日医ニュース
日医ニュース目次 第1119号(平成20年4月20日)

平成20年度
日本医師会事業計画

 わが国においてはここ数年,地域における救急医療,小児医療,産科医療等の厳しい実態が社会問題化し,地域医療崩壊への懸念が国民一丸となった「声」となり,マスメディアの「医療問題」に関する取り扱いも日に日に深刻化している.
 われわれ日本医師会も,国民皆保険制度の堅持を主軸に,国民の視点に立った多角的な運動を展開し,各方面に地域医療再生への理解を求める働き掛けを徹底することにより,多くの賛同を得てきた.
 殊に,診療報酬改定率を巡っては,昨年十月,地域医療を支え,医療安全ならびに医療の質を確保するために必要な最低限の医療費を客観的データに基づいて示したうえで,五・七%のプラス改定要望を政府に提出した.
 年末にかけては,全国の医師会との強力な連携のもと,各方面への活発な働き掛けを展開した.その結果,診療報酬全体の改定率はマイナス〇・八二%であったものの,医科本体では,八年ぶりに〇・四二%のプラス改定を勝ち取ることができた.
 しかしながら,地域医療の崩壊を食い止めるためには,決して十分な結果とは言えないため,今後も医療財源の確保を目指し,国内総生産(GDP)に対する総医療費の割合が,OECD加盟国の平均値(八・九% ※日本は八・〇%)水準まで引き上げられるよう,関係各方面に強力に訴えていく.
 平成二十年度は,各種医療制度改革が実施に移されるなかで,地域医療が実践される.そのため,このたびの診療報酬改定内容を「土台」として,“医療は社会的共通資本である”との理念のもと,引き続き地域医療の充実に向けた取り組みを継続・強化していく必要がある.
 そうした取り組みに際しては,全国の医師会と日本医師会との強力かつ綿密な連携が重要であり,地域医療のさらなる充実・再生へ向けて,一層の相互理解・相互協力が求められる.
 以上のような基本的な認識に基づき,日本医師会は平成二十年度事業計画として,各種会内委員会の充実,日本医師会総合政策研究機構(日医総研)の積極的活用および日本医師会治験促進センター,女性医師バンク運営のさらなる充実・活用はもちろんのこと,「総合的医療政策の確立」,「医の倫理の高揚」,「医療安全対策の推進」,「生涯教育の充実・推進」,「広報活動の強化・充実」,「地域医療提供体制の確立・再生」などの「当面する重点課題」について,全会員の強い結束・団結のもと,地域に密着した医師会活動を基本として,その関連諸施策の推進を図る.

当面する重点課題

1.総合的医療政策の確立
 一連の構造改革が進行するなかにあって,国民皆保険制度を堅持し,すべての国民に対して必要かつ十分な医療を適切に提供するため,総合的医療政策のガイドラインとしての『グランドデザイン二〇〇七』を,平成十九年三月に「総論」,八月に「各論」と,分けて国民に提示した.グランドデザインに示す政策の実現に向けて,さらに積極的な活動を展開する.
 昨年度は,日本医師会の医療政策を一元化するため,総合医療政策課を創設したが,今後は担当事務局間の連携を強化することも含め,医療政策の充実とその実現に向けた取り組みの拡大を図る.
 また,国民医療推進協議会加盟団体との,さらなる連携・協働を図るとともに,都道府県医療推進協議会の活動を支援し,国民の医療・介護・保健及び福祉の向上に向けた活動を推進する.

2.医の倫理の高揚と医療安全対策の推進
 医界の秩序と国民の医療に対する信頼を確保し,医学・医療を真に人類の幸福に寄与するものとするために,日本医師会が独自に作成した『医の倫理綱領』および『医師の職業倫理指針』を広く周知徹底し,医の倫理の向上を図る.特に,医師の日常的自浄作用,患者の個人情報の保護,診療情報の提供については,医師の責務として一層の普及,定着を促進する.さらに,患者の安全確保と医療の質の向上を最優先課題として,医療安全確保対策,会員の倫理及び資質の向上を推進する.

