日医ニュース
日医ニュース目次 第1079号(平成18年8月20日)

第2回男女共同参画フォーラム開かれる
「女性医師バンク」をめぐり大いに議論

 日本医師会第2回男女共同参画フォーラムが,「女性医師バンクに関する諸問題」をテーマに,7月29日,大阪府医師会館で開催された.会場には,女性のみでなく男性の参加も多く,フロアからの発言も積極的で,大きな盛り上がりを見せた.

第2回男女共同参画フォーラム開かれる/「女性医師バンク」をめぐり大いに議論(写真) 今年度新たに発足した男女共同参画委員会の小笠原真澄委員の司会で開会.冒頭,あいさつした唐澤人会長は,「直近の医師国家試験の合格者に占める女性の割合は三分の一となり,今後,さらにその割合が高まると思うが,女性には出産・育児という特有の期間があり,その間は医療現場を離れざるを得ない.日医としても,女性医師バンクを立ち上げ,現場復帰をサポートしていきたい」と述べた.
 酒井國男大阪府医師会長のあいさつにつづいて,保坂シゲリ日医男女共同参画委員会委員長が,「各都道府県での女性医師にかかわる問題についての取り組み状況および日医各委員会での女性委員登用状況」を報告.そのなかで,(一)本年二月現在,同種の委員会や部会を設置している都道府県が十二,今後,設立を考えている府県が十一あること,(二)日医の各種委員会(四十五)に一人でも女性委員が入っているのは十九委員会(四四%)で,委員総数は六百四十一名中四十四名(六・八%)であること―などを説明.女性医師会員の割合にふさわしい女性委員数であることが望ましいと,締めくくった.

パネルディスカッション

 パネルディスカッションは,「女性医師バンクに関する諸問題」をテーマに行われた.
 羽生田俊常任理事は,「日本医師会の取り組み状況」を報告.日医が女性医師の委員登用を抑制しているわけではなく,各ブロックからの推薦が少ない状況を説明したほか,日医が本年度中に立ち上げる予定の女性医師バンク事業に対する抱負を述べた.
 秋葉則子千葉県医師会理事は,「千葉県医師会女性医師部会での取り組み」について報告.同医師会が行う予定のドクターバンク事業を説明したほか,バンク設立に先駆けて行ったアンケート調査の結果を紹介.出産・育児などで第一線を離れざるを得ない女性医師にとって,最も大きな支援になるのは,日進月歩する医学・医療現場への復帰不安を解消するための研修の場の設置であると強調した.
 櫻井えつ徳島県医師会常任理事は,「ドクターバンク 徳島県医師会における取り組み」を報告.徳島大学医学部入局後に離職した女性医師を調べたところ,約二〇%が就業していないこと,希望する復職後の勤務形態は,(1)パートタイム(2)週三日程度の勤務(3)当直免除(4)保育所設置(5)研修参加(6)時間外勤務の免除―などであったことを明らかにした.
 惠谷ゆり大阪大学大学院医学系研究科小児科助手は,「日本小児科学会での取り組み」を報告.平成十六年の同学会の調査によれば,小児科勤務医の二八%が女性.一方,小児科女性医師の四七%で休職経験があり,小児科医の労働力不足の一因になっているとの事実も報告された.また,小児科医のドクターバンクにとって最も重要なことは,広報活動と求職者の再教育システムの確立だと指摘した.
 川上順子東京女子医科大学第一生理学教授は,「東京女子医大での女性医師再研修の試み」について報告.臨床現場を一時的にせよ離れた医師が,再研修をする場所は一律には決められない.サポート体制としては,大学病院だけでなく,地域の病院にもネットワークを広げ,求職者がオーダーメードカリキュラムで研修先を探せれば,復職の可能性は高められるとした.
 山崎麻美国立病院大阪医療センター統括診療部長は,「国立病院機構近畿ブロックでの取り組み」を報告.同ブロックでは平成十六年から「ママさん医師登録システム」に取り組み,離職した女性医師の復職に力を注いできた.離職理由を大別すると,「三歳児神話,オンリーワン神話,良い育児をしよう症候群」という育児に関するものと,「職位を保障する制度がない,育児施設の不足,他の医師に迷惑がかかる」などであり,現在は,二十四時間保育の実施,勤務形態の柔軟化に取り組んでいるとした.

猪口邦子大臣
基調講演

 基調講演は,猪口邦子内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画)が,「次世代育成支援と男女共同参画〜職場・家庭・地域における希望を実現するために〜」と題して行った.(写真)男女共同参画社会とは,「日本国憲法において規定されている男女平等を実質的に実現し,男女がそれぞれ個性と能力を発揮することができる社会」であるとし,法制定はその第一歩と説明.日本の各分野における女性の参画状況については,先進国中最下位であるばかりか,世界でも低い方に位置すると報告.また,日医の役員構成にも触れ,女性会員が一三・二%であるのに役員がいないのはいかがか,と苦言を呈した.さらに,日本では第一子出産後,七割の女性が離職する現実があるが,男女共同参画は民主主義社会の基本であり,女性の就業を困難にしている育児は,男女で行うべきだと強調した.

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