日医ニュース
日医ニュース目次 第1095号(平成19年4月20日)

『グランドデザイン二〇〇七―国民が安心できる最善の医療を目指して―総論』を発表

 日医は,高齢社会における公的医療保険制度や,医療提供体制のあるべき姿などについての考え方を示した,『グランドデザイン2007―国民が安心できる最善の医療を目指して―総論』をまとめ,3月28日の定例記者会見で概要を,4月1日の第116回定例代議員会で,その全容を明らかにした.

『グランドデザイン二〇〇七―国民が安心できる最善の医療を目指して―総論』を発表(写真) 『グランドデザイン二〇〇七』では,後期高齢者医療制度の財源の九割を公費で賄うことを,提案したほか,高齢化のさらなる進行に向けて,病床,施設を整備する必要性を指摘し,必要病床数等の推計値を示した.
 唐澤人会長は会見のなかで,「少子高齢社会に対して,どのような医療をつくるのか,また介護保険・後期高齢者医療制度の方向性について,執行部としての見解を示した」と表明.今回のグランドデザインは,総論という位置付けであり,今後,より具体的な提案を書き込んだ第二弾(各論)を夏までにまとめ,公表したいと述べた.
 中川俊男常任理事の説明では,『グランドデザイン二〇〇七』は,(一)あるべき医療の実現に向けて,(二)国民のニーズにこたえる医療提供体制,(三)医療保険制度のあり方,(四)社会保障財源の可能性について―の四章構成.
 このうち,「あるべき医療の実現に向けて」では,OECD加盟国との医療費,医療提供体制の比較を通して,日本の取るべき方向性を探っている.それによると,日本のGDPに対する総医療費支出の割合は八・〇%で,OECD加盟国平均の八・八%をはるかに下回り(二〇〇三年データ),最新データでは,かつて,待機患者の多さや医療従事者の不足で医療提供体制が脆弱だとされてきたイギリスにさえ,追い抜かれようとしている.日本は一人当たりGDPが平均以上であるのに,一人当たり総医療費支出は平均以下の水準にとどまっており,経済力では国際的に優位にありながら,医療費は低く抑えられ続けてきた実態が浮き彫りになった.
 日本がOECD加盟国平均並みの医療費水準になるには,総医療費支出で約一〇%,一人当たり総医療費支出で一五%の引き上げが必要だとしている.
 「国民のニーズにこたえる医療提供体制」では,七十五歳以上の三人に一人が「独居」または夫婦とも七十五歳以上の「老々」世帯であることから,「高齢者は在宅へ」という厚生労働省の政策は,危険を伴うと問題視.医療施設などハード面の整備も求められるとして,慢性期入院病床等(医療療養病床プラス現在の介護療養病床を含む介護施設等)と急性期病床(一般病床)の必要数を推計した.
 厚労省は現在,医療・介護合わせて三十八万床ある介護療養病床を,二〇一二年には医療療養病床十五万床のみにまで削減する方針を打ち出している.これに対し,『グランドデザイン二〇〇七』では,医療療養病床は二〇一〇年度時点で二十四万床,二〇一五年度には二十七万床が必要と推計,厚労省方針が現実性に乏しいことを示唆した.介護施設等も加えたトータルの慢性期入院病床等の必要数は,二〇一五年度が四十四万床,二〇二五年度が五十一万床.一方,急性期病床は,二〇一五年度に九十八万床,二〇二五年度には,二〇〇五年度実績の百五万床を上回る百八万床が必要になるとしている.
 「あるべき医療費」として,医療費の将来推計も行っている.最近の医療費の伸びをベースにした推計に,「医療の安全・安心向上のために追加すべきコスト」として,(1)医療安全従事者の配置のためのコスト(2)医療従事者の質を確保する観点から世間並みの賃金上昇率の保証(3)電気,ガスなどのライフライン産業と同様に,再生産(再投資)のためのコスト―を加味した点が特徴である.二〇一五年度は四十三兆円,二〇二五年度は五十二兆円と推計している.
 「医療保険制度のあり方」では,公的医療保険の範囲について,「拡大することはあっても,後退させない」と明記.先進医療等の保険導入については,「普遍性,社会性が高まった時点で,すみやかに公的保険の範囲に吸収し,包容力の高い公的医療保険を追求する」とした.
 「具体的制度設計」として,後期高齢者については,疾病の発症リスクが高く,保険原理が働きにくいうえ,保険料や患者一部負担が大きな負担になることから,「後期高齢者が所得格差の不安なく過ごせるよう,国は『保障』の理念の下で支えるべきである」との基本的方向性を示した.
 これに基づいて,後期高齢者医療制度には,国庫負担を中心に公費を集中投入し,後期高齢者医療費の九割を公費,残り一割を保険料と患者一部負担で賄う.一般医療保険制度(〇〜七十四歳)は,公費を一切投入しない代わりに,保険者の財政を圧迫しかねない後期高齢者支援金(現在の老人保健拠出金)を廃止.財源構成は,医療費の八割を保険料,二割を患者一部負担とする,完全な「保険原理」で運営するとしている.
 この制度設計をベースに給付費(一般プラス後期高齢者)をシミュレーションすると,二〇一五年度は三十八兆円,二〇二五年度は四十六兆円となる.厚労省は,医療制度改革実施後の給付費として,それぞれ三十七兆円,四十八兆円と推計しているが,日医案の下での給付費は,二〇一五年度は厚労省推計とほぼ同額,二〇二五年度はむしろ厚労省推計を下回る水準であり,現実性の高い提案であるといえる.
 なお,『グランドデザイン二〇〇七』の全文は日医ホームページを参照.

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.