日医ニュース
日医ニュース目次 第1064号(平成18年1月5日)

年頭所感
日本医師会長 植松 治雄

年頭所感/日本医師会長 植松 治雄(写真) 平成十八年の新春を迎え,皆様にお慶びとともに一言ごあいさつ申し上げます.
 昨年八月に衆議院が解散され,選挙が行われましたが,ご承知のとおり,自由民主党の大勝に終わりました.郵政民営化の是非を問うものでしたが,その結果,医療改革が加速し,かなり厳しい状況になりました.厚生労働省は,十月十九日に,患者負担増を中心とした「医療制度構造改革試案」を発表,それを受けて,日医は緊急記者会見を行い,「国民皆保険制度の理念に反する」と反論しました.その後,第三回国民医療推進協議会総会を開催して,国民皆保険制度を守る国民運動(署名運動,国民集会等)の実施を承認,地域集会と署名運動のほか,国民医療推進協議会,日医,東京都医師会主催の「国民皆保険制度を守る国民集会」も開催いたしました.会員諸氏のご尽力により,昨年末までにおおよそ千七百万人超の署名をいただきました.財政主導の医療費抑制や,患者負担増の主張が続く限り,日医は国民とともに国民皆保険制度と医療の安全・質を守るための運動を展開していく所存です.
 生活習慣病予防のなかでも重要とされる糖尿病対策をより一層推進することを目的として,昨年,日医,日本糖尿病学会,日本糖尿病協会の三者で「糖尿病対策推進会議」を設置しました.学会および患者さんとともに,疾病対策に取り組むことは,日医として恐らく初めての試みでありましょう.また,かねてから日医が力を入れている禁煙活動についても,第二回国民医療推進協議会総会において,「禁煙活動の推進方針」を承認,たばこ価格の大幅な引き上げとともに,当該税収を国民の健康のための財源にあてる要望をいたしました.今後はこのような形で生活習慣病予防が国民運動として進んでいくことが,重要であると思います.
 昨夏,日医「医療事故防止研修会」を開催しました.私は,会長就任以来,社会に対する日医の責務を,いわゆるリピーター医師等を対象とした研修会の開催という,国民の目に見える形で実現させたいと考えてきました.日医と都道府県医師会,会員が一体となって取り組んだ,このように大掛かりな医療事故防止活動ないしは医療安全対策の研修会は貴重な経験でした.国民の医療に対する強い不信感を払拭するためにも,事故が起こる原因を医師自らが考え,安全な医療を提供できるようにしていきたいと思っています.
 今や,新人医師の三人に一人が女性という状況にあります.そのようななかで,出産・育児に伴う離職等,女性医師が抱える諸問題への対応は喫緊の課題となっています.日医では,女性会員懇談会を中心に検討を続けているところですが,昨年七月には,その一環として,「男女共同参画フォーラム」を開催いたしました.厚生労働省は現在,女性医師バンク(仮称)の創設を計画しておりますが,日医がその中心的な役割を果たしていくべきと考えます.
 今後の課題として,医師不足あるいは偏在の問題が挙げられます.特に,小児科・産科医療のおかれている危機的状況への対応,勤務医の過重労働などについても積極的に対応して参ります.
 昨年十二月に発表された「医療制度改革大綱」に対しましても,事前に日医の考え方を提示し,議論しましたが,不満足な点がいくつか残されました.今後,運用に配慮しつつ対応して参りたいと思います.診療報酬改定については,小泉首相の強い意向で,三・一六%(診療報酬本体一・三六%)の引き下げに決定しました.現在の政治の流れを受けたものでありますが,誠に遺憾であります.
 平成十八年が皆様にとりまして希望に満ちた明るい年になりますことを期待し,年頭のごあいさつとさせていただきます.

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