3.生涯教育の充実・推進
 生涯教育の推進は,医療の質の向上,医療安全のためにも重要な課題である.また,生涯教育の成果を国民に分かりやすい形で示していくことが重要であり,生涯教育の方略の充実,評価基準の確立を含めた日本医師会生涯教育制度の見直しは絶えず求められる.
 昨年度末に取りまとめられた,日本医師会が考えるかかりつけの医師,すなわち,「最新の医療情報を熟知して,必要なときには専門医を紹介できる,地域医療,保健,福祉を担う総合的な能力を有する医師」を養成するための生涯教育カリキュラム改訂版については,広く意見を求めて完成させ,会員に周知徹底する.さらに,カリキュラムの履修方法についての検討を行い,また,履修者に対する質の担保をどのように行うかについても引き続き検討する.
 生涯教育推進の媒体である『日本医師会雑誌』においても,新しいカリキュラムに基づいたテーマを選んで特集を組み,毎月刊行する.さらに生涯教育シリーズとして時宜にかなった企画内容で特別号を刊行する.

4.医師会組織の継続的強化
 病院団体や大学医師会等との一層の連携により,勤務医の医師会加入を促進して,医師会組織の強化を図るとともに,過重労働問題等にも積極的に対応する.また,女性医師の医師会活動参加のために,会内委員会への女性医師の積極的な登用を図るとともに,女性医師に関わる諸問題について,さらに取り組む.
 平成二十年十二月一日施行の公益法人制度改革に対しては,新制度に合致した定款諸規程類の検討作業を進めるほか,関係省庁から必要な情報を収集するとともに,医師会事業の公益性に関する要望活動を適宜行うなど,公益認定取得に向けた取り組みを強化する.また,全国の医師会組織が円滑に新制度に移行できるよう,情報提供や担当理事連絡協議会の開催等を通じて連携を図っていく.

5.日本医師会年金の運営強化と会員福祉施策の充実
 医師福祉の充実・向上なくして地域医療の確保・再生は図られない.殊に,医師福祉の重要な柱である日本医師会年金(医師年金)は,会員の老後および遺族の生活安定の支えとなっている現状にある.
 医師年金は,医師のライフスタイルに合わせた医師のための年金として多くの特徴を有しており,世界医師会を始め海外の医師会からも注目されている.このような医師年金について会員のさらなる理解を深める必要から,普及推進には特に力を注ぐ.このため,昨年度に引き続き,今年度も春期,夏期,冬期に強化期間を設け,医師年金の特徴を十分に周知するとともに,普及推進を積極的に図る.なお,普及推進には,医師・従業員国民年金基金との連絡協調体制を取るほか,医師国保組合,医師信用組合,医師協同組合との情報交換ならびに連絡協調体制の強化を推進する.
 また,制度運営面においては,将来にわたり制度を安定的に管理運営していくため,ガバナンスを強化し,組織運営体制の見直し等の必要な措置を講じていく.
 年金資産の管理運用面については,今後とも健全かつ効率的な運用を図るため,引き続き検討を進める.
 平成十九年度より子育て中の医師が参加しやすくするため,日本医師会が行う研修会等において託児室を設置することを事業計画に明記し,各研修会の開催に際し参加者に周知したところ,多くの利用があった.本年度も引き続き託児室を設置することとし,日本医師会だけではなく全国の医師会でも同様の措置が取られるよう取り組む.

6.医療分野におけるIT化の推進
 「医師会総合情報ネットワーク」の一環として,ORCAプロジェクトにおける日医標準レセプトソフトの推進をさらに強化するとともに,データ収集を通じた医療費動向や受療動向などの解析を行うなど,医療政策提言への活用を図っていく.また,レセプトオンライン化,社会保障カード,ナショナルデータベースやEHR(Electronic Health Record)構想など,医療分野におけるIT化を管理医療・医療費抑制の手段として推進する国の施策に対し,医療提供者の立場から具体的な対策を講じていく.

