医は,九月二十一日開催の第七回理事会で,会内に櫻井秀也副会長をリーダーとする「国民皆保険制度を守るプロジェクト」を作り,市民団体や関係団体が参加する「国民医療推進協議会」を設置することを決定.
 さらに,都道府県・郡市区医師会にも,「医療推進協議会」を設置し,国民皆保険制度を守るための運動に協力してもらうことになった.

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