日医ニュース
日医ニュース目次 第1084号(平成18年11月5日)

日本医師会市民公開講座
「知って防ごう性感染症 現状と対策」をテーマに

日本医師会市民公開講座/「知って防ごう性感染症 現状と対策」をテーマに(写真) 日本医師会市民公開講座が,十月二十二日,「知って防ごう性感染症 現状と対策」をテーマに,日医会館大講堂で開催された.参加者は,約二百五十名であった.
 内田健夫常任理事の総合司会で開会.冒頭,あいさつに立った唐澤人会長は,感染症対策について,日医では,地域医療の大きな柱として予防接種等に取り組んでおり,国民の生命と健康を守るため,会内に〈感染症危機管理対策室〉を設置,迅速で適切な対策を推進していると紹介.そのうえで,「感染症は,正しい理解と適切な対処で防げる.十五回目を数える本講座では,近年増加傾向にある“性感染症”をテーマに選んだが,参加申込者が通常より少なく,国民の関心の低さが性感染症の増加につながっているのではないか」との危惧を示した.
 つづいて,四人のシンポジストによるシンポジウムが行われた.
 飯沼雅朗常任理事・感染症危機管理対策室長は,性感染症の特徴,治療と予防などを概説.性感染症は,自覚症状に乏しく,検査・治療に消極的なことが特徴で,女性では不妊症の原因になり,少子化の一因ともなっていると指摘.性感染症が減らない理由としては,(1)無症状で,潜伏期間でも感染源になり得る(2)羞恥心や差別意識のため検査が受けにくく,性の早熟化に対応できていない,日本固有の社会的・文化的問題がある(3)正しい知識が普及していない─の三点を挙げた.
 また,性感染症の蔓延を防ぐには,「教育こそが最大の予防である」と強調.医療側としては,内科,小児科等の医師の理解と意識改革が必要で,産婦人科・泌尿器科医との連携を強化し,今後,性教育等にも積極的に参画したいと述べた.
 次に,小野寺昭一東京慈恵会医科大学感染制御部教授は,現在,わが国において届け出ることになっている六つの性感染症について,(1)梅毒(2)後天性免疫不全症候群は全数報告,(3)性器クラミジア感染症(4)淋菌感染症(5)性器ヘルペスウイルス感染症(6)尖圭コンジローマは定点報告が行われていると説明.
 また,厚生労働省の「性感染症の効果的な蔓延防止に関する研究」班のスクリーニング調査等から,性感染症の蔓延予防には,特に若者を対象として,検査をより受けやすくし,早期発見・早期治療に結び付けられるシステムづくりと,正しい情報の提供,各科が連携しての総合的対策が必要だとした.
 つづいて,家坂清子日本思春期学会理事は,若い女性が抱える性感染症の現状と予防活動の取り組みを紹介.
 現在,思春期外来では,性感染症が最大の問題になっており,女性に多い性器クラミジア感染症は多くが無症状だが重症化しやすく,不妊症や母子感染が懸念される.また,性感染症の重複感染はHIV感染率を上昇させ,子宮頸がん等の原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)感染症にも注意が必要であると述べた.
 これらに対処するには,親や大人が認識を変え,ハイリスク世代の若者の予防意識を高め,予防行動を実践させるため,家庭・学校・行政が連携し,体系的な性教育に積極的に取り組むことが不可欠だと訴えた.
 山本直樹国立感染症研究所エイズ研究センター長は,HIVとエイズについて説明.
 感染経路は,(1)性的接触(2)血液感染(3)母子感染─である.HIV感染からエイズ発症までの経過と症状は,「急性期(感染〜一カ月):風邪症状のみ」「無症候期(約十年):少しずつ免疫力が低下し,中期以降にリンパ節腫脹・発熱・体重減少・下痢・倦怠感など」「エイズ発症:悪性腫瘍・日和見感染症」であること,さらに,抗HIV薬など最近の治療や予防法等に関して詳しく解説した.
 本講座の模様は,十一月十八日(土)午後十一時三十分から午前零時四十分まで,NHK教育テレビ「土曜フォーラム」で放映される予定.

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