日医ニュース
日医ニュース目次 第1138号(平成21年2月5日)

平成20年度第2回都道府県医師会長協議会
医療を取り巻く昨今の課題について協議

 平成20年度第2回都道府県医師会長協議会が,1月20日,日医会館大講堂で開催された.
 各都道府県医師会からは,「特定健診・特定保健指導」「医療計画に基づく医療提供体制の確保」「救急医療体制」など,多岐にわたる質問が出され,それぞれの担当役員が回答した.

平成20年度第2回都道府県医師会長協議会/医療を取り巻く昨今の課題について協議(写真) 羽生田俊常任理事の司会で開会.冒頭,唐澤人会長は,「昨今は,先行き不透明な状況が続いているが,国民医療を守っていくためにも,軸足をぶらさず,国民の視点に立った医療政策を立案し,提言していきたいと考えているので,ご支援・ご協力をお願いしたい」と述べた.

協 議

 (一)石川県医師会からの決算審査システムの構築を求める質問には,今村聡常任理事が回答を行った.
 同常任理事は,決算審議の現状を説明したうえで,現行システムのなかでも,(1)事前にブロックから質問を受け,決算委員会で回答する(2)内部資料としている決算委員会速記録を公開する─といった見直しは可能であると説明.
 また,今後の課題としては,決算承認後に,執行部が選任する委員,あるいは代議員会議長が指名した決算委員会の委員によって決算分析を行う場を設け,その審議内容を公表するシステムの構築が考えられると述べた.
 さらに,公益法人改革との関連については,「会計監査人を設置し,決算については,代議員会への報告事項とする方向で定款変更するよう検討が進められている.現状とはかなり異なってくることから,公益法人改革への対応を検討していくなかで,決算審査のあり方についても検討していきたい」とした.
 (二)滋賀県医師会から,全国健康保険協会の「保険者機能強化アクションプラン」への対応についての質問があり,藤原淳常任理事が,日医としては是々非々で対応したいと回答した.
 地域の医療費分析の推進については,「都道府県別の保険料率を設定するうえで分析は必要だが,それにより都道府県別の診療報酬点数ということになれば,日医は中医協で猛反対しなければならない」とした.
 後発医薬品の使用促進については,医療費の削減額が予算に計上されていることから,保険者としては削減するというイメージを示す必要があるのではないかと述べた.
 また,インターネットを通じた医療費通知の実施については,従前の紙の通知の内容で,希望者に実施するのであれば問題ないとの考えを示した.
 保健指導の効果的な推進については,保健指導は一〇〇%を目指すべきであり,そのためには医師会および医療機関が積極的にかかわるべきであるとして,日医では,受診率向上のための「事前申告による受診券発行の廃止」や「特定保健指導の医師会への業務委託」を申し入れていることなどを説明した.
 (三)鳥取県医師会からの特定健診と高齢者に対する健診についての質問に対して,内田健夫常任理事は,平成二十年十一月に,厚生労働省において,「決済及びデータ送受信に関するワーキンググループ」が再開され,各関係者の取り組み状況を確認のうえ課題等を整理し,解決策を討議したことに触れ,その内容については,すでに公表しているが,調整出来なかった課題等については,厚労省に検討会を設置し,引き続き協議していくことを要望していると説明した.そのうえで,「日医としては,問題解決に全力を尽くしたいと考えているので,都道府県医師会においても,特定健診・特定保健指導に積極的に関与し,課題や意見の提供をお願いしたい.また,高齢者に対する健診のあり方については,現在,会内の公衆衛生委員会において,諮問『疾病予防対策の将来展望について』の検討を行っているので,指摘された点を踏まえ,協議したい」と述べた.
 (四)特定健診・特定保健指導について,埼玉県医師会から質問があった.これに対して,内田常任理事は,日医では,詳細健診の項目を基本健診項目に含めることや,血糖検査は「空腹時血糖」と「HbA1c」を基本健診項目として全員に実施することを,厚労省のワーキンググループにおいても主張したことを報告した.
 上乗せ項目を一般衛生部門で行うべきとの指摘については,「加入している医療保険によって健診項目が異なり,同じ地域の住民の間で格差が生じるようなことがあってはならない.国保加入者を含む全地域住民に対して,市町村の一般衛生部門が実施すべきことは,すでに『日医ニュース』を始めいろいろな場面で説明している」と述べた.
