日医ニュース
日医ニュース目次 第1117号(平成20年3月20日)

平成19年度学校医講習会
小児の生活習慣病とアレルギー疾患をめぐって

平成19年度学校医講習会/小児の生活習慣病とアレルギー疾患をめぐって(写真) 平成十九年度学校医講習会が,二月二十三日,日医会館大講堂で開催された.
 内田健夫常任理事の司会で開会.冒頭,唐澤人会長(岩砂和雄副会長代読)は,昨今の社会環境や生活様式の急激な変化が,アレルギー疾患やこころの問題など,さまざまな健康リスクを児童・生徒にもたらした.特に,生活習慣病とも言える児童・生徒の増加は,重要課題の一つだと指摘.「人の生涯にわたる健康の基盤形成のためには,子どもの時期からの生活習慣病予防対策が大切で,“よく食べ,よく動き,よく眠る健康三原則”の徹底が望まれる.学校医には,生涯保健の観点からの健康教育と保健管理という新たな役割が求められる」とあいさつした.
 日本学校保健会会長(唐澤日医会長,内藤昭三専務理事代読)からも,あいさつと活動紹介があった.
 (一)「最近の学校健康教育行政の課題について」では,文部科学省の岡田就将スポーツ・青少年局学校健康教育課専門官が,近年の子どもの健康に関する実態を紹介.中央教育審議会スポーツ・青少年分科会学校保健・安全部会が一月に取りまとめた答申を踏まえて,今後の学校保健の方向性についても言及した.
 (二)ノーマライゼーションのまちづくりを基本理念として市政運営を行ってきた埼玉県東松山市長の坂本之輔氏が,「特別支援教育と今後の課題」と題して講演した.
 東松山市では,平成八年から介助員制度を開始,地元の小・中学校への障害児の受け入れを行い,現在,市内の小・中学校に三十三人の介助員を派遣し,義務教育年齢の障害児の七五%が地元の通常学校に通学している.また,昨年六月,障害のある子どもの進学先を通常学校と特別支援学校などに実質的に振り分けている「就学支援委員会(就学指導委員会)」を全国に先駆けて廃止.新年度から市立小学校に,たん吸引など医療行為が必要な児童に対処するため,看護師一人を配置すること等を報告した.
 午後からは,岡田知雄日大医学部小児科学系小児科学分野准教授による「小児の生活習慣病の予防」の講演が行われた.
 小児の肥満,メタボリックシンドロームは,成人メタボリックシンドロームや,心血管病に移行することが多く,栄養問題と運動不足が関与しており,校庭開放,クラブ活動など,学校現場を利用した生活習慣病予防システムの構築と,関係者への働き掛けが大事である.学校医はその中心的役割を担うべきで,特に,重症肥満,肥満による合併症の予防は重要だとした.
 つづいて,「学校におけるアレルギー疾患の管理と支援─今後の具体的取り組みの方向を探る─」と題したシンポジウムが行われた.(1)小児アレルギー科医の立場から,海老澤元宏国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部長は,児童生徒の各種アレルギー疾患の増加を指摘し,学校関係者のアレルギー疾患に対する正しい理解の必要性と,疾患ごとに想定される配慮・対応を述べ,エピネフリン自己注射キット(エピペン)の緊急時使用について紹介した.(2)皮膚科医の立場から,服部瑛はっとり皮膚科医院理事長は,環境・遺伝的体質からアトピー性皮膚炎への流れの説明とスキンケアの必要性を述べ,学校における取り組みを紹介した.
 (3)眼科医の立場から,吉田博吉田眼科院長は,アレルギー性結膜炎と春季カタルの相違点と対応を述べ,点眼治療のほか,人工涙液による洗眼もセルフケアとして推奨した(市販のカップ式洗浄器具は,かえって不適当).また,反復する角膜上皮障害を起こす重症春季カタルの増加を指摘した.(4)耳鼻咽喉科医の立場から,島田和哉幸芳耳鼻咽喉科医院長は,児童・生徒には通年性のアレルギー性鼻炎が多いが,主な原因は大気汚染であり,治療は初期療法による過敏性の抑制と症状の軽減であると述べた.
 総合討論では,フロアから,エピペンの管理や使用法に質問が集中し,岡田文科省専門官が幾度にもわたり答弁するなど,充実した討論が行われ,閉会した.
 参加者は二百八十三名.

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