日医ニュース
日医ニュース目次 第1102号(平成19年8月5日)

「新しい医学の進歩」〜日本医学会分科会より〜

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日本臨床薬理学会の活動と最近の話題
〈日本臨床薬理学会〉

 日本臨床薬理学会は,一九七〇年に臨床薬理学研究会として発足し,十年後の一九八〇年に現在の学会となった.よって研究会時代を含めると三十五年余の歴史を有し,現在の会員数は約二千八百人である.
 臨床薬理学は,合理的薬物治療を志向する学問分野である.合理的薬物治療を実践するためには,(1)より良い医薬品を開発(創薬)し,臨床現場でその有用性を確実なものと(育薬)する臨床研究(治験)の適切な実施,(2)個々の症例に対する合理的な薬物投与設計とそれに役立つ臨床薬物動態学や薬理遺伝学的研究に則した情報提供,さらに,(3)個々の患者に対する医療者としての良きパートナーシップと信頼関係の形成─が必要である.
 最近,世界で非常に汎用されている医薬品が,わが国では未承認であったり,承認までに長い時間がかかり,その結果,医療先進国であるわが国で,優れた医薬品が患者に届き難い状況があると報じられている.
 この状況を改善するため,今年から厚生労働省・文部科学省が,「新たな治験活性化五カ年計画」をはじめ,全国の医療機関から治験の中核・拠点病院を選択し,さらにそれらの病院と地域の診療所等のネットワークを構築して,わが国の治験推進に動き出した.
 今までも,日本臨床薬理学会はこれらの行政政策に大いに協力してきたが,今後も医療機関の治験・臨床研究体制の整備,治験・臨床研究を担当する医師・薬剤師をはじめ,治験コーディネータ(CRC:Clinical Research Coordinator)の教育・養成に積極的に取り組み,わが国の患者に,より良い医薬品がいち早く届けられ,合理的薬物治療が実践されるよう,学会としての社会的責務も果たそうと考えている.
 地域医療に日々,貢献されている先生方にとって,治験・臨床研究等への参加,また多くの薬物治療情報を通して,日本臨床薬理学会がさらに身近に感じられることを期待している.

【参考文献】
一,CRCテキストブック,編集:日本臨床薬理学会,責任編集:中野重行,安原一,中野眞汎,小林真一,医学書院,2006.

(日本臨床薬理学会理事長・聖マリアンナ医科大学教授 小林真一)

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