日医ニュース
日医ニュース目次 第1098号(平成19年6月5日)

日本医師会市民公開講座
「どう防ぐ新型インフルエンザ」をテーマに

日本医師会市民公開講座/「どう防ぐ新型インフルエンザ」をテーマに(写真) 日本医師会市民公開講座が,五月十二日,「どう防ぐ新型インフルエンザ」をテーマに,日医会館大講堂で開催された.参加者は五百八十一名であった.
 内田健夫常任理事の総合司会で開会.竹嶋康弘副会長は,冒頭のあいさつのなかで,「日医では医師の生涯教育だけでなく,国民の方々にも医療医学に正しい知識を習得してもらえるように,毎年,市民公開講座を開催している.感染症については国民の関心が高まっているが,感染症を正しく理解し,過度の不安を持たずに対処することが大切である.今回は発生が危惧されている新型インフルエンザについて理解していただくために,このテーマを選んだ」と述べた.
 つづいて,四人のパネリストによるパネルディスカッションが行われた.
 飯沼雅朗常任理事・感染症危機管理対策室長は,過去数十年の間に人に感染したことのないウイルスが,人から人に感染を起こすようになった場合に新型インフルエンザと呼ぶが,十〜四十年周期で出現してきた過去の大流行を起こしたインフルエンザはすべてA型で鳥由来であると説明.インフルエンザウイルスは感染力が強く,病原性が高い.また突然変異を起こしやすいため,毒性の高い新型インフルエンザが流行すると死亡者が増える可能性があると指摘した.また,インフルエンザウイルスの構造を詳細に説明し,小変異についてはワクチンが相対的に有効だが,大変異の場合は無防備であると注意を促した.
 次に,岡部信彦国立感染症研究所感染症情報センター長は,鳥インフルエンザと新型インフルエンザの違いについて,WHOフェーズ分類を使って説明,H5N1タイプの鳥インフルエンザの発生状況について報告した.日本では通常の生活をしているなかで鳥インフルエンザに感染することはまずなく,卵や鶏肉も心配はないと言われていると説明した.ただし,心配であれば,加熱すればウイルスは死滅すると,その安全性について付け加えた.
 つづいて,三宅智厚生労働省健康局結核感染症課長が,わが国では,WHOフェーズ分類のフェーズ4となり新型インフルエンザが発生した際に備えたガイドラインを作成し,対策していることを説明.新型インフルエンザについては,(1)医療の対応として症例の早期発見報告,状況把握・拡大防止(2)社会での対応として,企業・個人ごとのガイドラインやリスクコミュニケーション(3)死亡者が増加した場合の円滑な埋火葬の実施―などを説明した.また,検疫等,水際対策の重要性を強調した.
 次に,川名明彦国立国際医療センター特別疾病制圧班医長から,新型インフルエンザの症状・診断・治療について解説があった.症状については,過去の新型インフルエンザと同様の症状で発症することが予想されること,発熱する一日前からウイルスの排泄が始まっていること,新型インフルエンザは現在の迅速診断キットでは通常のインフルエンザとの鑑別がつかないことなどの説明があった.また,新型インフルエンザ発生時には,その疑いがある場合,流行初期であれば保健所の発熱相談センターに連絡し,本格的流行期には専門病院の発熱外来を受診して欲しいと述べた.
 また,新型インフルエンザについても,基本的にはタミフル(オセルタミビル)やリレンザ(ザナミビル)などによって治療することや,それぞれの治療薬の備蓄状況についても説明.インフルエンザの予防としては,マスクの使用,外出を控える,手洗いやうがい,十分な休養,バランスのよい食事,室内の換気,乾燥防止が大切であるとの説明があった.
 本講座の模様は,五月二十七日(日)午後六時から七時まで,NHK教育テレビ「日曜フォーラム」にて放送された.

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