日医ニュース
日医ニュース目次 第1095号(平成19年4月20日)

特定健診・特定保健指導(1)
実施に当たっての問題点

 一年後の四月から,従来の老人保健法に基づく市町村による住民健診が,保険者に義務付けられた特定健診・特定保健指導となる.制度変更に伴う課題も多く残されており,会員諸兄にその趣旨等をご理解いただき,また地域医師会での対応を円滑なものにしていくために,数回にわたって情報提供をしていくことになった.
 その第一回目である今回は,特定健診,特定保健指導の問題点をいくつか指摘したい.
 今回の制度改正は,高齢社会を迎え,疾病予防,特に糖尿病を中心とする生活習慣病予防にターゲットを絞り込んだものとなっている.そのため,健診項目は別表のように腹囲,LDLコレステロールなどが新たに加わり,空腹時血糖とHbA1Cは,どちらかを実施,総コレステロールなどが除外された.
 また,心電図や眼底検査,貧血検査等は,医師が必要と認めた場合の詳細検査として実施されることになっている.
 第一の問題は,従来の住民健診との整合性である.疾病予防,早期発見のための健診のターゲットは生活習慣病に限定したものではない.そのため,従来実施されていた健診項目に関しては,特定健診に上乗せして市町村の責任で実施されることが望まれる.
 第二の問題として,他の検診との調整がある.昨年六月にがん対策基本法が成立した.そのなかで,がん検診受診率の向上がうたわれており,精度管理の向上や受診勧奨の方策についても課題として挙げられている.しかし,がん検診は従来どおり,市町村の単独事業となっており,特定健診と実施主体が異なるために,受診者の利便性や受診費用等に関する自治体,保険者,健診実施機関での調整が重要になる.この点も,都道府県医師会,郡市区医師会が中心となって調整することが求められる.
 第三の問題は,労働安全衛生法との整合性であるが,調整の結果,同じ健診項目ということで,最終決着が図られた.労働安全衛生法による健診は,事業主の責任で実施され,その結果,必要な特定保健指導に関しては保険者の責任で実施される.
 特定保健指導に関しては,質問票(服薬歴,喫煙歴等),身体計測(身長,体重,BMI,腹囲),理学的検査(身体診察)血圧測定,血液検査,検尿等の結果により受診者を階層化し,それぞれ情報提供,動機付け支援,積極的支援が実施されることになる.

(常任理事・内田健夫)

特定健診・特定保健指導(1)/実施に当たっての問題点(表)

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