日医ニュース
日医ニュース目次 第1089号(平成19年1月20日)

健診・保健指導の指導者研修会
平成20年度からの義務化に向け医師の役割めぐり研修

健診・保健指導の指導者研修会/平成20年度からの義務化に向け医師の役割めぐり研修(写真) 健診・保健指導の指導者研修会が,昨年十二月二十日,日医会館大講堂で開催された.医療保険者には,平成二十年度から四十歳以上七十四歳までの者に対する特定健診・保健指導の実施が義務付けられるが,地域での円滑な事業展開に向け,医師が行う運動指導や栄養指導,役割などについて講演が行われた.
 研修会は内田健夫常任理事の司会により開会.冒頭,あいさつに立った唐澤祥人会長は,今回の生活習慣病対策について,医療費総枠管理の対抗策として提示されたとの見方を示したうえで,「国民が疾病に罹らず健康に生活できるように支援していくことは,われわれの大きな役割である.国民の医療不信につながることのないような健診・保健指導体制を,医師会が中心となって構築していく必要がある」と強調した.
 つづいて,(1)医師が行う運動指導(津下一代・あいち健康の森健康科学総合センター副センター長兼健康開発部長)(2)医師が行う栄養指導(伊藤千賀子・日本糖尿病学会「健康日本21」の糖尿病対策検討委員会委員長)(3)特定健診・特定保健指導と医師会の役割(内田常任理事)(4)健康スポーツ医・産業医との関わり(今村聡常任理事)─をテーマに講演が行われた.
 津下氏は,運動指導に際し,保健指導対象者をステージモデル(無関心期,関心期,準備期,実行期,維持期)ごとに指導を行うべきだとし,身体状況等を個人ごとに確認したうえで運動処方を行う重要性を訴えた.
 さらに,処方のポイントとして,有酸素運動を主体に,普通歩行程度の運動強度から開始することを挙げ,一回が五〜十分の短時間運動であっても週当たりの基準量が確保できれば有効だと説明.科学的根拠に基づく運動への動機付けや治療中の者に対する運動処方,効果の確認と励ましなど,運動指導における“かかりつけ医”の役割を述べた.
 伊藤氏はまず,経済発展に伴う日本の食生活の変遷を解説.食生活指導・栄養指導のポイントとして,エネルギー摂取量の是正,動物性脂質などの過剰摂取の是正,食物繊維摂取の奨励,減塩などを挙げ,BMI〔体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))〕は二二・〇〜二二・五が理想的だとした.また,外食の活用方法や低カロリーの献立例を紹介したほか,「食品交換表」から食品ごとの一単位(=八〇kcal)の目安を示した.
 内田常任理事は,二十年度に健診対象者の大幅増が見込まれるものの,保健指導の基盤整備が間に合っていないことを指摘.「治療中の者への保健指導は“かかりつけ医”が主体的にやっていただきたい」との見解を示した.
 今後の重要課題については料金設定を挙げ,「個別の折衝を認めると非常に煩雑な手続きになる」として,統一料金の目安を示す必要性を強調.第三者評価機構の設立が検討されていることも紹介し,これらの進捗状況について日医ホームページ上で情報提供するとした.
 今村(聡)常任理事は,治療中の者に対する保健指導は“かかりつけ医”が行うが,保健指導がスポーツ施設などに委託される場合においては,運動療法の知識を持った「日医認定健康スポーツ医」が関与することが望ましいとして,資格の活用を求めた.
 また,労働安全衛生法における事業者健診との関係についての検討状況を説明するとともに,産業医も特定保健指導を行える人材としてガイドラインに位置付けられるよう要望するとした.
 この後,講演した四氏に,厚生労働省の矢島鉄也健康局総務課生活習慣病対策室長と,榊原毅保険局総務課課長補佐の二氏を加えて質疑応答が行われた.そのなかで,榊原課長補佐は,健診・保健指導の価格については,基本的に健診実施機関と保険者との契約に委ねる意向を示した.

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