7.広報活動の強化・充実
 国民の生命と健康を守る日本医師会の主張が,いかに正当なものであれ,日本医師会が理解され認知度が高まらない限り,国民に浸透させることは難しい.広報戦略の基本は,第一に,日本医師会のイメージアップを図ること,第二に,日本医師会の見解を速やかに国民と会員に伝え理解を得ること,第三に,日本医師会,都道府県医師会,郡市区医師会が互いに連携して有機的な活動を展開すること,である.
 平成十八年度の下半期から開始したテレビCMを用いた広報活動が一定の効果を発揮しているので,引き続き推進するとともに,ラジオCMによる新たな広報も展開する.新聞への意見広告については,これまでどおり必要に応じて行う.また,毎週開催している定例記者会見の内容を,『日医ニュース』,白クマ通信,ホームページなどを通じて,会員ばかりでなく,国民にも伝える.記者会見の定例化は,メディアとの関係を良好なものにし,本会の主張や見解が,メディアからも,国民に伝わるようになってきた.これら既存の広報手段の充実とともに,日医企画・提供の健康情報番組についても質の向上を図る.
 ホームページは,国民向けの健康情報の提供を充実させるとともに,テレビCMの視聴,定例記者会見,『日医ニュース』記事の掲載等を通じて,日医の見解を分かりやすく伝え,理解を得られるよう努めていく.さらに,会員との情報共有化を図るため,各種講習会,シンポジウム等を可能な範囲で配信していく.その他,医療分野における喫緊の課題を取り上げ,ホームページ上から緊急調査を実施し,政策や提言に反映させていく.
 都道府県医師会に対しては,都道府県医師会事務局とのメーリングリストの一層の活用を図り,双方向の情報交換が円滑に行われるよう推進する.

8.国際活動の推進
 グローバル・ヘルスを国際活動の主軸として推進する.世界医師会(WMA)に対し積極的な提言を行い,理事国としての責務を果たすよう努める.アジア大洋州医師会連合(CMAAO)についても,その事務局としての役割を果たすため,各国間の情報交換を活発にして,組織の活性化を図る.また,アメリカ医師会等各国医師会との交流を通じて,医療界における共通の課題に対応していく.武見国際保健プログラムに関しては,応募,選考などを含めて日本医師会が主導的運営を行い,引き続きハーバード大学公衆衛生大学院との協力関係を維持していく.『JMAジャーナル』は,日本医師会の活動を世界に紹介する英文誌として,内容のさらなる充実を目指す.

9.医療保険制度の充実に向けた取り組み
 平成二十年四月より,診療報酬改定及び後期高齢者医療制度が実施される.八年ぶりに診療報酬本体がプラス改定であったが,改定率プラス〇・三八%(医科プラス〇・四二%)では,病院勤務医の疲弊改善のための財源が不足するため,診療所の財源を病院に移行させる手法がとられた.このことによる医療現場の影響も含め,診療報酬改定全体の評価,影響と対応,さらには不合理点・矛盾点の集積を,社会保険診療報酬検討委員会を中心に行っていく.
 レセプトのオンライン請求等への対応については,引き続き,従前から要求している「薬効薬理作用に基づいた医薬品の投与」等の前提条件の実現・拡大を図る.また,平成二十年四月より,四百床以上の病院でレセプトオンライン請求が実施されるため,その影響や問題点の把握・分析を行い,対応を検討する.
 指導大綱,監査要綱については,見直しの時期に来ている.単に高点数という理由で医療機関が選定される矛盾や社会保険庁解体に伴う地方厚生局再編による問題も含めて,検討を行っていく.

