日医ニュース
日医ニュース目次 第1069号(平成18年3月20日)

視点

医療制度改革関連法案の問題点

 政府は,二月十日,医療制度改革関連法案を閣議決定し,今通常国会に提出した.国会では四月から議論を本格化させることになるが,この法案には,さまざまな問題が含まれている.
 まず,今回提出された法案の基になるものは,社会保障審議会医療保険部会,医療部会等で審議されてきたものとされているが,社会保障審議会そのものは昨年の九月中旬からほとんど開催されておらず,委員は部会から報告さえ受けていない.このような状態のままで勝手に法案が作成され,国会へ提出されたことは重大な瑕疵といわざるを得ない.
 また,法案には平成二十年四月あるいは十月に施行予定のものまで含まれているが,十分に検討したうえで来年の通常国会に提出しても遅くはなく,拙速の誹りを免れない.ましてや,平成二十四年施行予定のものにまで具体的な提示があるのは許し難い.
 各法案の共通の問題として,患者負担増の政策は,署名運動で示された患者負担増反対の国民の意思を尊重して見直すべきであると考える.
 また,保険料率や診療報酬を都道府県別に設定しようとする考え方は,国民皆保険制度の理念に反するものとして強く反対したい.
 さらに各法案ごとの問題点を指摘したい.
健康保険法の一部改正案
 「特定療養費」を廃止し,「保険外併用療養費」に改めるとしているが,この名称ではその意味する内容が分かりにくい.「評価療養」と「選定療養」を合わせたのであれば,分かりやすく「評価・選定療養費」とすべきである.また,「全国健康保険協会」の設立に関しては社会保険庁のあり方が明らかになってから,審議を行うべきと考える.
老人保健法の一部改正案
 法律の名称,目的,国や地方公共団体の責務など,従来のものとはまったく違う内容となっている.老人保健法の重要な部分である「第三章 保健事業等」が削除されたばかりか,受け皿となる健康増進法の改正については検討すらされていない.特に,保健事業を特定健康診査と名付け,医療費適正化のためのものと位置付けて,その責任を保険者に移行してしまったことは大問題である.
介護保険法の一部改正案
 「介護療養型医療施設を平成二十四年三月三十一日をもって廃止する」としているが,関連部会で十分審議してから提案すべきことであり,現時点で「まず廃止ありき」のやり方は絶対に反対である.

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