日医ニュース
日医ニュース目次 第1066号(平成18年2月5日)

視点

労働者の過重労働・メンタルヘルス対策について

 近年,職域保健において,過重労働による健康障害や過労自殺の増加傾向が指摘されている.
 例えば,過労死や脳・心臓疾患による労災認定件数は,平成十一年度は八十一件だったのに対し,平成十六年度は二百九十四件に増加したという報告がされている.同様に,過労自殺や精神障害による労災認定件数も,六年間で十四件から百三十件へと急増している状況である.
 このような背景により,このたび労働安全衛生法が改正され,平成十八年から施行されることとなった.
 改正の重要項目は,過労死・過労自殺等の未然防止,早期発見・早期治療を目的として,時間外労働が月百時間を超えた過重労働者に対し,労働者からの申出により医師による面接指導を実施する内容が盛り込まれたことである.
 医師による面接指導の事業を実効あるものとするためには,次のような課題に取り組む必要がある.
 今回の法改正の主眼が産業医等による面接指導であることを考えると,産業医の果たす役割は大変重要である.しかし,労働者数五十人以上の事業場では,産業医の選任義務が課せられているにもかかわらず,特に,労働者数九十九人以下の事業場の約三割ではいまだ産業医が選任されていない.この制度を実効あるものとするためには,すべての産業医選任義務のある事業場への産業医の配置が大前提となることから,産業医未選任事業場の解消に向け,行政指導を強化するべきである.
 労働者の健康を保持し,必要な労働力を確保するという視点において,この事業を実効あるものとするためには,事業主の理解が不可欠である.したがって,労働者が面接指導を希望したことにより不利益を被るようなことがあってはならない.また,事業主責任で実施するという観点から,産業医による面接指導,労働者が希望する医師による面接指導,さらには必要に応じて実施される精神科医による面接等,本制度の実施に必要な費用は事業者が全額負担するべきである.このことについて,行政指導等による事業主への徹底が期待される.
 なお,労働者数五十人未満の小規模事業場における過重労働・メンタルヘルス対策については,地域産業保健センターが面接指導を実施することになるので,小規模事業場からのニーズに対応できる地域産業保健センター事業の充実と予算の確保が必要である.

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