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第1051号(平成17年6月20日) |
医療保険制度改革における日医の考え方
新しい高齢者医療保険制度を提言

平成十八年の医療保険制度改革に向けた議論が本格化するなかで,植松治雄会長は,六月七日,櫻井秀也副会長,松原謙二常任理事とともに記者会見に臨み,新たな高齢者医療保険制度の創設など,「医療保険制度改革における日医の考え方」を説明した.
| 医療費の総額抑制を否定する植松会長(中央)と,櫻井副会長(左)・松原常任理事(右) |
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植松会長は,冒頭,今回の会見を行った理由について,「経済財政諮問会議から,六月二十日に『経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太の方針)』が出されることになっているが,そのなかでは,社会保障費の総額抑制など,社会保障に関することにも言及されている.
このようななかで,日医としては,医療保険制度改革について,どのような考えを持っているのかということを,国民にいち早く示す必要があると考えていた.このため,医療保険チームで検討を行い,本日の常任理事会で協議を行ったうえで,制度改革に対する考え方を骨子として取りまとめ,公表することとした」と説明,その実現に向けての理解と協力を求めた.
医療改革に当たっての基本方針
つづいて,松原常任理事が,資料(下掲)に基づき,次のように各論の説明を行った.
医療保険制度改革に当たっては,何よりもまず国民皆保険制度を堅持することが重要であり,今回の考え方も,これを前提として取りまとめられている.
経済財政諮問会議等から提案されているGDP(国内総生産)等の経済指標を使って,医療費の伸び率を管理しようとする考え方については,必要かつ安全な医療の確保を阻害する点からも容認することはできず,今後も引き続き,その導入に反対していく.
制度改革に当たっての最重要課題とされる高齢者医療保険制度については,国民の不安を払拭するためにも,新たな制度を構築する必要があると考えている.その制度は措置的なものではなく,高齢者にもそれなりの負担をしていただく保険制度として運営していくべきであり,その際には自助・共助・公助を基本にすべきと考えている.
対象者については,平成十五年三月に閣議決定された「医療保険制度改革の基本方針」にも示されているが,従来の主張通り,七十五歳以上の高齢者としたい.保険者については,医療保険制度はそもそも国の基盤をなすもので,その運営に当たっては国が責任を持つべきと考えているので,国としたい.しかし,昨今の地方分権の流れもあり,将来的には都道府県単位にすることについても検討する余地があるのではないか.
財源については,従来,日医では,患者自己負担一〇%,公費負担九〇%と主張してきた.しかし,今回,考えを取りまとめるに当たって試算を行ったところ,今現在七十五歳以上の高齢者のすべてが,平成十九年に新たに創設する高齢者医療保険制度に加入した場合,その全部を公費で賄おうとしても財源が足りないことが判明.このことから,その財源構成については,患者自己負担一〇%,保険料一〇%(ただし,低所得者への配慮を行う),残りについては,公費ならびに国民的共助によって対応することとした.高齢者の経済状況は,それなりの収入があるとはいっても,決して多いものではないことから,少なくとも現状の患者自己負担を超えるものであってはならない.
また,制度の創設に当たっては,高齢者の特性ならびに個々の疾患に配慮することは当然であるが,医療内容が年齢によって急に規制されることがないようにすべきであり,今後については,生活習慣病対策をさらに推進し,高齢者になっても健康を維持できるように高齢者医療の充実を図っていくことが必要となる.
一般医療保険制度の改革については,まず,現在,被用者保険にとって大きな負担といわれている,老健拠出金ならびに退職者給付拠出金は廃止することとしたい.その場合に,被用者は退職後,すべて国民健康保険に加入してもらうこととし,患者自己負担以外の給付金は,保険料および,被用者保険による制度間の共助によって賄うこととする.その際には,財政調整が必要となるが,どのような財政調整が良いのかについては,保険者の意見を十分聞きながら対応していきたい.
医療保険制度と介護保険制度の統合問題についてであるが,医療保険制度は国民に必要十分な医療を給付するため,現物給付を前提としているのに対して,介護保険制度は現金給付を前提としており,二つの制度はまったく違うものとなっている.このため,制度的に一緒にすることはできないといわざるを得ない.
| 記者会見会場 |
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医療費の伸び率管理は認めない
その後の質疑応答のなかで,植松会長は,医療費の伸びをGDP等の経済指標を使って抑制しようとする考え方について,「医療は必要なときに提供すべきものであり,経済が悪化しているからといって,それを抑制できるものではない.医療費の総額を抑制することによって,どのようなことが起きてしまうかは,イギリスの例をみれば明らかだ.この理論は現実的ではない」と批判.そのうえで,現在,医療費の自然増の中身を分析中であることを明らかにし,その伸びの要因を特定することによって,医療費の適正化を図っていきたいとした.
また,来年の診療報酬改定については,「国民が今一番求めているものは,医療の安全を実現することであるが,そのためには,それなりの財源が必要となる.国が本気で医療の安全の実現を図ろうとするならば,来年の改定がマイナスになることはあり得ない」と述べた.
なお,今回の発表は,あくまでも日医の医療保険制度改革に対する考え方の骨子についての説明であり,具体的数値を基に検証した結果を含めた詳細については,後日改めて発表する予定となっている.
| 医療保険制度改革における日本医師会の考え方 |
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1.医療保険制度改革における基本方針
- 国民皆保険制度を堅持する.
- 新たな高齢者医療保険制度を創設し,国民の不安を払拭する.
- 高齢者医療保険制度においては,高齢者の特性ならびに個々の疾患に配慮するが,医療内容が年齢によって急に規制されるものであってはならない.
- 高齢者医療保険制度においても保険制度であることを堅持し,自助・共助・公助を基本とする.
- 医療保険制度は国民に必要十分な医療を給付するため現物給付によって成り立っている.現金給付である介護保険制度とは統合し得ない.
- GDP等の経済指標を基本とする医療費の伸び率管理は,必要かつ安全な医療の確保を阻害する点から容認できない.
- 高齢者医療の充実のためには,生活習慣病対策を推進し,高齢者になっても健康を維持できるようにする.
- 患者自己負担は軽減すべきであり,少なくとも現状を超えるものであってはならない.
- 国は被用者の定年退職年齢が65歳になるよう努力すべきである.
2.新たな高齢者医療保険制度の創設
- 対象:75歳以上の高齢者.
- 保険者:国とする.ただし一定期間後,都道府県単位とすることも検討する.
- 財源構成:患者自己負担10%,保険料10%(ただし低所得者への配慮を行う).残りは公費ならびに国民的共助によって構成する.
3.一般医療保険制度の改革
- 老健拠出金,退職者給付拠出金は廃止する.
- 被用者は退職後,すべて国民健康保険に加入し,その場合,患者自己負担以外の給付金を保険料および被用者保険による制度間共助により賄う.
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