日医ニュース
日医ニュース目次 第1140号(平成21年3月5日)

日本医師会市民公開フォーラム
知って防ごう「CKD(慢性腎臓病)」

日本医師会市民公開フォーラム/知って防ごう「CKD(慢性腎臓病)」(写真) 日本医師会市民公開フォーラムが,二月八日,「知って防ごう『CKD(慢性腎臓病)』」をテーマに,日医会館大講堂で開催された.
 今村聡常任理事の総合司会で開会.冒頭のあいさつで唐澤人会長は,「CKDは,高血圧症,糖尿病,肥満など,さまざまな要因が発症の危険因子として指摘されており,進行によっては透析療法も必要とされ,心筋梗塞,心不全,脳卒中の発症率・死亡率が高くなる重大な疾患である.ぜひ理解を深め,健康な生活を維持して欲しい」と述べた.
 つづいて,三人のパネリストが解説を行った.
 菱田明 浜松医科大学第一内科教授は,まず,CKDの定義を,腎臓に障害がある,または腎臓の機能の低下が三カ月以上続いている状態と示した.そして,CKD患者数は成人で約千三百万人と多く,糖尿病や高血圧などのCKD予備群を含めると,さらに多くなることを指摘した.
 次に,なぜ今CKDが問題となっているかとの質問には,CKDは自覚症状がほとんどないままにゆっくりと進行し,透析にいたる病気であることを述べ,透析患者数は約二十八万人で,国民五百人に一人が透析患者であることや,医療費の面からも透析患者を減らすことが求められていると述べた.
 さらに,CKDの進行を抑制する治療として,生活習慣の是正,食事療法,薬物治療を示し,効果的な治療の結果,腎機能低下の進行を遅らせることにより,透析期間の短縮や,透析患者数の減少につながるなどの効果を指摘した.
 つづいて,槇野博史 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 腎・免疫・内分泌代謝内科学教授/日本腎臓学会理事長は,透析導入患者の主要原疾患として,糖尿病性腎症,慢性糸球体腎炎,高血圧からくる腎硬化症を説明.なかでも糖尿病性腎症は,二〇〇七年には透析導入患者の四三・四%にもなるなど,糖尿病に注目しての対策が求められていることを指摘した.
 また,糖尿病性腎症の増加の問題は,2型糖尿病患者数の増加や,自覚症状がないために,医療機関にかからなかったり,治療を中断する人がいること,医療機関にかかっていても血糖,血圧の目標に達していない患者が多いことを挙げ,早期発見のためにも,必ず健康診断を受けてチェックすることが必要であると述べた.また,糖尿病性腎症の前兆を示すアルブミン尿の検査について紹介した.
 内田健夫常任理事は,CKDとの上手な付き合い方,かかりつけの医師の役割について解説をした.そこでは,CKDは早期発見と積極的な治療が病気の進行を抑え,心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の予防につながるということも分かってきた.軽い腎障害から透析や腎移植を必要とする進行した段階まで,どの段階からでも有効で持続的な対策が必要とされると述べた.
 さらに,同常任理事は,日医では,厚生労働省が全国十五の幹事施設と五十六郡市区医師会の参加により実施している腎疾患重症化予防のための戦略研究に協力,また,各関係機関・学会とも連携を図り,CKD対策に取り組んでいることを紹介.かかりつけの医師の役割と,腎臓専門医や栄養士・薬剤師などとの連携の必要性についても言及した.
 参加者は,五百三十七名.なお,当日の模様は,三月一日に,NHK教育テレビ「日曜フォーラム」で放映された.

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.