日医ニュース
日医ニュース目次 第1073号(平成18年5月20日)

日医定例記者会見

中川常任理事
歳出改革に関する日医の基本的問題認識について見解を示す

日医定例記者会見/中川常任理事/歳出改革に関する日医の基本的問題認識について見解を示す(写真) 中川俊男常任理事は,四月二十五日の定例記者会見で,「歳出改革に関する基本的問題認識」について説明した(写真)
 はじめに,中川常任理事は,「医療制度構造改革試案」「医療制度改革大綱」,今国会に提出されている「医療制度改革関連法案」等いずれも“医療費の適正化”という名目で,医療費の抑制が図られ,最近では,自民党内に,「社会保障に関しても徹底的な歳出削減を検討せよ」との指示で,政調会長の下“歳出改革に関するプロジェクトチーム”が設置されている現状であると述べた.
 日医では,昨年末,厚生労働省の医療費推計の問題点を指摘しているが,今回,日医・日医総研の最新データに基づき,改めて医療費推計の問題点を質したいとした.
 まず,厚労省の二〇二五年度の国民医療費推計六十五兆円は,一人当たり医療費の伸びが一般二・一%,高齢者三・二%を前提条件としているが,それは平成七〜十一年の伸び率だと指摘.
 実際は,最近の医療費動向(平成十三〜十七年)によれば,診療報酬マイナス改定があった平成十四年を除いても,平均で,一般,高齢者とも一%台の伸び率に過ぎないとした.
 また,厚労省が,後期高齢者医療制度案の対象者を七十五歳以上としながら,七十歳区分の医療費推計を用いている点も,制度設計に乖離が生まれるとして問題視した.
 そのうえで,最近の一人当たり医療費の伸び率(一般一・四%・高齢者一・三%)を基に,日医・日医総研が再推計を行ったところ,二〇二五年度の国民医療費は四十九兆円となったことを明らかにし,厚労省に六十五兆円という国民医療費の推計値の早急な再計算を求めた.
 さらに,問題点として,(1)二〇二五年度の医療給付費が,昨年十月の厚労省「医療制度構造改革試案」では四十九兆円とされ,同十二月の政府・与党医療改革協議会「医療制度改革大綱」では四十八兆円と,わずか二カ月で一兆円(短期的方策効果に相当)も下方修正されていること(2)昨年問題になり,大反発を生じた“保険免責制”が復活すれば,自己負担割合が五割に迫り,若者を中心に公的保険離れが懸念されること(3)歳出削減に当たっては,限界である医療給付費のほかにも削減すべき余地(人件費・経費等)があること(4)日医・日医総研が示した国民医療費の推計値では,厚労省の医療給付費の目標額四十九兆円という数字をすでに達成しており,制度改革,中長期的・短期的方策を行う必要がないこと─等を挙げた.
 また,国会で廃止・削減が審議されている療養病床再編による医療費抑制は,老人医療費の低い長野県のように介護費の増大をもたらし,在院日数の短縮化は,高齢者を介護保険へ追い出しかねないと指摘,「数値目標を一人歩きさせてはならない」と述べた.
 最後に,中川常任理事は,社会保障費,医療給付費のこれ以上の削減は,医療の質・安全性の担保が危うくなると強調.日医は,これらについて各方面に十分に理解を求め,地域医療の崩壊,医療保険制度の形骸化に結び付くような施策が行われないよう働き掛けていきたいと意欲を示した.

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