日医ニュース
日医ニュース目次 第1143号(平成21年4月20日)

第120回日本医師会定例代議員会
会長所信表明
日本医師会会長 唐澤

第120回日本医師会定例代議員会/会長所信表明/日本医師会会長 唐澤祥人(写真) 本日は,第百二十回日本医師会定例代議員会を開催いたしましたところ,代議員の先生方には早朝よりご出席をいただき,ありがとうございます.また,日本医師会の事業運営につきまして,平素からご理解とご支援をいただきまして,誠にありがとうございます.ここに厚く御礼を申し上げます.
 さて,広く,最近の経済,産業などはグローバル化の流れによって大きく変容し,ご存じの米国発,金融危機に始まる深刻な経済不況は全世界に波及しております.このような状況でも,わが国はバブル崩壊後の不況から立ち直り,影響は少なしと言われていましたが,残念ながら実体経済も深刻な打撃を受けています.
 さらに,わが国の医療体制は,すでに長年の医療費抑制政策の影響下にあって,地域医療はまさに崩壊同然の状況にあります.このような今日,国民のくらしの不安は増大し,その危機感は一段と高まっております.
 一方,諸外国の現況に鑑みれば,いまや人類にとってのみでなく,全世界規模の環境の悪化が報告されています.これら遙か将来の世界にまで及ぶ不安要因と相まって,健康確保と医療提供の課題に着目しても生命の安全が一層危惧される状況が現出しております.
 また,この自然環境問題については,たとえばCO2濃度の上昇による地球温暖化や化学物質汚染などは,災害や食の安全と同様に現世代を超えた将来への重大な脅威になりつつあります.
 日本は,世界中どの国も経験したことのない超高齢社会に急速に突入しつつあります.そして,食料や資源が少ない国状のうえ,エネルギー資源にも恵まれていないわが国は,世界の期待に応えるためにも,諸外国の模範となる社会保障制度を再構築しなければなりません.
 すなわち,わが国は世界に先駆けて金融・経済,産業分野のみならず,これからのすべての課題解決に向けて人類始まって以来の岐路に立たされていることを,最大の基軸に据えておかなければならないと考えます.
 わが国の医療システムにおいては,医療の歴史・地域的文化に根ざした健康長寿国を目指す方向付けが重要であり,いつ如何なる時にも,この視点を見失ってはなりません.
 私は,科学が凝縮している医学と,それを人間の健康・生命を守るという人間の安全保障に役立てる医療という役割の中で,社会的連帯感や協調的行動が希薄化してしまった今こそ,高齢まで生き長らえることが何より喜ばれる,尊厳ある福祉に貢献することに注力する重大な責務を感じているところであります.
 ご高齢の方々の生き甲斐を支え,増大した疎外感を払拭し,若い方も含めて格差に苦しむことのないよう,すべての国民に受け入れられる真の福祉国家を実現する姿勢こそ,少子化を克服する第一歩であると考えています.
 そうして,私たちは,日本がこのようなさまざまな平時の安全保障を完備した高福祉の社会システムづくりによって,世界平和にも貢献できることを証明すべきであり,折しも本年二月に策定いたしました『グランドデザイン二〇〇九』は,幅広い現況分析に基づいて,今後の全国における個別的,具体的な医療政策立案にも資するものと自負するものであります.この点につきましてよろしく各位のご理解を賜りたいと存じます.
 日本医師会は,これからも国民の求める医療体制と国民皆保険制度を堅持し,長く国を支えてこられた国の宝たる高齢者の方々を感謝の気持ちとともに,国民の総力をもって支える理念を具現化し,礼節をもって支える福祉国家への道を選択していくこと,そして暖かいまなざしで子どもたちの成長を支えていくことが肝要であると思量いたします.

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