日医ニュース
日医ニュース目次 第1098号(平成19年6月5日)

国民医療を守る全国大会が開かれ「国民の生命と健康を守るための医療費財源の確保」など6項目を決議

 国民医療を守る全国大会(主催:国民医療推進協議会,協力:東京都医師会)が,5月18日,1,300名を超える参加者を集めて,九段会館で開催され,参加者の総意として6項目の決議が採択された.
 当日は,国会会期中にもかかわらず,多くの国会議員も激励に駆けつけた.

国民医療を守る全国大会が開かれ「国民の生命と健康を守るための医療費財源の確保」など6項目を決議(写真) 本大会は,財政制度等審議会の建議書および経済財政諮問会議の「骨太の方針二〇〇七」の公表に先立って,医療を取り巻く厳しい現況を国民の声とともに,政府や厚生労働省,国会議員などに届けることを目的として行われたものである.
 当日は,萩原正日本柔道整復師会会長が,「社会保障制度のあり方が論じられている今こそ,国民とともに運動し,国民医療を守っていかなければならない」と述べて,開会を宣言.
 その後,国民医療推進協議会会長である唐澤人日医会長が,主催者を代表してあいさつを行った.唐澤会長は,「政府が財政優先の視点のみから医療費抑制政策を断行しているために,地域医療は崩壊とも言うべき危機的な状況にある.日本は,ここ数年,経済成長がプラスに推移し,デフレ不況も脱却したと言われているのに,なぜ,政府は国民から医療へのフリーアクセスの権利を奪い,患者負担を増やすような施策をとるのか分からない」と政府の方針を批判.今回の大会については,「国民の生命,健康を預かるものとして,世界に誇る日本の国民皆保険制度の維持,再構築に向けて最善を尽くす責務があると考え,大会を開催することとした.本日の大会が国の誤った施策に対する国民の声を届ける端緒となるよう協力願いたい」とした.
 つづいて,大会開催に協力した東京都医師会の鈴木聰男会長があいさつし,「国民の医療に対する不安を受け止めるだけではなく,それをまとめて大きな声とし,国,与党,国会議員の先生方に伝えていくことが,われわれ医療人の大きな役割であると考えている.今回の大会を通じて,その役割を果たしていきたい」と述べた.
 次に来賓として,二十一世紀の社会保障制度を考える議員連盟の鈴木俊一自民党社会保障制度調査会会長より,「現在,社会保障制度改革が進められているが,医療は人の健康・生死にかかわる問題があるので,財政の物差しだけでは計れるものではない.今後も,医師確保,入院日数などの課題についても取り組み,国民本位の医療を実現していくために努力したい」とあいさつをいただいた.そのほか,国会議員八名からも激励の祝辞があった.
 引き続き,竹嶋康弘日医副会長が,四月十八日に開かれた国民医療推進協議会総会で,その方針を確認した趣意書の内容を説明.「今ならまだ,間に合う」を合言葉として,国民とともに,世界に誇れる日本の医療を守る行動を展開していこうと呼び掛けた.

四団体が意見表明
「現場の声を制度改革に」

 その後,国民医療推進協議会の四つの団体から意見表明が行われた.
 大久保満男日本歯科医師会会長は,昨今の医療費抑制策によって,制度と医療現場の距離が広がり,現場の声が届きにくくなっていると指摘.このままでは地域医療は崩壊してしまうとし,今後も国民医療を守るために努力していく考えを示した.
 中西敏夫日本薬剤師会会長は,国民の生活と健康を守っていくためには財源が必要であるのに,政府から出される施策は医療費の抑制策ばかりであると批判.その財源を確保し,国民皆保険制度を維持していくためにも,国民とともに戦っていくと,その決意を表明した.
 木下毅日本療養病床協会会長は,現場と乖離した制度改革が行われているために,現場ではさまざまな問題が起きていると指摘.療養病床の削減についても,「高齢者医療や在宅サービスの拠点となっている療養病床を削減することは理解できない.国民が安心して人生を全うするためにも,療養病床が持っている機能は必要だ」と訴えた.
 村山友宏日本ウオーキング協会副会長は,イベント開催のために全国を回ってみると医療格差が生じていることが分かるとし,その格差を解消することが,今後,重要になると指摘.「われわれは医療従事者団体ではないが,国民の健康を守るという目的は同じであり,今後も専門団体と手を取り合って活動を続けていきたい」と述べた.
 その後,羽生田俊国民医療推進協議会理事が,六項目からなる本大会の決議案(下掲)を朗読.満場の拍手をもって,決議案は採択された.

決  議

 現在,国民不在の医療制度改革が断行されようとしている.私たちは国民とともに,国民の生命と健康を確保し,国民が「格差」に苦しむことなく,安心して暮らせる社会作りを目指す.
 よって,本大会参加者全員の総意として,次のとおり決議する.

一,国民のための医療の実現
一,高齢者のための入院施設の削減反対
一,医師・看護師不足の解消
一,医療における格差の是正
一,患者の負担増反対
一,国民の生命と健康を守るための医療費財源の確保

平成十九年五月十八日

国民医療を守る全国大会

 最後に,川合秀治全国老人保健施設協会会長の掛け声のもと,参加者全員が起立して「頑張ろうコール」を行い,会は終了となった.
 大会終了後,唐澤国民医療推進協議会会長(日医会長),大久保同協議会副会長(日本歯科医師会会長),ならびに中西同協議会副会長(日本薬剤師会会長),羽生田同協議会理事(日医常任理事)が出席して,記者会見が行われた.
 初めに,司会の中川俊男日医常任理事が,大会の成果を報告した.
 その後,唐澤会長は,少子高齢社会において,救急・小児・産科医療など,種々の問題が,各地域で現実に起きており,脈々と作り上げられてきた現在の体制も危うくなってきたと指摘.
 そのうえで,「国民の健康・生命を守る手厚い制度と,それを支えるために必要な財源を削減・縮小し,制限していくことが,経済・産業の大国であるわが国が進む道として正しいかという根本的な問題をまず問い掛けてみたい.国民にいちばん近いところで仕事をしているわれわれが,日々耳にする国民の声を代弁できないかという大きな目的もあった」と述べ,本大会で,医療に対する危機感を国民と共有でき,期待以上の成果を上げられたと思うと結んだ.

国民医療推進協議会参加団体(平成19年5月18日現在)

健康・体力づくり事業財団,全国病院理学療法協会,全国訪問看護事業協会,全国有床診療所連絡協議会,全国老人保健施設協会,全日本鍼灸マッサージ師会,全日本病院協会,日本医師会,日本医療教育財団,日本医療事務振興協会,日本医療社会事業協会,日本医療法人協会,日本医療保険事務協会,日本ウオーキング協会,日本栄養士会,日本介護福祉士会,日本学校保健会,日本看護協会,日本作業療法士協会,日本歯科医師会,日本歯科衛生士会,日本視能訓練士協会,日本柔道整復師会,日本鍼灸師会,日本精神科病院協会,日本病院会,日本病院薬剤師会,日本放射線技師会,日本訪問看護振興財団,日本薬剤師会,日本理学療法士協会,日本臨床衛生検査技師会,全国公私病院連盟,日本医業経営コンサルタント協会,全国自治体病院協議会,日本臨床工学技士会,日本精神保健福祉士協会,全国腎臓病協議会,認知症の人と家族の会,日本療養病床協会

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