日医ニュース
日医ニュース目次 第1099号(平成19年6月20日)

日医定例記者会見

5月23日
財政審「医療制度の現状と課題」についての問題意識と日医の主張を示す

 中川俊男常任理事は,五月十六日に開催された財政制度等審議会財政制度分科会財政構造改革部会において,今後の改革の方向性として示された資料「医療制度の現状と課題」についての問題意識と日医の主張を示した.
 同常任理事は,まず,「財政審が,『医療コスト構造の改革については,給付の具体的な抑制』(財政審資料七十四ページ:以下ページのみ記載)を目的としており,根本的な部分で受け入れられない」と断じた.
 そのうえで,個別にも現状認識で相容れない部分があるとし,(一)医療費の動向,(二)終末期医療,(三)後発医薬品,(四)包括払い化,(五)保険免責制―の五点を特に問題として挙げた.
 (一)医療費の動向:「診療報酬改定や制度改正がなければ,医療費の伸びは,おおむね三〜四%で推移」(同資料五ページ)とあるが,厚生労働省のこれまでの報道発表では,最近の自然増等は二〜三%台である.
 また,「医療機関の収入も制度改正や診療報酬引下げがなければ毎年三〜四%増加」(同資料十四ページ)とあるが,「診療報酬=医療機関の取り分」ではない.国民医療費三十二・一兆円中,病院(十六・五兆円),診療所(七・九兆円),歯科診療所(二・五兆円)で計二十六・九兆円であり,そのうち,製薬メーカー等へ四六・七%,医療機関の給与費は四九・一%に過ぎず,残りのわずか四・二%を支払利息・税金・再生産費用に充てているのが実情である.
 (二)終末期医療:「死亡前一カ月の平均医療費百十二万円」「一年間にかかる終末期医療費約九千億円」(同資料三十ページ)に対しては,医療経済研究機構が平成十二年(データは平成十年のもの)に行った試算を基に厚労省が推計したもので,信頼性に疑問がある.
 一方,日医総研の緊急調査(平成十八年度分)では,急性期の病院でも高齢者の死亡三十日以内医療費は一人一カ月八十四万円であった.終末期医療費が過大であるかのような誤解を導くデータを基にして終末期医療のあり方を議論する前に,改めて現状の調査・分析が必要.
 (三)後発医薬品:「後発医薬品のある先発品を全て後発品に振り替えた場合,国民負担額は約一・三兆円減少」(同資料三十六ページ要約)に対しては,「平成十八年度診療報酬改定結果検証にかかる特別調査・後発医薬品使用状況調査」(四月中医協資料)」で明らかなように「『後発医薬品への変更可』欄に処方医の署名等がある処方せん枚数」のシェアは一七・一%と低率なのが現場の実態であり,すべて振り替えられるというのは「大胆な仮定」だとした.
 さらに,日医実施の「ジェネリック医薬品に関わる緊急調査」結果によれば,医療現場での後発品に対する不安は大きい.基盤整備が不十分な現状では,安全性と品質の確保が先決である.
 (四)包括払い化:「包括払い化はコスト是正に有効な方策」「予め包括化に伴う医療機関におけるコスト低減効果を診療報酬に織り込む必要」(同資料七十一ページ要約)に対しては,包括払い化の問題点として,(1)患者の病態に応じた最善の医療を妨げる(2)医療費の総枠抑制が可能になる(3)医療費の実態把握が困難になる―を挙げた.
 (五)保険免責制:過去の「建議」における主な指摘事項として記載された「一定金額までの保険免責制の導入」(同資料七十五ページ)に対しては,格差を助長し,若年層の公的保険離れ(保険料未払い)にも直結すると指摘.さらに,免責千円が導入されれば,一人一日当たり入院外医療費に占める自己負担割合は,一般四・一割,老人二・二割になるという試算を示し,これで社会保障制度としての公的保険と言えるのかと強く批判した.

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