日医ニュース
日医ニュース目次 第1082号(平成18年10月5日)

唐澤会長
第2回都道府県医師会長協議会

尾身茂WHO事務局長候補への支援を要請

 第二回都道府県医師会長協議会が,九月十九日,日医会館小講堂で開催された.各県医師会からは,医療を取り巻く昨今の課題に対する日医の見解を求める質問が多く出され,担当役員から,それぞれ回答を行った.

唐澤会長 第2回都道府県医師会長協議会/尾身茂WHO事務局長候補への支援を要請(写真) 開会に当たって,あいさつした唐澤人会長は,まず,台風十三号の被害に遭われた各県に対して,お見舞いの言葉を述べた.
 また,二十日に行われる自民党の総裁選挙について言及.「三候補の社会保障に対する具体的な考えは今のところ見えてこないが,これまで同様,新政権に対しても日医の考えを積極的に伝えていきたいと考えているので,各医師会においても協力して欲しい」と要望した.

協  議

勤務医の入会促進

 (一)勤務医の入会促進に対する日医の考えを問う山口県医師会の質問には,羽生田俊常任理事が,「日医としても勤務医の入会促進に積極的に取り組んでいく」と回答.その具体的な施策として,(1)本年度,厚生労働省から「女性医師バンク事業」の委託を受けること(2)分娩に関連する脳性麻痺を対象とした「無過失補償制度」の創設を要望していること(3)研修医の会費(医賠責部分)の引き下げを検討していること─を説明した.
 一方,唐澤会長は,「勤務医に入会してもらうためには,日医が具体的な将来像を勤務医に対して明確に示すことが大事になるのではないか」との考えを示した.

日本と外国の医療費および療養費の比較資料の作成

 (二)日本と外国の医療費および療養費の比較資料の作成を求める沖縄県医師会の質問には,今村定臣常任理事が,「わが国の医療の現状を分析し,国民に分かりやすい形で情報を発信していくことが日医の重要な仕事と考えている」と強調.現在,技術料やモノ代に関する各国比較について調査分析を進めており,まとまり次第,公表するとした.

保険者に義務化される健診・保健指導の問題点

 (三),(四)平成二十年度から保険者に義務化される健診・保健指導の問題点を指摘する石川・福岡両県医師会の質問には,内田健夫常任理事が回答.そのなかでは,まず,「適切な健診・保健指導の実施は,医師のかかわりがあって初めてその成果を上げることができる」とし,健診・保健指導への医師の積極的な関与を要望した.また,保険者とのかかわりについては,健診・保健指導の取り組みを無駄にしないためにも精度管理の意味で医師会の関与が重要と指摘.現在,保険者に関する第三者的な評価機構の設置に向けた働き掛けを行っているとした.
 加えて,医師会としても,この業務に対するスキルアップを図る必要があるとして,運動ならびに栄養指導の担当者に集まってもらい,十二月に連絡協議会を開催する意向を示した.

分娩に関連する脳性麻痺に対する障害補償制度

 (五)新潟県医師会が,「分娩に関連する脳性麻痺に対する障害補償制度」について,(1)予算化の見通し(2)基金総額を年間六十億円とする試算の根拠(3)制度運営の財源─に関する日医の見解・具体案を質したのに対し,木下勝之常任理事が回答.
 (1)では,すでに川崎二郎厚労相から,今年中に具体化できるようにと,関係部署に指示が出ていること,(2)では,対象となる脳性麻痺の発生頻度(年間二百五十件)や平均累積死亡率,医賠責保険求償等の条件を勘案して算出したこと,(3)では,出産育児一時金からの一部拠出が可能かどうか検討されていることを明らかにした.