 また,がん検診については,前述の会内委員会で検討中であると説明した.
 最後に,特定健診・特定保健指導が目指す予防重視の方向性は,間違ってはいないとの考えを示し,理解を求めた.
 (五)山口県医師会からの医療・介護の充実による景気浮揚対策についての要望には,中川俊男常任理事が回答した.
 同常任理事は,従来から日医が主張しているとおり,産業としての医療・介護分野に公共事業を大きく上回る雇用誘発効果があることについて,経済財政諮問会議や政府が言及するようになったことは評価すべきであるが,その効果を発揮するためには,大胆な投資が不可欠であると指摘した.経済危機の状況だからこそ,次期改定では大幅に診療報酬を引き上げ,医療・介護が国を支える好循環体質の根幹となることを目指すべきであるとして,地域医療再生のための財政措置を改めて主張し,確保することが執行部の責務であるとの認識を示した.
 そのうえで,「基本方針二〇〇九」における社会保障費年二千二百億円の機械的抑制の撤回,健全な医療提供体制を支えるための医療費財源の確保を目指し,全力を傾注していくとして,都道府県医師会の支援,協力を要請した.
 (六)医業類似行為の療養費に関して,(1)柔道整復師の施術療養費の透明性確保(2)「受領委任払い制度」の中止─を求める愛媛県医師会からの要望には,藤原常任理事が回答した.
 同常任理事は(1)について,行政は柔道整復師の施術療養費の額を積極的に公表してはいないが,問い合わせがあれば推計値を公開しているとして,平成十八年度の額は三千二百十二億円(対前年度伸び率三・七%増)であり,同年度の診療科別の診療所の医療費と比較すると,産婦人科,皮膚科よりも高く,小児科,耳鼻科に迫る勢いであるとし,透明性確保のため,医業類似行為にかかる療養費に対する社会医療診療行為別調査の実施について,積極的に検討していきたいと述べた.
 また,(2)に関しては,昭和十一年から続いている同制度を中止させることは困難であるとの見解を示しながらも,非常に大きな問題であると認識しており,日医としては,施術療養費の不正請求が起こらないような方策を厚労省に要求すべきと考えているとした.
 (七)北海道医師会から示された,良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部改正,施行に伴う疑義については,三上裕司常任理事が回答した.
 同常任理事は,特例により届出で設置された有床診療所の一般病床については,要件と異なる病床への転用は認められておらず,要件に合致しなくなった場合には都道府県が行政指導を行うことになると説明.しかし,医療法関係法令や厚労省通知では取り扱いが規定されていないため,厚労省に対して,各都道府県における行政指導をさらに徹底するよう要求していくと述べた.
 また,同一の開設者が有する複数の医療機関間での病床移動については,設置している病床数の合計が同じであれば,医療法上は病院の新規開設や増床であっても,勧告対象となるか否かは都道府県の医療審議会の判断に委ねられるため,都道府県で違った判断が出る可能性があるとの指摘に対しては,地域の混乱を招かないよう国として配慮することを,厚労省に求めていく考えを示した.
 (八)新潟県医師会からは,妊産婦の費用負担について質問が出された.
 これに対して,今村定臣常任理事は,妊婦健診の市町村負担分について,国が事業内容を地方行政に指示することは出来ないため,妊婦健診に対する補助金の形態として使用目的を明確化することはないとした.本制度の円滑な実施には,国庫負担分の交付と合わせて地方財政措置される市町村負担分の支出が非常に重要であるとし,都道府県医師会からも行政等に対して積極的に働き掛けて欲しいと述べた.
 出産育児一時金については,「今回の引き上げに伴う国庫補助の支給対象を医療機関に直接支払う保険者に限ることにより,直接支払いを推進する方向であり,出産そのものを保険給付(保険診療)とするかどうかについては,出産費用は現金給付であるべきで,保険診療にはなじまないことからも,現物給付化(保険診療)には反対していく」との考えを示した.
 (九)三重県医師会からの「日医は救急医療体制へのビジョンを国民に示すべきではないか」との提案には,石井正三常任理事が回答.
