日医ニュース
日医ニュース目次 第1129号(平成20年9月20日)

福島県立大野病院事件
無罪判決を受け加藤医師が日医を表敬訪問

福島県立大野病院事件/無罪判決を受け加藤医師が日医を表敬訪問(写真) 福島県立大野病院事件で,福島地方裁判所から無罪判決を受けた,加藤克彦医師が,九月三日に日医を訪問し,唐澤人会長と面談した.
 加藤医師は,帝王切開手術時の癒着胎盤剥離に伴う産婦の死亡事故をめぐり,業務上過失致死および医師法第二十一条違反の疑いで平成十八年二月に逮捕,三月に起訴され,医療処置の正当性をめぐって裁判で争っていた.その結果,本年八月二十日,福島地方裁判所は無罪判決を言い渡し,同二十九日,福島地方検察庁は控訴断念を発表し,無罪が確実となったことから今回の訪問が実現した.
 日医では,今回の事件に対し,当時,記者会見を行い,今回の医療行為を業務上過失致死罪に問うことへ遺憾の意を示すと共に,医師法第二十一条の是非について考えを示し,平成十八年七月には,「医療事故責任問題検討委員会」を会内に設置.翌年五月に取りまとめた答申「医療事故に対する刑事責任のあり方について」のなかでは,(一)医師法第二十一条の改正,(二)謙抑的な姿勢での刑事訴追,(三)第三者機関の設置─について提言を行った.
 この提言は,厚生労働省の「医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止等の在り方に関する試案」策定への足がかりとなった.
 日医は,この事件の重大性を認識し,澤倫太郎日医総研研究部長を特別弁護人として,また,水谷渉主任研究員を弁護団の一員として,積極的かつ強力に加藤医師の支援を行ってきた.
 面談の冒頭,唐澤会長は,「今回の問題が起きたことで,産科医療の厳しい現状に注目が集まり,法制化への議論が活発化されたことにより,産科の先生方にも,より働きやすい環境が整えられると考えている」と発言.
 また,加藤医師が判決後に,「もう一度,地域医療に戻りたい」と発言したことに触れて,唐澤会長は,「かつて分娩は危険を伴うという社会の認知があり,分娩を取り扱う医療に対して敬意が払われてきた.これからも,産科医療を尊重する社会にしていかなくてはならない」と話した.
 今回の面談には,事件発生当時,福島県医師会副会長を務めていた石井正三常任理事,澤研究部長が同席し,当時の地域医師会での対応や,脳性麻痺児に対する産科医療補償制度などについて意見交換した.

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