日医ニュース
日医ニュース目次 第1067号(平成18年2月20日)

「新しい医学の進歩」〜日本医学会分科会より〜

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日本耳鼻咽喉科学会補聴器相談医制度の発足
〈日本耳鼻咽喉科学会〉

 補聴器を使用するのは,多くが老人性難聴を代表とする感音性難聴の患者である.感音性難聴の特徴は,小さい音が聞こえない難聴に加えて,十分大きい音で聞いても語音を聞き誤る語音の異聴,さまざまな音が音質が劣化した不自然な音に聞こえる,大きい音は正常者以上にうるさく感じるなどの症状がある.
 その原因は,内耳の感覚細胞および聴覚中枢路の神経の減少であるため,完全に補うことはできず,補聴器の適合が重要である.
 デジタル技術の導入で,補聴器は新しい有効な機能を備えるものとなった.
 ボリューム操作をあまり行わなくてもよいノンリニア増幅の採用,定常的な雑音下では雑音に一致した周波数の増幅度を下げる雑音抑制が主要な機能である.
 しかし,補聴器の進歩は同時に,一部の機種で価格の高騰を引き起こした.従来八万円程度であった耳掛け形補聴器の価格は,デジタル補聴器においては八万円から三十万円を超えるものまで広い価格帯を持つものとなった.
 そして,法律違反で利益最優先の高価格補聴器販売や必要なアフターケアを行わない販売が無視できない状況となった.
 これに対して,日本耳鼻咽喉科学会は平成十六年五月の理事会で,「補聴器販売の在り方に関する(社)日本耳鼻咽喉科学会の基本方針」を決定した.
 その具体化を目標に,難聴者が身近な耳鼻咽喉科医に相談できるよう,一定の資格を満たした耳鼻咽喉科専門医を対象に,「日本耳鼻咽喉科学会補聴器相談医」を本学会理事長が本年四月に委嘱する.
 補聴器は医療機器であり,難聴の障害を理解し,補聴器の効果を理解できる者が販売するべきである.また,その効果は医師が判断しなければならない.
 補聴器相談医は,補聴器が必要かつ有効な難聴であることを診断し,難聴に合わせた補聴器適合の能力を持つ認定補聴器技能者(厚生労働省指定法人のテクノエイド協会が認定)を紹介する.また,補聴器購入においては,薬事法や特定商取引法に違反する悪徳商法の被害について相談にのり,補聴器適合が不十分な場合には再調整を依頼し,聴覚を管理し,その保存について患者を指導することを担当する.

(日本耳鼻咽喉科学会福祉医療担当理事 小寺一興)

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