日医ニュース
日医ニュース目次 第1068号(平成18年3月5日)

中医協総会
診療報酬改定について答申

 中央社会保険医療協議会(土田武史会長)の総会が,二月十五日,都内で開催され,一月十一日に川崎二郎厚生労働大臣から意見を求められていた平成十八年度診療報酬改定に関する答申書を取りまとめた.(別記事参照
 なお,答申に際しては,六項目の意見が附記され,今後の検討が求められた.

中医協総会における診療側委員
 政府が昨年末に決定した改定率マイナス三・一六%(診療報酬本体:△一・三六%,薬価・材料:△一・八%)での改定という制約のもと,中医協では,社会保障審議会医療保険部会・医療部会が取りまとめた「平成十八年度診療報酬改定の基本方針」に沿って具体的な対応を答申するよう諮問されたことを受けて,改定項目に関する議論を集中的に行ってきた.
 また,この間には,医療現場や患者さんなどの意見を反映させるため,中医協委員が国民の声を直接聴く機会を設けたり(公聴会の開催),改定内容についてパブリックコメントを求めるなど,透明性を重視した初めての試みも行われた.
 二月十五日の総会では,これまで審議してきた各項目に具体的な点数が入った資料が出されたほか,診療・支払側の意見の隔たりが大きい四点((1)医療費の内容の分かる領収証の交付(2)禁煙指導(3)褥瘡管理対策(4)処方せんの様式変更)に関しては,公益側が調整案を提示.この案を基に議論を行い,最終的に答申を取りまとめるに至った.
 以下に,主な改定内容を列記する.
[医療費の内容の分かる領収証の交付の義務化]
 支払側が,「算定したすべての点数項目が分かるレセプト形式のものを無償で発行すべき」と強く主張してきたのに対して,診療側は,「そもそも患者さんに説明しにくい診療報酬体系を改めるべきである」と反論.結果的に,点数表の各部単位(初・再診料,在宅医療,検査,投薬,注射等)で金額の内訳が分かる領収証を無償で交付することとなった(実施まで六カ月の経過措置を設定).
 また,今回,名称による現場の混乱を少しでも小さなものとするため,日医の社会保険診療報酬検討委員会からの指摘も踏まえて,「指導料」を「管理料」に変更することになった.
[処方せん様式の変更]
 処方せんの「備考」欄中に新たに「後発医薬品への変更可」のチェック欄を設けることになった.これは国の施策でもある「後発医薬品の使用促進」のために行われるものであるが,松原謙二常任理事は,これまでの審議のなかで,(1)医師の処方はもともと変更不可なものであること(2)後発医薬品は構造式が同じでも,溶解性等が異なり,先発品とまったく同じではないものもあること―などを指摘.それと同時に,「医師は一〇〇%の安心と責任のもとで医薬品を使用すべき」と主張してきた.
 なお,これまでの処方せん様式も使用できることとなった.
[ニコチン依存症管理料]
 国民的議論が十分になされていないとの支払側からの指摘があったが,喫煙率が下がることは,最終的に医療費の抑制にもつながることから,ニコチン依存症と診断された者のうち,「禁煙を希望する患者」に対する一定期間の禁煙指導を,診療報酬上評価することになった.今後は,保険導入の効果を,医療機関からの「禁煙成功率」の報告等により検証することになっている.
[初・再診料]
 初診料は病診格差を是正し,二百七十点に統一.再診料は,一般病床二百床未満の病院で一点,診療所で二点引き下げられたほか,継続管理加算は国民に説明しにくいため廃止.また,外来診療料は二点引き下げられることになった.
 そのほか,同一医療機関内で同日に複数の診療科を受診した場合,二つ目の診療科の初診に限り百三十五点が算定できるようになった.
[入院料]
 従来,減算であった入院診療計画,院内感染防止対策,医療安全管理体制,褥瘡対策が,入院基本料の要件となった.
[在宅医療]
 新たに診療報酬上の制度として,「在宅療養支援診療所」を創設.二十四時間患家の求めに応じて,他の医療機関との連携を図りながら往診・訪問看護等が提供できる体制を構築した.
[小児医療]
 深夜における小児救急医療の対応体制の評価を充実.地域連携小児夜間・休日診療料の要件が緩和されたほか,小児入院医療管理料が引き上げられ,さらに,検査・処置・手術等における小児の加算も引き上げられた.
[産科医療]
 ハイリスク分娩の増加に対応するため,ハイリスク分娩管理加算,ハイリスク妊産婦共同管理料が新設された.
[リハビリテーション]
 施設基準により区分していた現行体系を,四つの疾患((1)脳血管疾患等(2)運動器(3)呼吸器(4)心大血管疾患)別の評価体系に改変.集団療法は廃止され,個別療法のみとし,おのおのに算定日数の上限が設定された.また,同時に,消炎鎮痛等処置の同一月内逓減制が廃止された.
[手術の施設基準]
 平成十四年の改定以降,日医が廃止を主張し続けてきた「手術の施設基準」については,年間手術症例数と手術成績との間に相関関係を積極的に支持する科学的知見が得られていないため,症例数による加算をいったん廃止し,今後,検討会を設けて,手術成績との関係に関する調査・検証を速やかに実施することとなった.
[急性期入院医療]
 一般病棟の入院基本料を看護職員の実質配置,看護師比率,平均在院日数によって簡素化された区分に再構成.
 また,紹介率を要件とする入院基本料等の加算(紹介外来加算・紹介外来特別加算,急性期入院加算,急性期特定入院加算,地域医療支援病院入院診療加算2)は廃止され,その代わりに,救急医療管理加算を拡大するなど,急性期医療の評価を別途行うことになった.
 そのほか,各勤務帯で看護職員一人が何人の患者を受け持っているか,病棟内に掲示することとなった.
[有床診療所]
 有床診療所入院基本料の看護職員の配置による区分を簡素化.十四日以内の評価が引き上げられる一方,十五日以降の評価が引き下げられ,短期間の入院施設としての役割が明確化された.さらに,現行の医師の数による加算が四十点から百点に引き上げられた.
[慢性期入院医療]
 療養病棟入院基本料に医療区分およびADLの状況による区分に基づく患者分類を用いた評価を導入(平成十八年七月実施).医療保険と介護保険の役割分担の明確化が図られた.
[臓器移植術の保険導入]
 心臓移植,脳死肺移植,脳死肝臓移植,脳死膵臓移植が保険導入された.
[入院時食事療養費]
 一日単位で評価を行っている取り扱いを改め,一食当たりの費用を設定.特別食加算が見直されたほか,特別管理加算,選択メニュー加算が廃止された.
[透析]
 人工腎臓にエリスロポエチンが包括され,夜間・休日加算が,当初,廃止とされていたが,それぞれ三百点となった.
(なお,改定内容の詳細については,本紙三月二十日号に同封予定の附録を参照)

