日医ニュース
日医ニュース目次 第1123号(平成20年6月20日)

視点

看護師養成・四年制化反対

 わが国の看護師養成は,ここ数年,大きな変化を起こし,地域医療崩壊の一因となっている.
 国は「看護師養成は国の責任である」と言いながらも,十分な責任を果たさず,看護学校養成所への補助金を削減している.その一方では,看護大学を増加させることにより,看護師になるための門を狭くしている.大学は平成十三年に九十一校であったが,平成十九年には百五十八校まで増え,まだ増加する予定である.その結果として,短大,二年課程看護師養成所は減少,そのうえ准看護師養成所は,廃校を余儀なくされた.
 加えて,少子化の波が押し寄せ,医師会立准看護師養成所は,平成十三年に二百七十校あったものが平成十九年には二百十八校にまで減少した.
 看護師養成がすべて四年制化すれば,地域医療崩壊が加速することは必死である.日本看護協会は,新人看護師の知識・技術の低下が離職につながっていると指摘し,看護基礎教育を四年制にすべきだと主張しているが,離職の真の原因はそのようなことではない.若い人たちのコミュニケーション能力の不足であり,患者とのコミュニケーションだけでなく,医療チームの仲間である先輩や同輩の看護師,あるいは他の医療職員との意思の疎通が出来なくなっていることが主因である.
 看護大学が増えることに反対しているのではない.現在の看護職員不足をさらに悪化させるだけの政策に反対なのである.その観点からすれば,現状ではすべての看護師が学士になる必要はない.
 当然,大学や大学院で専門的な看護技術・知識を勉強,習得した看護師を必要とする医療現場もある.しかし,医療現場では,それぞれの現場で必要とする知識・技術を持った看護師,そして何よりも患者に優しく,患者や家族に安心を与えてくれる看護師が必要なのである.また,非常に多い看護の仕事を十分に支えられる看護師数が必要である.
 看護基礎教育に四年が必要だと主張するのであれば,まずは大学の統合カリキュラム(看護師三年,保健師・助産師一年の合計四年)を廃止し,保健師・助産師教育を分離させ,看護教育四年を実現すべきである.その結果として,看護基礎教育四年が看護技術・知識を向上させ,患者の満足を得,新人看護師の離職を防止出来たという成果を示して欲しい.
 少子高齢化が進むなか,准看護師養成所への社会人入学が増えており,平成十九年には短大・大学卒が入学者の一四・四%を占めるまでになった.今後,准看護師養成カリキュラムの単位制を実現し,社会人入学を促進させ,看護師不足解消の一助にしたい.

(常任理事・羽生田俊)

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