日医ニュース
日医ニュース目次 第1069号(平成18年3月20日)

都道府県医師会社会保険担当理事連絡協議会
診療報酬改定の経緯と内容を説明

 平成十八年度の診療報酬改定の内容に関する説明ならびに伝達を行うため,都道府県医師会社会保険担当理事連絡協議会が,三月六日に日医会館大講堂で開催された.

都道府県医師会社会保険担当理事連絡協議会/診療報酬改定の経緯と内容を説明(写真) 冒頭あいさつした植松治雄会長は,今回の改定について,「われわれ執行部としては最大限の努力をしてきたつもりであるが,官邸の強い意向もあり,三・一六%のマイナス改定という厳しい結果となってしまった.先生方には大変申し訳なく思っている」と述べるとともに,「改定率決定の際に医療の質・安全に関する議論が取り入れられなかったことは非常に残念」と強い不満を表明.加えて,「四月からの改定結果の検証作業によって,万が一,マイナス改定の影響が大きく出ていることが分かった場合には,再改定を要求する」との考えを示した.
 引き続き,櫻井秀也副会長が,今回の改定に至る経緯を説明.そのなかでは,政府・与党が診療報酬の引き下げの根拠とした三点((1)現在の日本の経済状況(2)中医協医療経済実態調査の結果(3)保険財政)に対して,(1)日本の経済状況は上向きに転じている(2)医療経済実態調査によれば,医療機関の経営状況は二年前より悪化している(3)政管健保などは過去二年間黒字になっている─などを指摘して,反論.「今回の改定はむしろプラス改定であるべき」とマイナス改定に対する不満を改めて主張した.
 つづいて,松原謙二常任理事から,医療費の内容の分かる領収証発行の義務化,処方せん様式の変更等の重要項目のほか,個々の改定項目について詳細な説明が行われた.以下は,その主な内容である.

領収証の発行

 正当な理由がない限り,点数表の各部単位で金額の内訳が分かる領収証を無償で交付することが義務化された(六カ月の経過措置あり).しかし,正当な理由のなかには,患者さんが希望しない場合も含まれており,その場合には交付する必要はない(その際には,署名を記した表示を文書で残すことが望ましい).なお,支払側が強く求めていた明細書の発行は,患者さんが求めた場合に有償で対応する努力規定となった.

処方せん様式の見直し

 「処方は医師にとって最も大切なものの一つであり,その変更は医師のみができるものである」と主張してきたが,財政上の理由から見直しを行うことになり,「備考」欄中に新たに「後発医薬品への変更可」の保険医署名欄を設けることになった.しかし,従来の処方せん様式は引き続き使える.

入院基本料の要件追加

 院内感染防止対策実施,医療安全管理体制,褥瘡対策実施が要件となり,未実施,未整備の場合,有床診療所でも入院基本料そのものが算定不可となる.

初・再診料

 支払側は大幅な引き下げを求めてきたが,「医療機関にとって,初・再診料は最も基本的なものであり,認めることはできない」と強く反発.議論の結果,引き下げ幅を最小限に食い止められた(初診料は病診格差を是正し,二百七十点に統一.再診料は二百床未満病院で一点,診療所で二点引き下げ,継続管理加算を廃止).

医学管理等

 国民に理解できる診療報酬体系とするために,日医社会保険診療報酬検討委員会からの指摘も踏まえ,「指導料」を「管理料」に変更した.

在宅医療

 新たに診療報酬上の制度として,「在宅療養支援診療所」を創設.一つの診療所でも,医師一人,看護職員一人での対応を可能とした.
 また,在宅時医学総合管理料を新設.在宅支援診療所と両方の届出を行っている診療所は,患者さんの症状により,点数の選択が可能となっている.

小児医療・産科医療

 財源が少ないなかで,小児入院医療については大幅な引き上げを行った.また,産科医療では,ハイリスク分娩の増加に対応し,ハイリスク分娩管理加算などを新設した.

リハビリテーション

 施設基準により区分していた現行体系を四つの疾患((1)脳血管疾患等(2)運動器(3)呼吸器(4)心大血管疾患)別の評価体系に改変.集団療法は廃止,個別療法のみとし,おのおのに算定日数の上限を設定し,その間は逓減制の適応はないものとした.算定日数の上限を超えた場合の対応が今後の課題と考えている.なお,消炎鎮痛等処置の逓減制も合わせて廃止した.

その他

 透析医療の夜間・休日加算は当初廃止の方向性が示されていたが,その復活を強く求めた結果,三百点ではあるが,引き続き算定できることとなった.
 また,医療上の問題があるとして,その是正を求めてきた不適切な超長期の投薬については,今回,厚生労働省から事務連絡が出され,各審査委員会における審査の判断材料となった.なお,適切な長期投薬は評価し,これまで四十五点であった特定疾患処方管理加算は六十五点に引き上げた.
 (改定内容については,都道府県医師会・郡市区医師会を通じて順次周知される)

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