 救急医療体制へのビジョンは,平成二十年十二月一日付で送付した「周産期医療,救急医療体制の構築と連携について」としてまとめており,日本型ERシステムの試行やコーディネーター機能の推進を掲げ,さらに,(1)地域の実情に応じた救急医療体制の構築(2)一般と専門領域の救急医療の連携構築(3)妊娠期の疾患の特殊性に着目した連携構築(4)総合周産期母子医療センターの機能強化,本来の役割への機能集中,空床確保策(5)急性期医療後の患者を受け入れる後方病床・後方施設の確保(6)周産期医療および救急医療情報システムの充実(7)都道府県単位の救急搬送体制の確立と行政区を越えた地域間連携の構築(8)女性医師の離職防止策(9)地域の開業医による初期救急医療の充実(10)分娩取り扱い診療所の堅持─の十項目を主張していると説明した.
 また,地域における医療連携体制や救急医療情報システムの整備を進めると同時に,地域住民に救急医療の適正利用など,啓発活動を今後も行っていきたいと述べた.
 (十)岡山県医師会は,先発医薬品と後発医薬品で承認されている効能効果が異なる医薬品の使用問題について,日医の見解を求めた.
 これに対して,藤原常任理事は,医師の裁量権の下,医学的な判断に基づき患者に必要な薬剤を処方すべきとの基本スタンスを改めて説明したうえで,平成二十年十月一日付で送付した「効能効果,用法用量等に違いのある後発医薬品リスト」を医療機関も薬局も知っておく必要があると述べた.
 また,日本薬剤師会でも,この「後発医薬品リスト」について周知を図っているほか,処方せんに「変更不可」の指示がなくても,調剤に当たり疑義が生じた場合には,処方医に対して照会するよう指導していることにも触れ,「不合理な減点を未然に防ぐためにも,都道府県・郡市区医師会においても,薬剤師会と連携して対応して欲しい」と協力を求めた.
 (十一)日本医師会表彰規程の改正に関し,羽生田常任理事が次のように説明した.
 本改正は,平成十八,十九年度の定款・諸規程検討委員会の答申を基に作成されたものである.
 最高優功賞については,本会役員,代議員会の議長・副議長,都道府県医師会長の在任期間を十年から六年に短縮する.また,「本会会長を退任したもの」という項目を加える一方,在任十五年に達した本会代議員,委嘱十五年に達した本会委員会委員の項目を削除する.
 優功賞には,「都道府県医師会長を退任したもの」を加える.
 医学賞については,対象者の推薦を「日本医学会分科会長,大学院医学系研究科長又は大学医学部長・医科大学長,大学附属病院長(本院),関係機関長及び都道府県医師会長」から受けるとした.
 (十二)産業医研修に係る指定法人制度の見直しに関して,今村(聡)常任理事が説明.
 産業医研修については,平成二十年三月の行革事務局決定で,(1)事務・事業及び指定基準の基本的な事項を法令で定めるとともに,当該基準に係る詳細な事項を法令又は告示で定める(2)主務大臣に対する報告に係る規定等を法令で定め,指導監督を厳格に実施する─との二点が平成二十年度中の措置とされたことから,労働安全衛生法令の見直しを行い,省令に「指定の基準」「業務の委託」「業務規定」等の規定を設けることとされたことを紹介.
 見直しに伴う研修実施者の指定について検討した結果,「日医が指定を受けて,必要な手続きを行い,都道府県医師会に業務委託する形で進めることになった」と述べ,日医と都道府県医師会との間で,「実施要領に基づく研修実施の業務委託契約」の締結が必要になるとした.
 なお,産業医研修会の計画,申請,実施については,従来どおりである.
 (十三)厚生労働省予算案における各種補助金について,内田常任理事は,「救急医療を担う医師の支援や,産科医・産科医療機関確保のための総合対策といった補助事業が予定されているが,補助率は十分の十から二分の一,三分の一とさまざまである.十分の十以外は都道府県,市町村,事業主にも予算をつけていただかないと実施できない」と述べ,円滑な補助事業の運用に向け,都道府県や市町村への働き掛けを求めた.
 なお,平成二十一年度予算案では,(1)救急医療を担う医師の支援:二十億円(2)産科医・産科医療機関確保のための総合対策:四十五億円(3)へき地医療を担う医師等の支援:四十三億円─などとなっていることからも,都道府県医師会のさらなる理解と協力を求めた.

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.