日医ニュース
日医ニュース目次 第1147号(平成21年6月20日)

日本医師会 女性医師支援センター・シンポジウム
女性医師の更なる活躍のために

 日本医師会女性医師支援センター・シンポジウムが,「女性医師の更なる活躍のために」をテーマに,五月三十日,日医会館大講堂で開催された.
 冒頭あいさつした唐澤人会長は,「平成十八年度より,厚生労働省の委託事業として,『日本医師会医師再就業支援事業』を実施し,一定の成果をあげてきたが,本事業が,平成二十一年度から,『日本医師会女性医師支援センター事業』と名称が変わり,新たな出発を迎えることとなった.そこで,今後の女性医師の支援の方向性や具体策を考えるべく本シンポジウムを開催した」と,その目的を説明し,「女性医師への就労支援は,医師全体の就業環境の改善につながる重要な問題として,一層真摯(しんし)に取り組みを進めていきたい」と述べた.
 つづいて,外口崇厚生労働省医政局長による基調講演が行われた.外口医政局長は,まず,「女性医師のさらなる活躍のためには,男女を問わず,すべての医師が,自分の理想の医療を実行することが可能となるような余裕のある職場環境を整えることが大切である」と述べ,最も大事なことは,「女性であれ,男性であれ,短時間勤務の正職員が気兼ねなしに入って来られるシステムを構築することである」と主張した.そして,国が現在取り組んでいる,「短時間正規雇用支援事業」「医師交代勤務等導入促進事業」「病院内保育所事業」などを積極的に推し進めたいとの考えを示した.
 また,今後の方向性として,「女性医師対策は,医師不足対策において最重要課題である.女性医師の就業率を高め,医療分野が男女共同参画のモデルとなるよう早急に対策を進める」とした.
 次に,日医が今後の女性医師支援をより実効あるものとするため,昨年十二月〜本年一月に全国の女性勤務医を対象に,わが国で初めて実施した,「女性医師の勤務環境の現況に関する調査」の結果を,保坂シゲリ女性医師支援センターマネジャーが報告.多くの女性医師が厳しい勤務環境に置かれているなか,女性医師の就業環境改善のためには,男性医師も含めた医師全体の勤務環境の改善が必要とし,一人でも多くの医師が勤務を継続できる環境整備が強く求められるとした.
 シンポジウムでは,(一)「医師再就業支援事業の経過」(家守千鶴子女性医師バンクコーディネーター),(二)「女性医師バンクを通じて仕事に就いて」(出澤美央子都立豊島病院産婦人科),(三)「女性医師バンクの紹介で再研修を始めて」(岸由香時計台記念病院女性総合診療センター),(四)「コーディネートをしてみえてきたこと」(秋葉則子女性医師バンクコーディネーター),(五)「今後の女性医師支援」(後藤隆久横浜市立大学大学院医学研究科教授),(六)「今後の女性医師支援」(桃井真里子自治医科大学小児科学主任教授)─のそれぞれの講演が行われ,各講師から,支援のあり方や自身の体験についての話があった.
 そのなかで,後藤教授は,当直や時間外労働に対する報酬を,まともに支払うことで勤務医の不公平感を無くすことが,結果的に女性医師支援につながるとの考えを示した.また,病児保育や二十四時間保育など,社会基盤を充実させることも必要と述べた.
 桃井教授は,女性医師支援は,勤務医の労働条件の問題であることを認識すべきと主張.そのうえで,多様な勤務形態の創設や保育所整備,復職支援研修などは,あくまでも緊急対策であり,(1)育児と医師業務が並行出来る(2)医療安全が保証される(3)労働条件が保証される─医療構造の改善が必要と述べた.その後,フロアを交えた総合討論のなかで,臨床研修中の妊娠,出産,育児等への配慮に関して要望があり,外口医政局長がルール化の検討を約束した.
 最後に,横倉義武女性医師バンク西日本センター長(福岡県医師会長)のあいさつで閉会した.当日の出席者は,二百四十八名であった.

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