日医ニュース
日医ニュース目次 第1091号(平成19年2月20日)

日本医師会市民公開フォーラム
「肥満は病気か?メタボリックシンドロームとは」をテーマに

日本医師会市民公開フォーラム/「肥満は病気か?メタボリックシンドロームとは」をテーマに(写真) 日本医師会市民公開フォーラムが,二月三日,「肥満は病気か?メタボリックシンドロームとは」をテーマに,日医会館大講堂で行われた.
 今村聡常任理事の総合司会で開会.唐澤人会長は,冒頭のあいさつのなかで今回のテーマについて触れ,「日医は,医師の生涯教育のレベルアップとともに,一般の方々が健康で充実した生活を送れるよう支援する立場にある.今回は,日本人の成人男性の五〇%,女性の二〇%がメタボリックシンドローム,およびその予備軍であると言われる状況であることから,このテーマを選んだ」と説明した.
 つづいて,好本恵アナウンサーの司会で,四人のパネリストによるパネルディスカッションが行われた.
 メタボリックシンドロームの診断基準作成時(平成十七年)の委員長を務めた松澤佑次住友病院長/大阪大学名誉教授は,肥満は生活習慣病の要因ではあるが,問題は肥満の程度ではなく,脂肪蓄積の分布であると指摘.「内臓脂肪の蓄積が基礎にあり,それに高血圧,糖尿病,脂質異常のうちの二つ以上が重なると,メタボリックシンドロームと診断され,結果として,心筋梗塞,脳梗塞などのリスクが高まる.内臓脂肪はCTスキャンで見れば確実であるが,腹囲の測定で,男性八五センチ,女性九〇センチを目安とする」と話した.
 門脇孝東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授は,糖尿病から見たメタボリックシンドロームとして,脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンが内臓脂肪蓄積によって減少することでインスリン抵抗性・メタボリックシンドローム・動脈硬化が促進されると説明.その対策としては,生活習慣の改善,血糖,血圧,血清脂質のコントロール,特に食後高血糖の是正が重要であるとした.また,「経口糖負荷試験で食後血糖が二百mg/dl以上の場合は心筋梗塞のリスクが高い」と述べた.
 島本和明札幌医科大学附属病院長は,肥満と高血圧に関して,「腹部肥満は高血圧の発症要因であり,肥満と糖尿病を併せ持つ人は心血管系疾患になりやすい.一四〇/九〇mmHg以上を高血圧とするが,糖尿病を発症している人は一三〇/八〇mmHgぐらいから高血圧と考え,対策が必要である」と述べた.また,病院等では血圧正常でも,家庭や仕事場で高血圧を示す“仮面高血圧”は,ストレス・喫煙・ハードワークに注意が必要で,運動と食事制限の継続が重要であると指摘した.
 最後に,内田健夫常任理事は,“かかりつけ医”と相談して健康管理をするほか,適度な運動と規則正しいバランスのとれた食生活など,自分自身で疾病の発症を防止するという意識の向上が重要であると締めくくった.
 参加者は五百三十二名で,フロアからの質問も活発であった.
 なお,当フォーラムの模様は,三月二十四日(土)二十三時三十分から,NHK教育テレビ「土曜フォーラム」で放送される予定.

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