日医ニュース
日医ニュース目次 第1069号(平成18年3月20日)

日医定例記者会見
2月28日

宮崎副会長
財源確保の道─国民との意識の共有を提唱

日医定例記者会見/2月28日(写真) 宮崎秀樹副会長は,平成十七年度医療政策会議の報告書について,以下のような説明を行った.(写真)
 会長諮問は「医療の質とその財源の確保」で,二月七日に黒川清議長が植松会長へ答申を提出した.
 報告書は六つの章から構成され,第I章「医療システムと医療の質」,第II章「医療の質の要素─費用の側面からの検証─」,第III章「医療の質の管理」,第IV章「医療安全」,第V章「医療の質を高めるための施策」,第VI章「財源確保の道」となっている.
 第I章では,財政主導による医療費抑制政策が社会の安定を損なうと警鐘を鳴らし,医師の疲弊,米国企業の事例─経営を圧迫する私的医療保険に言及している.
 第III章では,医療費を増やすことに対して国民の理解が得られないのは,本来「医療サービス公定価格表」とすべきところを「診療報酬」と呼んでいるため,改定分がすべて診療を行う医師の収入に反映されるという誤解をもたれているからではないかと指摘.
 第VI章では,「医療給付費はキャップをはめ,民間保険などの私的医療支出は拡大する」という考え方は,国民の階層化を招き,事業主・被用者ともに負担が大きくなり,ひいては社会が不安定化すると警告している.また,医療費支出がマクロ経済の成長に貢献し,経済を支える社会基盤を安定化させることを示し,財源確保に向け国民と意識の共有を図る一層の努力を望みたいとしている.

「ふたたび終末期医療について」の報告がまとまる

日医定例記者会見/2月28日(写真) 寺岡暉副会長は,高久史麿生命倫理懇談会座長(日本医学会長)とともに,第IX次生命倫理懇談会報告書「『ふたたび終末期医療について』の報告」について,その内容を明らかにした.(写真)
 報告書は,Iはじめに,II終末期医療とは,III緩和医療,IV尊厳死,V終末期患者の急性期・救命医療,VI終末期医療における医療費,VIIおわりに─の全七章からなる.
 寺岡副会長は,「生命倫理の問題は,近年,医療にとって大変重要な課題である.すでに生命倫理懇談会から『末期医療に臨む医師の在り方についての報告(第III次生命倫理懇談会:平成四年三月)』『医療の実践と生命倫理についての報告(第VIII次生命倫理懇談会:平成十六年二月)』,また,医事法関係検討委員会から『終末期医療をめぐる法的諸問題について(平成十六年三月)』という報告書が出ているが,終末期医療に関する過去の議論を踏まえて,『ふたたび終末期医療について』という課題を論じることになった」と,本報告書をまとめるに至った経緯を説明.
 また,高久座長は,「終末期医療は“cureからcareへ”というように区別されるのではなく,“cureもcareも”というように,むしろ連続的で継ぎ目がないと考える方が適切であること,緩和医療は,現在のようにがんやエイズに限定されず,難病を含めた多くの疾患に拡大されることが必要であること,また,本報告書では,特に,小児難病に対する緩和医療,新生児医療における意思決定,小児難病における終末期医療への移行などについても述べている」と,報告書の特徴を説明した.
 報告書の内容は,“終末期”の考え方や一般論的なまとめ,施設,在宅の緩和医療についての現状と展望,医療費適正化など,多岐にわたっており,また,新しい課題として,「小児難病に対する緩和医療」についても論じている.

藤村常任理事
新しい公的障害補償制度の創設を要望

日医定例記者会見/2月28日(写真) 藤村伸常任理事は,医療に伴い発生する障害補償制度検討委員会(プロジェクト)が,一月二十三日に,植松治雄会長に提出した答申「医療に伴い発生する障害補償制度の創設をめざして」の概要を説明した.(写真)
 答申は,第一部「医療に伴い発生する障害補償制度の創設をめざして」,第二部「分娩に関連する神経学的後遺症(いわゆる脳性麻痺)の先行実施」からなり,無過失あるいは過失の証明が困難な事例を含め,医療に伴い患者が受けたすべての障害に対して,迅速・公平な補償が可能になる公的な制度の創設が,喫緊の課題であるとしている.
 藤村常任理事は,わが国の現状および海外での無過失補償制度実施国のうち,ニュージーランド・スウェーデン等の実状調査を踏まえて,わが国における制度がいかにあるべきかを,(1)対象(2)補償額(3)基金(4)制度運用の概要等まで検討したと説明.
 また,いわゆる脳性麻痺への補償制度の先行実施が必要な理由として,(1)少子化対策(2)患者側の経済的,精神的負担の大きさ(3)産婦人科医の減少で周産期医療の円滑な実施が困難―の三点を挙げた.
 最後に,藤村常任理事は,本答申を受け,今後,脳性麻痺に対する補償制度の先行実施のため,三月中旬までに,厚生労働相,少子化・男女共同参画担当相をはじめ,関連部署に要望書を提出する予定であることを明らかにした.さらに,日本産科婦人科学会・医会等と共同歩調をとりつつ,都道府県医師会から地元選出議員への働き掛けを求めるほか,脳性麻痺に対する議員勉強会を立ち上げるなどの活動を進めていきたいとの意欲を示した.
 〔なお,これら三点の報告書・答申は,日医ホームページ(メンバーズルーム)に掲載されている〕

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