日医ニュース
日医ニュース目次 第1100号(平成19年7月5日)

日医定例記者会見

6月6日
行き過ぎた歳出改革の是正を求める

 経済財政諮問会議が取りまとめる「基本方針二〇〇七」(いわゆる「骨太の方針二〇〇七」)が閣議決定されるのを前にして,中川俊男常任理事は,日本の医療現場の疲弊した現状を説明するとともに,あるべき医療を確保するためには医療費を増やす必要があることを改めて指摘した.
 「医師が偏在か不足か」という問題について,同常任理事は,偏在ではなく,絶対数で不足していることが明らかになってきたと指摘.その直接的な要因としては,「新医師臨床研修制度」と「医療訴訟の増加と刑事訴追」があり,本質的な要因としては,「長期にわたる医療費の抑制」が考えられるとした.
 また,その対策については,緊急的対策(医療現場を守る診療報酬の引き上げ,女性医師の就業支援を含む医師の就業環境改善のための財政的措置,臨床研修募集定員の適正化,医学部定員地域枠の拡大と奨学金制度の充実),短期的対策(医療上の問題における刑事訴追の限定化),中期的対策(大学医学部定員の適正化,医師の再就職支援等)─を考えていることを明らかにした.さらに,勤務医不足の解消と開業医の適正な評価のためには,財政中立を脱却した新たな財源が求められるとの考えを示した.
 同常任理事は,また,「骨太の方針二〇〇六」に明記された「社会保障費を今後五年間に国と地方合わせて一・六兆円削減する方針」について触れ,「骨太の方針二〇〇七」では,具体的な数字こそ示されていないが,引き続き警戒が必要であると述べた.
 さらに,過去五年間(二〇〇二〜二〇〇六年度)の社会保障費の削減額を基に,今後五年間(二〇〇七〜二〇一一年度)の改革効果を日医で推計した結果を概説.二〇〇八年四月から実施される「七十〜七十四歳の高齢者の患者負担の見直し」「医療費適正化計画」「後期高齢者医療制度の創設」などによって,約一・六兆円を大幅に超える削減が見込まれることが明らかになったとしたうえで,「社会保障,特に医療は行き過ぎた改革になっている」とし,その是正を強く求めたいとした.
 同常任理事は,先進国並みの医療費水準を実現するためには医療費を増やす必要があるとし,その財源については,特別会計を含めた国家財政全体のさらなる見直しを行うことで捻出するよう,改めて提案した.
 なお,同日の記者会見で中川常任理事は,厚生労働省が作成し,「基本方針二〇〇七(素案)」のなかにも書き込まれた「医療・介護サービスの質向上・効率化プログラム等」にも言及.明記された各項目にある平均在院日数の短縮,在宅医療・在宅介護の推進と住宅政策との連携,「総合的な診療能力を持つ医師」の養成,後発医薬品の使用促進,DPC対象病院の拡大,オンライン請求の義務化─等に対し,その問題点を明らかにし,再度,日医の見解を述べた.

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