平成18年度診療報酬改定の全体像
重点的に評価する項目 適正化する項目
小児医療
(小児入院医療に係る評価や地域の医療機関の連携による夜間・休日の小児救急医療に係る評価を充実 等)
産科医療
(合併症等により母体や胎児の分娩時のリスクが高い分娩(ハイリスク分娩)への対応を強化 等)
麻酔・病理診断
(麻酔管理料及び病理診断料に係る評価を充実 等)
救急医療
(救急医療に係る評価を充実 等)
急性期入院医療の実態に即した看護配置
(より手厚い看護職員配置に係る評価など,看護職員配置についてメリハリを付けた評価を実施 等)
医療のIT化
(医療の電子化に係る評価を新設)
在宅医療
(在宅療養を送る患者の求めに応じ,24時間往診等により対応できる体制に係る評価を充実 等)
慢性期入院医療
(医療の必要性の低い患者の慢性期入院に係る評価を適正化 等)
入院時の食事
(1日単位の評価を改め,提供された食数に応じた1食単位の評価として適正化 等)
コンタクトレンズに係る診療
(コンタクトレンズに係る診療について,定型的な検査等を包括して適正化 等)
検査
(市場実勢価格等を踏まえ,検体検査の実施料を適正化 等)
初再診料等
(病院と診療所との点数格差を是正する中で,診療所の再診料に係る評価を適正化 等)
その他医科診療報酬
(生活習慣病指導管理料,透析医療等に係る評価を適正化 等)
歯科診療報酬・調剤報酬
(かかりつけ歯科医機能やかかりつけ薬局機能に係る評価を適正化 等)

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