10.地域医療提供体制の確立・再生
 地域医師会との緊密な連携のもと,医療財源の確保を前提に,すべての国民への平等で良質なサービスの提供を目指して,地域における保健・医療・福祉を推進し,「かかりつけ医機能」を中心に据えた地域医療のさらなる充実を目指す.
 特に,地域における医療提供体制の確立・再生へ向けては,『グランドデザイン二〇〇七』に基づき全般にわたる改革を進める.
 喫緊の国民的問題となっている医師の偏在・不足に対しては,地域医療における役割分担と連携の推進を図るとともに,勤務医対策,ドクターバンク事業の推進,医師が安心して診療に従事できる仕組みの確立等,多岐にわたる対策を講ずる.また,国の医師確保対策へ参画すると同時に,病院団体や大学等関係者との協議を併せて進めていく.
 このほか,救急蘇生法の普及啓発,小児救急医療やドクターヘリの推進等の救急医療体制の定着・拡充を図るとともに,新興・再興感染症等の感染症対策の推進,少子化対策,周産期医療の充実,母子保健対策,学校保健対策等「子ども支援日本医師会宣言」の実現を図る.また,小児保健法検討委員会より昨年度提出された答申をもとに,小児保健法の実現に向けた取り組みに着手する.
 さらに,過重労働・メンタルヘルス対策を始めとした労働者の健康確保対策,特に小規模事業場における産業保健活動の推進,禁煙推進活動,食品安全に関する情報システムの構築等に努める.生活習慣病対策としては,特定健診・特定保健指導の基盤整備と推進,がん対策基本法を踏まえたがん検診や緩和ケアの充実等,がん対策に取り組む.特に,特定保健指導のなかの運動指導における健康スポーツ医の具体的な役割が示されたことから,その実現に向けて積極的に健康スポーツ医活動を推進していく.また,糖尿病対策については,日本糖尿病対策推進会議との連携のもとに積極的に取り組む.
 地球温暖化防止や石綿,小児の環境保健などの環境問題は,医療や保健の面において重要かつ喫緊の課題である.特に地球温暖化防止は,本年の洞爺湖サミットにおいても,重要な課題としてとらえられており,今後も継続して二酸化炭素削減のための取り組みをしていく.また,都道府県医師会や郡市区医師会に対し,環境問題への取り組みを積極的に行うよう働き掛けていく.
 医療廃棄物,在宅医療廃棄物についても,今後の増加に備え,地域医師会を含めた体制整備に努め,環境の立場からも積極的に検討を行う.
 介護保険については,地域医師会が地域支援事業,地域包括支援センターの運用に十分関与できるよう対処する.そのうえで,医療難民,介護難民を生じさせないよう,療養病床再編問題をとらえ,第四期介護保険事業計画作成に向けての意見集約に努める.また,平成二十一年度の介護報酬改定に向け,サービスのさらなる充実のため,問題点,改善すべき点を取りまとめ,対応を図る.さらに,高齢者医療や在宅療養に携わる医師を支援するため,在宅医療支援のための医師研修会(仮称)を定期的に開催していく.
 障害者に対する医療については,障害者自立支援法の適正な運用および積極的な対応を図る.

11.医療関係職種との連携及び資質の向上
 看護職等医療関係職種の養成は,一義的に国の責任であることを基本とし,医師とその他医療関係職種との円滑な連携を図り,医療関係者に係る諸問題の改善に努力する.そうしたなかで,助産師の養成を図るとともに,看護職にあっては,社会の高齢化の進展に伴い,医療福祉分野における需要が増加している状況を重く受け止め,いわゆる「三層構造」の堅持,特に,看護師と准看護師とのさらなる連携が重要であるとの観点から,准看護師養成制度を堅持しつつ,看護職資格取得者の増員,潜在看護職員の再就業支援を図るなど看護職全体の適正な需給バランスの確保ならびに資質の向上に努める.
 また,介護支援専門員を中心に多職種協働を推進し,ケアマネジメントの徹底化を図る.さらに,地域・家族の同意形成を前提として,今後,社会的に重要となる終末期医療における医療関係職種の相互連携の強化を目指す.

12.医業税制と医業経営基盤の確立
 地域医療の確保・再生には,医療機関の経営の安定,財政基盤の充実を図る必要があり,税制面からの支えが重要である.この基本認識のもと,従来からの伝統的な医業税制のほか,新たな分野にも積極的に検討を進める.
 本年度の最重要課題である控除対象外消費税については,広く利害関係者の理解を得ながら,社会保険診療報酬等に対する消費税の非課税制度をゼロ税率ないし軽減税率による課税制度に改めるよう,引き続き要望し,その実現に努める.
 新制度医療法人への円滑な移行については,一定の進歩があったが,残された問題もあり,本年度はその解消に努める.
 産科医療,勤務医師不足問題等地域医療を巡るさまざまな問題については,引き続き税制による誘導方策等を検討し,地域医療の確保に向け積極的に提言する.
 公益法人制度改革に絡み医師会立オープン病院,看護師等養成所および医師会の公益認定に関する税制については,従来と同様の非課税措置の実現をみたが,残された問題もあり引き続き実現に努める.
 なお,本会の要望事項の実現のためには,都道府県医師会,郡市区医師会との協力により,関係各方面に積極的に働き掛けを行っていく.

13.日本医師会医賠責保険事業の安定的運営
 本事業は,医療事故紛争の適正な処理を通じ,医師と患者の信頼関係の構築に資することはもとより,会員相互の連帯のもとに都道府県医師会との緊密な連携により,医療提供基盤の安定化に極めて有用に作用している.また,今日の高額賠償化の現状や管理者責任への備えに対し,「日医医賠責特約保険」の加入者の増加に努め,健全な制度運営の拡充を図る.

