日医ニュース
日医ニュース目次 第1121号(平成20年5月20日)

日医各種委員会答申・報告書(その2)

 前号に引き続き,今号では平成十八・十九年度の会内委員会が取りまとめた答申および報告書の概要を紹介していく.
 (一部を除き,全文は,日医ホームページ・メンバーズルーム参照)

医師会共同利用施設検討委員会答申
地域に貢献する公共性の観点から

日医各種委員会答申・報告書(その2)(写真) 医師会共同利用施設検討委員会(篠原彰委員長)は,会長からの諮問「医療改革に伴う環境変化に対応した医師会共同利用施設のあり方」を受け,答申した.
 答申書は,医師会共同利用施設を会員のためという観点からだけでなく,地域に貢献する公共性という観点から考えていくことが,その存続のためには必要になるとの考えのもと,(一)医師会病院,(二)検査・健診センター,(三)介護保険関連施設の現状と課題についてまとめられている.
 (一)では,地域医療支援病院が抱える課題,公益法人制度改革等に対する医師会病院の取るべき対応,七対一入院基本料の導入に伴う看護師不足や療養病床の削減問題などに触れたうえで,医師会病院の将来のあるべき姿を提言.
 (二)では,平成二十年四月から実施される特定健診・特定保健指導を,医師会臨床検査・健診センターの再構築への好機ととらえ,今後の運営に向けた検討を行う必要があると指摘.医師会臨床検査センターの意義は,地域住民の健康情報バンクとしての場を提供すること,公共性の観点から民間検査センターが行わない検査項目を行っていることにあり,その必要性を会員に広報する活動が重要になるとしている.
 (三)では,医師会共同利用施設における介護関連施設のあり方の一例として,静岡県・焼津市医師会が運営する地域包括支援センターの活動を報告.特定高齢者把握事業の一部である受け持ち地域の高齢者の実態把握を行い,基本健康診査を受診していない閉じこもりがちな高齢者に,基本健康診査の重要性を勧奨していることなどを紹介している.

産業保健委員会答申
地域保健との連携推進を

日医各種委員会答申・報告書(その2)(写真) 産業保健委員会(高田勗委員長)は,会長諮問「産業保健と地域保健の連携の推進─特にメンタルヘルスと健診・保健指導を中心として─」に対する答申を取りまとめた.
 産業保健と地域保健の連携においては,産業医の機能が有効に発揮されるように社会体制が一層整備されること,および産業医の資質が一層向上することによって,地域保健との連携も推進されることが期待されるとしている.そして,産業保健と地域保健の連携にかかわる医師,医師会および保健の体制のあり方について,現状の課題を抽出し,今後のあり方を検討した.
 答申の内容は,(一)地域産業保健センターの活性化,(二)産業保健と地域保健の連携を推進するための教育研修の充実,(三)産業保健と地域保健が連携した認定産業医の活用,(四)産業保健と地域保健が連携する体制の確保,(五)産業保健と地域保健が連携したメンタルヘルス対策,(六)産業保健と地域保健が連携した健康診断や健康診査の有効的な活用,(七)特定健康診査・特定保健指導の推進,(八)地域保健と産業保健の連携による小規模事業場における課題の克服─から構成されている.
 (一)では,平成十九年に地域産業保健センターを対象として実施した,全数(三百四十七カ所)調査の結果について解説し,さらに,同センターの機能強化のための基盤整備の必要性を説いている.また,(二)では,認定産業医が産業保健と地域保健の連携においても十分な能力が発揮できるよう,教育研修カリキュラムを改訂したと述べている.
 巻末には,参考資料として,地域産業保健センターに対するアンケート調査結果や産業医学研修カリキュラム,および就業に関する主治医意見書の参考例を収載した.

広報委員会答申
国民の理解と共感を得るために

日医各種委員会答申・報告書(その2)(写真) 広報委員会(長瀬清委員長)は,会長諮問「日本医師会の組織強化に向けた広報のあり方」を受け,答申した.
 本委員会は,これまで実務委員会として活動していたため,今回が初めての諮問・答申となる.
 答申では,国民に適切な医療を提供し,良い医療環境を整備することは,医師や医師会だけの力では達成できず,医療を行う医師と医療を受ける国民が一体となって行動することが必要との認識から,「国民の理解と共感を得るために」との理念をサブタイトルとして,「対外広報」と「対内広報」に分けて記述されている.
 対外広報については,目的・対象により各種の方法を選択し,より有効な手段を選ぶ必要があるとし,その手段として,十九項目が具体的に提言された.
 また,国民に医師会を強く印象づけるための手段として,現在行われているテレビCMを利用した,「医師会のイメージアップ」作戦を高く評価.今日のように,国民生活において医療問題が大きな課題となるなかで,対外広報は,より一層重視されるべきであるとし,医師会活動を効果的に行うためにも,広報予算の増額が必要であると述べている.
 対内広報では,組織強化の観点から,「勤務医に対する広報」と「女性医師に対する広報」についてまとめられており,その具体的な手段まで,提言がなされている.

医師の臨床研修についての検討委員会(プロジェクト)報告書
新医師臨床研修制度への実務的な課題を提言

日医各種委員会答申・報告書(その2)(写真) 医師の臨床研修についての検討委員会(プロジェクト:北島政樹委員長)は,会長から「新医師臨床研修制度の功罪を俯瞰(ふかん)し,わが国の良き医師養成という観点から,卒後臨床研修の在り方について広く検討するように」との要請を受け,報告書を取りまとめた.
 報告書では,平成十六年四月から必修化された臨床研修制度の導入により,研修医の臨床能力の向上や,処遇が改善された一方,医師不足・偏在の原因と見られる向きもあることを受け,主に「新医師臨床研修制度と社会問題」「新医師臨床研修制度と医学部教育」「卒後研修と研修終了後の教育」について,検討が重ねられた.
 委員会での議論は,「本委員会からの提言」として,(一)医師不足・医師の地域偏在への対応では,マッチング制度の見直しと,大学が果たしてきた医師派遣機能に変わるシステムの構築・推進,総合診療医(仮称)の養成の推進,(二)医学研究者育成では,卒後臨床研修と並行した医学研究の推進や,医学生の多様な進学経路の整備,(三)卒前・卒後教育の一貫性では,卒前診療参加型臨床実習(クリニカル・クラークシップ)の充実,共用試験(CBT,OSCE)の実証,臨床医として不適格な者への進路指導,(四)指導医の負担軽減,(五)国民への周知─について,それぞれ記述されている.
 「おわりに」では,委員会の意見として,(一)卒前教育の診療参加型臨床実習の充実,(二)医学教育への文部科学省・厚生労働省・医療関係者の協力による迅速な対応,特に卒前・卒後の医学教育行政の一貫性─を要望し,「良医を育てるべき指導医が疲弊している医療状況こそ,わが国の医学教育のゆがみを最も象徴している問題と言える.医師のQOLの向上を切に願う」と,締めくくられている.

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