日医ニュース
日医ニュース目次 第1097号(平成19年5月20日)

視点

医政局長通知による保助看法問題の解決

 平成十九年三月三十日に,「分娩における医師,助産師,看護師等の役割分担と連携等について」と題する厚生労働省医政局長通知が,各都道府県知事宛に発出され,同日,日本産婦人科医会会長にも届けられた.
 この医政局長通知の趣旨は,医師,助産師,看護師等が,母子の安全・安心・快適を第一義に,お互いの業を尊重したうえで,適切な役割分担と連携の下で出産の支援に当たる関係を個々の現場において築き,今後一層前向きに関係者が協力していくために,医師,助産師,看護師等の役割分担を示したものである.
 具体的には,看護師等の業については,「看護師等は,療養上の世話及び診療の補助を業務とするものであり(保健師助産師看護師法第五条及び第六条),分娩期においては,自らの判断で分娩の進行管理は行うことができず,医師又は助産師の指示監督の下診療又は助産の補助を担い,産婦の看護を行う」とされた.さらに,それに併せて,本年四月一日の改正医療法の施行に際し,助産所の“嘱託医”および“連携医療機関”は,産科医または産婦人科医であることが義務付けられた.
 すなわち,看護師等は,自らの判断で,微弱陣痛などと診断することや,人工破膜などの処置等の分娩の進行管理はできないが,医師や助産師の指示監督の下では,医師が行う異常分娩の診療の補助や,医師や助産師が行う正常分娩における助産の補助として,各種計測を行い,その結果を医師または助産師に報告すること等,さらに,産婦の看護を行うこともその業の範囲であると法的に解釈できる.
 この局長通知の作成を始める前に,保助看法違反容疑に関する検察当局の重大な裁定があった.昨年八月以降,神奈川,愛知,青森各県において,立て続けに保助看法違反容疑で,警察の大々的な捜査が入ったが,愛知県では起訴猶予,青森県では不起訴との決定がなされ,さらに,平成十七年二月,横浜地検も起訴猶予とし,「処罰は相当でない」とした理由として,「産科医療の構造的問題」を指摘した.
 この検察の判断を受けて,今回の通知内容の作成に関しては,本年二月に,医政局から,日医にまず相談があった.そこで,日本産婦人科医会に顧問弁護士も加わり,医政局を間にして,日本助産師会と日本看護協会とで詳細な調整がされ,最終的に,この局長通知の文面で各団体が了解したものである.
 その結果,今後はこの医政局長通知を基本的なルールとし,この通知に沿って,医師,助産師,看護師等が,連携・協力し,助け合って,分娩を担当する限り,病院,診療所,助産所は,安心して地域の周産期医療を担うことができるようになったのである.
 今後の安全・安心・快適な周産期医療再生のためのさらなる課題は,絶対的に不足している助産師の養成であり,さらに,助産所も含めた,産科診療所と中核病院との,周産期医療連携体制の確実な運用である.
 産婦人科医療を担う若手医師,助産師,看護師等が安心して分娩を担当し,地域の妊産婦のために尽力できる体制をつくるには,医師だけでなく,助産師,看護師等が,それぞれ,小我を捨て,大我につき,お互いに譲り合い,協力し合い,助け合っていくことこそ,絶対不可欠な課題であると思われる.

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