14.「産科医療補償制度」(無過失補償制度)の立ち上げ
 一昨年以来,崩壊寸前の周産期医療を救うことと,国の政策課題とは一致するものとして,日本医師会は,現実的な「分娩に関連する脳性麻痺に対する障害補償制度」の制度化を,先行課題として,国に対し要望してきた.
 その結果,日本医療機能評価機構に運営組織を置き,「産科医療補償制度運営組織準備委員会」のもとで検討を重ねてきたが,本年度中の制度実現が決定した.
 医師の無過失による不可避的に生ずる重大な障害については,すべての診療科で発生する可能性があるため,産科領域にとどまらず,すべての診療科で無過失障害補償制度が実現されるよう,国に対し要望していく.

15.診療行為に係る死因究明制度等について
 日常の診療行為のなかで起こりうる予期せぬ診療関連死については,現在,医師法第二十一条のもとで刑事訴追という誤った方向となっている.このような事態を是正するため,日本医師会は,警察ではなく中立的な第三者機関[医療安全調査委員会(仮称)]に届出を行い,そこで死因の究明を行うことが,萎縮医療等からの解放を図る第一歩であるとともに,外科・産科等の医師不足解消に向けた国の施策と一致するものと考える.したがって,新たな「診療行為に係る死因究明制度」の制度化を目指していく.
 また,刑事訴追からの不安を取り除くために,医師法第二十一条の改正を目指して,検討していく.

16.日本医学会とのさらなる連携の強化
 日本医師会と日本医学会は相携え,わが国の医学・医術の発展と安全で質の高い医療の確保と推進を目指す.
 また,医学会を通じ,各学会員に医師会活動の啓発を行うことで,相互連携の強化を図る.

17.日医総研の研究体制の充実強化
 日本医師会総合政策研究機構(日医総研)は,社会保障制度論,国民医療費動向などの中長期的な課題と合わせ,短期的な政策課題に対応するための研究体制を一層充実強化させた運営を行う.
 平成十九年度に公表した『グランドデザイン二〇〇七─国民が安心できる最善の医療を目指して』では,日医総研は事務局と連携して編集作業の取りまとめを担当したが,今年度は統計データの見直しおよび記述の加除修正を行う.
 医療のIT化を日医主導で進めるための「医師会総合情報ネットワーク」の重要なコンテンツであるORCAプロジェクトでは,医療事務,介護,特定健診,電子決済,認証局など医療のIT化に関わるおのおのの分野において,前年度に引き続き開発・普及を行う.特に日医標準レセプトソフトの普及に努め,レセコン市場の一角を占める存在にすべく,平成二十年度は六千ユーザーの達成を目標としている.

18.治験促進センターの着実な運営
 治験促進センターは,医師主導治験を支援し,科学的な証拠に基づく質の高い医療の提供に貢献する.
 また,全国規模の大規模治験ネットワーク登録医療機関のさらなる連携の強化,研修の提供,企業治験の機会の提供,普及啓発等を通じ,わが国の治験実施基盤の整備を行う.
 さらに,医薬品等の臨床研究の普及啓発に努める.

19.医師再就業支援事業(女性医師バンク)の運営
 医師再就業支援事業は,女性医師が医師としてのキャリアを継続可能とするため,そのライフステージに応じた就労を支援し,もって医師確保対策に資することを目的として,平成十八年度より厚生労働省の委託事業として立ち上げられた事業であり,三年目を迎える今年度は,さらなる事業の充実を目指す.
 特に,事業の中核である女性医師バンクにおいては,積極的な広報活動により,求職・求人登録者を増やす一方,その対応を担うコーディネーターを増員し,きめの細かいコーディネート活動を通じて,就業成立件数の増加を図る.また,病院長,病院開設者・管理者に向けた啓発活動として,都道府県医師会と共催で実施している「女性医師の勤務環境の整備に関する講習会」については,その規模及び内容をさらに拡充させる.そして,従来,女子医学生や若い女性医師を対象にその就業意欲の向上及びモチベーションの維持を目的として,男女共同参画委員会で実施していた講習会について,都道府県医師会等との共催により,本事業のなかで展開する.

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