日医ニュース
日医ニュース目次 第1079号(平成18年8月20日)

勤務医のひろば

産婦人科医集約化で楽しく仕事をしよう

 産婦人科勤務医の過酷な勤務条件による医師不足が深刻化している.医師の集約化は,最も即効性のある対策であろう.
 一施設に多数の産婦人科医が所属することの利点は,分娩の安全性が高まり,高度不妊治療,内視鏡手術といった特色ある診療も可能になる.加えて部内での検討や,学会出席等で勉強でき,そして何と言っても大勢で診療する方が楽しいものである(一部孤高を好む方もいるが……).
 しかし,医師の集約化といっても,勤務医の数は知れており,開業医の先生も含めて考える必要がある.その一つに産科オープンシステムがあり,当院でも導入している.予定の帝王切開ならよいが,いつ始まるか分からない通常分娩では,「行けたら行きます」状態で,あまり機能していない.
 開業医の方も,このご時世,少しでもリスクのある症例は,病院へ紹介せざるを得なくなっている.しかし,分娩の怖さの本質は,普通と思われた分娩が突然豹変し,大出血や胎児の状態悪化が起こるところにある.ハイリスク例を除去しても,危険から逃れることはできない.「救命可能だった母体死亡は,医師一人の施設に多い」という厚生労働省研究班のデータを引用するまでもなく,開業医院での分娩は困難な状況になりつつある.
 あまつさえ,医院の豪奢な建物と,ディナー,エステ等は,妊婦から分娩の怖さを覆い隠しているかも知れない.分娩が本来危険なものであり,産婦人科医の努力などでここまで安全になった事実が国民に理解されない限り,産科の医療訴訟は増え続ける.
 今,開業をお考えの先生は,ぜひご再考いただきたい.大勢の医師で楽しく仕事をしませんか?

(済生会新潟第二病院産婦人科部長 長谷川 功)

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