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第1134号(平成20年12月5日) |
社会保障国民会議最終報告まとまる
社会保障機能の強化に向けて財源の確保を求める

社会保障国民会議(座長:吉川洋東大大学院教授)は,11月4日,これまでの社会保障費抑制政策の見直しを政府に求める内容の最終報告を取りまとめ,麻生太郎総理大臣に提出した.
社会保障国民会議は,社会保障のあるべき姿と財源問題を含む今後の改革の方向性について議論する場として,本年一月に設置されたものである.
今回の報告書は,同会議の下に設置された三つの分科会〔「所得確保・保障分科会」(座長:清家篤慶大商学部教授),「サービス保障分科会」(座長:大森彌東大名誉教授),「持続可能な社会の構築分科会」(座長:阿藤誠早大人間科学学術院特任教授)〕における議論を含め,合計三十一回にわたって議論した結果,取りまとめられた.
報告書のなかでは,今後の社会保障が進むべき道筋として,「制度の持続可能性」とともに,「社会保障の機能強化」に向けた改革に取り組むべきとし,年金,医療・介護,少子化対策など,それぞれの分野ごとに,改革メニューを提示している.
医療・介護に関しては,(1)医療の機能分化を進めるとともに,急性期医療を中心に人的・物的資源を集中投入し,できるだけ入院期間を短縮する(2)在宅医療・在宅介護を大幅に充実させる─などといった具体策を提案.その実現のためには,制度面を含め,相当大胆な改革が実行されなければならないとしている.
また,今回,「医療・介護サービスのあるべき姿」を実現するという観点から,サービス提供体制について一定の改革を行うことを前提として,医療・介護費用の推計(シミュレーション)を初めて実施.その結果を,四つのパターン(現状投影および改革B1〜B3)に分けて示している.
一方,その財源については,「必要な財源を安定的に確保していくための改革に,真剣に取り組むべき時期が到来している」との記述はあるものの,その財源を確保するための具体策については,触れられなかった.
日医からは,唐澤 人会長が委員として出席,これまで,(一)社会保障費の機械的抑制の撤回,(二)医療費全体の水準の引き上げ,(三)患者が必要な医療を受けられる体制の維持─などについて,要望してきた.
また,社会保障国民会議の中間報告や,医療・介護費用のシミュレーションが示された際には,中川俊男常任理事が,随時記者会見を行い,その問題点を指摘し,改善を求めてきた.
十一月四日に開かれた会議では,まず,三つの分科会の座長が,中間報告を取りまとめた六月以降の取り組みをそれぞれ報告.引き続き,吉川座長が最終報告(案)を説明した後,議論が行われ,最終報告案が了承されることとなった.
報告書を受け取った麻生総理は,各委員のこれまでの労をねぎらったうえで,「今回は,重要な議論の土台を示してもらった.これからは,改革の道筋を工程表にして示し,国民に分かりやすい形で議論を進めていくことが大事になる」とし,吉川座長らに対して,工程表策定に向け,協力を求めた.
今後は,吉川座長,三つの分科会の座長らをメンバーとした懇談会を設置し,そのなかで,報告書に示された具体的な改革案を実行に移すための工程表を作成していくことになる.
社会保障費抑制からの転換に一定の評価
最終報告が取りまとめられたことを受けて,十一月五日に記者会見した中川常任理事は,まず,社会保障国民会議が,これまでの社会保障費抑制から『社会保障の機能強化』に転換したことを,率直に評価したいと述べた.
「医療・介護サービスのあるべき姿」については,極めて短期間で中身の濃い議論が展開され,国民的議論の喚起に向けて,一つの形を示したという点では一定の意義があるとの見解を示した.その一方で,十分な議論が尽くせたわけではないとし,最終報告のなかで,「現在の医療・介護とは格段に異なる質の高いサービスが効率的に提供できる」としていることについては,そのなかの「医療・介護費用のシミュレーション」が,すでに限界にある「平均在院日数」の大幅な短縮,医療の集約化と機能分化,在宅医療の拡大を前提としていることから,地域や家族の事情によっては,「医療難民」や「介護難民」を生じさせる恐れがあると危惧を表明した.
加えて,国民の理解と合意を得ながら,「あるべき姿」を練り直す必要性を指摘し,日医としても『グランドデザイン二〇〇八』のなかで,改めて提示していく考えを示した.
また,今後,策定される工程表に関しては,国,特に財政当局にとって都合の良い項目が優先されないよう,厳しく監視したいと述べた.
報告書のなかで触れられている社会保障番号制については,住民基本台帳とネットワーク化され,国家が個人情報を管理する“国民総背番号制”の実施につながり,医療分野では,財政的な目的で医療の内容に制限を加える“管理医療”を導入しやすくなるなどの理由から,日医としてはこれまでもその導入に反対してきたことを説明.
そのうえで,セキュリティおよび個人情報の保護などの課題もあり,当会議として十分に議論されたわけではないことから,最終報告に示すような「導入検討を積極的に進めていく」段階にはないとし,拙速な議論は避けるべきであるとした. |