日医ニュース
日医ニュース目次 第1042号(平成17年2月5日)

青木重孝常任理事が語る
「准看護師養成制度は維持・存続させる」

 昨今,新卒看護職の大幅な減少が見られ,地域医療への影響が懸念されている.そこで,今号では,医療関係職種担当の青木重孝常任理事に,「准看護師養成制度」「外国人看護師受け入れ問題」を中心に,看護職養成に対する日医の方針を説明してもらった.

青木重孝常任理事が語る/「准看護師養成制度は維持・存続させる」
 准看護師養成所は,現在,平成十四年のカリキュラム改正およびそれに伴う教員増,さらには補助金・生徒数の減少,実習施設の確保難等によって,非常に苦しい運営を強いられている.このような状況から,ある医師会では,入学希望者があるにもかかわらず,会館を建て直す際に併設していた看護学校をやむなく閉校せざるを得なかったという残念な話も聞いている.
 そこで,日医では,昨年の六月から九月にかけて,都道府県医師会および看護学校を運営する郡市区医師会を対象に,看護職養成の実情と,各医師会の看護職養成に関する考え方を改めて把握するための調査を実施した.
 それによると,学校運営のために医師会本体からの資金の繰り入れを行っているところは,半数以上にのぼり,特に,准看課程では三百万円以上の繰り入れを行っているところが七割を超え,医師会本体の運営を圧迫しかねない状況にあることが分かった.しかし,そのような苦しい状況のなかでも,多くの医師会から,「准看護師の役割は大きく,今後も養成は続けていく」との意見をいただいたこと(図)は大変ありがたいことであり,心強いかぎりである.

図 看護職養成に関する今後の運営見通し
(日医・看護職養成に関する調査より

日医の方針に変わりはない

 日医の准看護師養成制度に対する考え方であるが,(1)地域医療の多くの部分を准看護師が支えているという現状があること(2)看護職の職域は,近年,看護から介護,福祉へとその裾野を広げており,ますますその需要が増え続けることが予想できることなどから考えても,本制度は維持・存続すべきであると考えており,その考えに変わりはない.
 今後の方針についてであるが,去る一月二十一日に開催された都道府県医師会医療関係者担当理事連絡協議会でも説明させていただいたが,以下のようなことを考えており,この方針のもとに,努力する所存である.
 公的補助金については,引き続き,国にその増額を求めていく.平成十七年度の厚生労働省予算では,平成十六年度と同額の予算(約五十七億円)が看護師等養成所運営費として確保される予定となっているが,昨今の経済状況から見ても,再来年度以降については,予断を許さない状況にある.
 そのようななかで,現在,厚生労働省では,平成十八年から二十二年までの看護職員の需給見通しを策定する作業が進められている.この需給見通しは,各都道府県が算定した需要数・供給数を積み上げた数値を基に策定されることになっているが,今後,補助金の増額を求めていくためには,看護職員が不足しているという現状を示すことが重要になると考えている.都道府県医師会には正確な需給見通しが出せるよう,協力をお願いしたい.
 また,看護制度およびその養成のあり方については,改めて会内の医療関係者対策委員会等で検討を行っていく.具体的には,養成カリキュラムや入学金・授業料のあり方について日医推奨のモデルを作成したり,実習施設のあり方について相談にのっていきたい.さらに,奨学金についても,奨学金を学生に出すことにより,地元に定着してもらえるというメリットも考えられることから,自治医科大学や防衛医科大学校等の奨学金制度を参考として,奨学金モデルを作成することを検討している.
 加えて,現在,日医から,一校当たり一律十万円出している補助金についても,もっと効果的な方法はないか考えていく.
 その他,昨今,准看護師試験日と看護師国家試験日を同一化する動きが見られるが,この件については,看護師国家試験受験資格者から准看護師試験を受験するという正当な権利を奪うものであり,問題があると考えている.准看護師試験日と看護師国家試験日を同一化する必要性は認められず,このような動きについては,都道府県医師会でも注意していただきたい.

合意内容の具体化は今後に

 日本とフィリピンの経済連携協定の政府間交渉の結果,昨年の十一月,首脳レベルでの大筋合意に至り,フィリピン人看護師を日本に受け入れる方向性が固まった.
 合意内容は,一定の要件を満たすフィリピン人の看護師候補の入国を認め,日本の看護師国家資格を取得してもらうというものである.具体的には,フィリピンの看護師資格者で看護経験を有する者を対象として,日本語や看護等の研修を受けた後に日本の国家試験を受験し,合格すれば,これまで四年に限られていた在留期間が三年ごとに更新できることとなる(ただし,三年の間に合格できなかった場合には帰国してもらう).
 ただし,これらは,あくまでも大筋の合意であり,今後,国会等での審議を経て,正式決定されることになる.また,フィリピン人看護師の労働条件等詳細な事項については,関係者間で検討が進められることになっている.
 検討の場には,日医から私も参画する予定となっており,積極的に意見を述べていきたい.

国は適切な環境整備を

 国民の生命・健康を守ることは国の責務であって,本来,自国の看護職は自国の責任で養成するというのが大原則である.したがって,国はまず国内の看護師・准看護師の養成,さらにはその養成環境の整備に力を入れるべきである.
 しかしながら,今回の合意は国家間の取り決めでもあり,また日本語で日本の国家試験を受験し,合格した者については,ある程度の資質が担保されたものと考えられることから,今回,外国人看護師の受け入れを認めることとした.
 医療は,いうまでもなく,コミュニケーションや文化・生活習慣・宗教等の理解が非常に重要な要素となる.そのため,果たして,外国人看護師が日本のチーム医療のなかで,安定した医療・看護を提供できるのか,現段階では疑念を持たざるを得ない.そのうえ,看護師不足の先進国が,外国から看護師を受け入れたために,逆に看護師派遣国の看護職不足を引き起こしてしまったという例もあり,より慎重な対応が必要になってくるのではないだろうか.
 また,実際に受け入れが始まった際には,医療の提供部分だけではなく,不法就労等の不適切な事態が起こらないよう,環境整備を図ることも重要な課題になると考えている.

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