新医師臨床研修修了後の地方医療機関勤務の義務付け

 (六)岐阜県医師会からの,「医師の適正配置」に関する,新医師臨床研修修了後の地方医療機関勤務の義務付けや助産師の役割の見直しなどの提言には,内田・木下両常任理事が答えた.
 内田常任理事は,“新医師確保総合対策”など,行政の対策だけでは不十分だとし,「各地域での対策等の情報収集を九月末ごろには集約できる.今後,医師の適正配置や,いわゆる“後期研修”での地域医療従事カリキュラムなど,具体的で実効性ある提言をまとめたい」と意欲を示した.

助産師の役割の見直し

 木下常任理事は,「医師が減り診療所が減る代わりに助産師に頼るようなことがあってはならない.分娩を助産師に任せることには慎重であるべきだ」とし,医学部入試に地域枠だけでなく“診療科枠”を設け,確実に産科希望医師を増やす等の制度づくりの必要性を強調.日医としても努力を続けるとした.

医療資源の集約化・重点化と病院の拠点化

 (七)秋田県医師会からの「医療資源の集約化・重点化と病院の拠点化」についての質問には,今村聡常任理事が回答.「日医では,医療資源の集約化・重点化は,緊急避難的な措置であって,選択肢の一つに過ぎないと考えている.都道府県にノルマといったものを押し付けるようなやり方には反対で,あくまで地域独自の取り組みが尊重されるべきである.『肝疾患診療連携拠点病院』の整備については,病診連携の構築を目指すことが重要であり,審議会などがこれから設置される予定となっているので,その行方を注目したい」と述べた.
 また,鈴木満常任理事は,「医療資源の集約化については,中医協で議論されているが,支払側は集約化一辺倒なので,診療側としては地域特性を勘案すべきだと強く主張している」と付け加えた.

被保険者宛の医療費通知

 (八)鳥取県医師会の「家族それぞれの医療費通知を,保険者が世帯分まとめて被保険者宛に送付することの是非」に関する質問には,今村(定)常任理事が次のように回答した.
 「医療費通知は,健全な保険運営への理解を深めてもらうために実施されている.法令上の根拠は明確ではないが,医療費の金額を本人に通知すること自体を違法と断じることはできない.
 ただし,家族であっても他人と位置付けられることから,本人の同意なしに個人情報を家族に通知することはできないという前提に立ち,厚労省のガイドラインおよび事例集では,医療費通知は,被保険者とその家族それぞれになされることが原則である.しかし世帯ごとにまとめて送付する場合には,それぞれの個人宛の密閉はがきにして同封すれば差し支えないとしている.
 また,まとめて通知することについては,あらかじめ被保険者および家族の同意があればよく,その同意は個別に取得しなくても,『家族それぞれの分をまとめて送付すること』『仮に同意しない場合は申し出てもらうこと』を包括的に通知したうえでの黙示の同意で足りるとしている」

世界保健機関(WHO)次期事務局長立候補支援

 (九)日医からの議題「WHO次期事務局長立候補支援」については,唐澤会長が,「十一月にWHO次期事務局長の選挙があるが,尾身茂候補は,アジアにおける感染症対策で大きな実績があり,世界的にも評価が高い.都道府県医師会からもご協力を賜りたい」と述べ,協力を要請した.

警察の家宅捜索に断固抗議

 その他,茨城・神奈川両県医師会から,「保健師助産師看護師法違反容疑による警察の家宅捜索に断固抗議する」という意思表示があった.
 また,この件について,日医に強い対応を求める要望があったが,木下常任理事は,「助産師がいない診療所で,医師が分娩介助を行い,四〜五万件の分娩を行っている.この現実のもとで,看護師の診療の補助としての内診に対して,警察の家宅捜索が行われたとすれば遺憾である.安心してお産ができるよう,全力で環境整備に努めたい」と回答した.

第27回日本医学会総会参加登録

 協議会には,平成十九年四月に大阪府で開催予定の第二十七回日本医学会総会の岸本忠三会頭が出席.会議の冒頭,総会の内容を説明するとともに,都道府県医師会に対し,参加登録へのさらなる協力を呼び掛けた.

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