日医ニュース
日医ニュース目次 第1036号(平成16年11月5日)

視点

食の安全と安心を求めて

 BSE(牛海綿状脳症)やいわゆる健康食品による健康被害等により,食の安全と安心を求める国民の声が,近年とみに高まってきている.
 昨年,食品安全基本法が制定されるとともに,内閣府に食品安全委員会が設置され,科学的な知見に基づくリスク評価が行われている.しかし,アマメシバ等による健康被害の例にみられるように,健康食品により健康増進の効果があるかのような,また,あたかも疾病が治るかのような誇大広告がインターネット等で氾濫している現状にある.
 厚生労働省では,『健康食品』に係る制度のあり方に関する検討会」を開催して検討を重ねてきたが,本年六月に提言をとりまとめた.
 提言には,(1)「条件付き特定保健用食品(仮称)」の導入等,表示内容の充実(2)「ダイエット用食品」等における栄養機能食品の表示の禁止等,表示の適正化(3)錠剤,カプセル状食品に係る「適正製造規範(GMP)ガイドライン」の作成等,安全性の確保(4)正しい情報提供の確保等が盛り込まれ,これを受けて,年内には改正通知等が出される予定になっている.
 健康の基本は食にあり,国民の健康で良好な食生活の実現のためには,健康食品に頼るのではなく,主食,主菜,副菜を基本に,バランスのとれた食事から栄養を摂ることが重要であることを,日医は,厚生労働省の検討会でも強く主張した.さらに,国民に対して,食を通じた家族形成や人間性の育成,すなわち食育が必要であることの啓発が求められている.現在,食育基本法案が,議員立法で国会に提出され,継続審議となっている.
 健康食品による健康被害発生の一因には,錠剤,カプセル等が食品として認められたことにより,凝縮されたものを大量に摂食しやすくなったことが挙げられる.食中毒とは違い,潜在化している可能性があり,ひとたび発生すれば,広範囲に多くの人に健康被害が生ずる恐れがあることに問題がある.
 以上のような現状に鑑みて,日医では,会内の国民生活安全対策委員会で,健康食品をはじめとする飲食物による健康被害の早期発見のためのシステムづくり等を目指して,検討を開始する予定である.
 重要なのは,健康被害の早期発見と,拡大を未然に防ぐことである.行政,マスコミは,原因等が確定してからでないと,なかなか動かない.健康被害の拡大防止のためには,疑いの段階での迅速な対応が必要である.
 ついては,かかりつけ医は,原因不明の肝障害,アレルギー症状等を呈する患者に対する際は,飲食物による障害かどうかを念頭におく必要があるといえよう.

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