日医ニュース
日医ニュース目次 第1140号(平成21年3月5日)

平成20年度日医医療情報システム協議会
「患者さんに優しい,より質の高い医療を〜より良い医療をめざしてコンピューターを上手に使おう〜」をメインテーマに

平成20年度日医医療情報システム協議会/「患者さんに優しい,より質の高い医療を〜より良い医療をめざしてコンピューターを上手に使おう〜」をメインテーマに(写真) 平成二十年度日本医師会医療情報システム協議会が,メインテーマ「患者さんに優しい,より質の高い医療を〜より良い医療をめざしてコンピューターを上手に使おう〜」のもとに,二月十四,十五の両日,日医会館大講堂で開催された.
 一日目は,中川俊男常任理事の総合司会で開会.
 冒頭,唐澤人会長はあいさつで,「国が進める医療分野におけるIT化は,医療費抑制,管理医療の手段として位置付けられ,レセプトオンライン請求義務化や,いわゆる社会保障カード構想などが,強引に推進されようとしている.日医のレセプトオンライン請求義務化のアンケート調査で,廃院を考えている医療機関が八・六%あったことなどからも,このまま本格稼働すれば,医療現場は混乱に陥る」と述べ,さらに,今年度の協議会は,診療支援と医療に関する政策情報の収集に役立つ「診察室のIT化」に焦点を絞ったとした.
 つづいてあいさつした運営委員会委員長の小林博岐阜県医師会長は,「外来診療や医療現場におけるIT活用の原点に返って協議したい」と述べた.
 シンポジウムIは,「医師会事務局のIT化の実情─会員等への情報伝達の現状とこれからの方向性」をテーマとして開かれ,「兵庫県医師会におけるIT化の実情と今後の方向性」では,理事会の電子会議,郡市医師会宛の文書管理ウェブサイト等を紹介.電子文書で対応可能な郡市医師会は六〇%であったことが報告された.
 「宮城県医師会IT化現状報告と事務局の課題」では,会員情報システムの整備状況,会費等引き去り,文書管理,メーリングリスト等の活用状況が報告された.
 運営委員の西本洋二兵庫県西宮市医師会理事からは,「西宮市医師会のメーリングリスト」について,現在,会員六百九十六人中百七十人が参加し,事務局から,「週刊医師会ニュース」,学級閉鎖状況,新入会員の案内等を通信していると報告があった.
 横山淳一名古屋工業大学大学院准教授は,「郡市区医師会事務局から会員への情報発信状況〜中間報告〜」を行い,郡市区医師会は,全会員に必要な情報を漏れなく伝達しなければならず,情報伝達のスピードアップと効率化が求められるとした.そして,日医のメール配信に登録している八百五十五郡市区医師会を対象に情報化推進状況をアンケート調査したところ,回答は六十七件(約八%)で,会員対象のメールマガジンやメーリングリスト開設が三九%,ホームページ開設九一%,会員専用サイト開設五一%であったと報告した.
 パネルディスカッションでは,運営委員の川出靖彦岐阜県医師会副会長が,日医や都道府県医師会などが,大量の情報をいかに取捨選択し,簡略化して伝達するかが重要であると指摘した.
 つづいて,特別企画「インターネット活用による最新医学情報等の収集と活用」が開催された.
 高野明彦国立情報学研究所連想情報学研究開発センター長・教授は,「情報収集の落とし穴 情報の信頼性と情報への適切な視野の確保」で,情報の類似性に基づく「連想検索」について,Webcat Plus等のデータベースを組み合わせた「想IMAGINE」を使った文書検索で説明した.
 尾崎眞東京女子医科大学麻酔科主任教授は,「インターネット活用による最新医学情報等の収集と活用」で,集めた情報を活用する手段として,自分のポータルサイトを作ることの有用性を「iGoogle」等を例に紹介した.
 久保慎二武田薬品工業(株)医薬学術部学術支援グループマネージャーは,「インターネットでの薬剤関連情報の入手」で,製薬企業の医療関係者向けホームページには,薬剤情報のほかに,日常診療に役立つ情報も掲載されていると述べた.
 矢野一博日医総研主任研究員は,「日本医師会ホームページと厚生労働省ホームページ等からの情報収集」で,日医のホームページでは,理事会速報や日医の発信文書等が検索でき,厚労省のホームページでは,審議会や研究会の議事録等を閲覧出来ると解説した.
 二日目は,まずシンポジウムII「日レセ(ORCA)を100倍使おう」が行われた.
 西川好信日医総研主任研究員の「ORCAを100倍使おう,意外と知らない!?ちょっと便利な使い方」では,ORCAでの患者検索・診療行為検索などの紹介があった.また,「全国のORCA導入件数は一月十五日現在六千件を超えた.目標を四カ月前倒しで達成しており,日レセはレセコンとして十分に認識されたと言える」との報告があった.
 永島道夫ORCAサポートセンター長は,「ORCAを使い込んで情報の共有と連携で効率の良い医療と医業の実現」として,ORCAデータの拡大利用用途を紹介した.
 八幡勝也産業医科大学准教授は,「RFIDカードへの実施入力とORCA会計への自動連携システム」と題して講演を行った.
 小竹原良雄島根県医師会情報委員からは,「レセプトを作るだけではもったいない」と題する講演が行われた.
 つづいて,特別講演「外来診療の臨床判断に求められるもの」と題して,伴信太郎名古屋大学医学部附属病院総合診療部教授が講演を行った.
 同教授は,外来診療は入院診療に比べ医療問題が不明確で領域限定性がなく,患者の自立性・主導性が強く,一回の診療時間が短いなどのため,種々の臨床能力が求められると説明.外来診療に求められる能力を,「知識」「情報収集能力」「総合的判断力」「技能」「態度」に分け,詳細に解説した.
 その後,「日医総研からの報告」として三題の講演があった.吉田澄人主任研究員から「特定健診・特定保健指導における代行入力業務の現状」,上野智明主任研究員から「レセプトオンライン請求の現状と問題点」,矢野主任研究員から「認証局の本格的稼動について」として,電子証明書の発行機関としての日医認証局の準備が整い,保健医療福祉分野において本格的な認証基盤の稼動が始まることについて報告があった.
 つづいて,シンポジウムIII「外来診療のIT化─IT化で何がよくなるのか,必要不可欠か」が行われた.
 永田啓滋賀医科大学附属病院医療情報部教授は,「診断から治療のためのデータベース」で,外来の電子カルテは自分にあったシステムを作ることが大切であると述べた.
 吉村学揖斐郡北西部地域医療センター長から「外来診療での利用:へき地での診療の場合」,また,鳥越恵治郎井原医師会広報・情報担当理事から「内科的な日常診療にITを活かす」として「問診表自動解析ツール」「病名思い出しツール」という自身考案のソフトウエアが紹介され,それにより疾患の早期診断が目指せるとした.
 吉山泉富山市医師会理事の「診療支援ソフト“診療工房”の新たな展開」では,富山市医師会の開発した診療支援ソフト「診療工房」が県内百三十医療機関で利用され,診療情報を共有しているとの報告があった.
 さらに,天野一夫下都賀郡市医師会情報・広報委員会担当理事から「手作り電子システム」として,紙カルテと電子カルテの併用について,足立光平兵庫県医師会常任理事からは,「ORCAモデル診療所展示をめぐって」として,IT化されたモデル診療所の展示のポイント等の紹介がそれぞれあった.
 最後に運営委員会副委員長の小森貴石川県医師会長が,「患者に優しい質の高い医療にするためにITができることを考えたい」とあいさつし,閉会した.参加者は四百九十二名(講師等関係者含む)であった.

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