日医ニュース
日医ニュース目次 第1042号(平成17年2月5日)

日本医師会市民公開講座
テーマ
「動物由来感染症 ペット病からSARSまで」

日本医師会市民公開講座/テーマ/「動物由来感染症 ペット病からSARSまで」

 日本医師会市民公開講座「動物由来感染症〜ペット病からSARSまで〜」が,一月十六日に日医会館大講堂で開催された.当日は,雨天というあいにくの天候にもかかわらず,参加者は四百四十四名と大盛況だった.
 雪下國雄感染症危機管理対策室長の総合司会で開会.冒頭,寺岡暉副会長が,「最近の社会環境やペット飼育の多様化に伴う世界的な感染症の変化,特に,SARSや鳥インフルエンザの問題,イグアナやミドリガメなどの輸入動物のペット化に伴う問題,オウム病,エキノコックス症に加え,狂犬病輸入が懸念されるなか,人と動物の共通の感染症について,正しく理解することが大切である」とあいさつし,日医が作成した「動物由来感染症ハンドブック」についても紹介した.
 引き続き,四人のシンポジストによるシンポジウムが行われた.
 岩本愛吉東京大学医科学研究所教授は,動物由来感染症を病原体と宿主の関係で捉え,野生動物から人に直接感染するラッサ熱,エボラ出血熱,野生動物から蚊を介して人に感染するウエストナイル熱,野生動物から家畜を介して人に感染するニパウイルスやSARSについて概説した.
 岡部信彦国立感染症研究所感染症情報センター長は,動物由来感染症の概要,輸入禁止動物の紹介に引き続き,鳥インフルエンザの発生分布,新型インフルエンザウイルスの登場の仕組み,鳥インフルエンザウイルス対策や感染リスクについて説明した.
 たか山直秀都立駒込病院小児科部長は,海外旅行で感染する機会のある動物由来感染症を概説した.特に,狂犬病について,世界の発生状況や海外旅行先で犬に咬まれた際の対処法について,事例紹介を交えて解説し,狂犬病ワクチン接種や旅行時の服装など,海外で狂犬病から身を守るための注意点を説明した.
 兼島孝埼玉県みずほ台動物病院長は,ペットの飼育状況や感染経路を説明した後,主な動物由来感染症であるパスツレラ症,ネコひっかき病,オウム病,皮膚糸状菌症などについて解説した.動物由来感染症には,人,動物ともに症状が出るもの,人には症状がなく動物だけ症状が出るもの,動物には症状が出ず人に症状が出るものがあることを示し,獣医師と医師との連携の重要性を強調した.
 その後,各シンポジストから,海外に出かける際に推奨される予防接種や,ペット自身を病気から守るための予防ワクチンや寄生虫対策の必要性が解説され,動物からの感染を防ぐポイントとして,(一)病気に対する正しい知識をもつ,(二)動物との過剰な触れ合いを避ける,(三)動物に触ったら,手洗い,うがいを行う,(四)動物の飼育状況を清潔にする,(五)エキゾチックアニマルは,なるべく飼わないなどの説明がなされた.
 最後にフロアとの活発な質疑応答が行われた後,閉会となった.
 なお,本公開講座の模様は,三月二十六日(土)にNHK教育テレビ「土曜フォーラム」(二十三時三十分から)で七十分番組として放送予定である.

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