 |
第1148号(平成21年7月5日) |
平成21年度 第1回都道府県医師会長協議会
「国民医療を守り,医療崩壊を防ぐため」さまざまな問題を協議

平成21年度第1回都道府県医師会長協議会が6月16日,日医会館小講堂で開催された.
各医師会からは,「介護報酬改定の問題点」「新型インフルエンザ対策」「勤務医入会問題」など,多岐にわたる質問が出され,担当役員がそれぞれ回答を行った.
羽生田俊常任理事の司会で開会.冒頭,唐澤 人会長は,「本日,政府の経済財政諮問会議において,『経済財政改革の基本方針(骨太方針)二〇〇九』の原案が示される予定であるが,われわれとしては,自らの務めをきちんと果たすことで,国民医療を守り,医療崩壊を防ぐために全力を尽くしたいと考えているので,ご支援・ご協力をお願いしたい」とあいさつした.
協 議
(一)国の医師確保・救急医療対策のあり方について
佐賀県医師会からの,国の医師確保・救急医療対策のあり方についての質問には,内田健夫常任理事が回答を行った.
同常任理事は,医師の偏在・不足問題の根本的な解決策は,診療報酬の引き上げにより医療全体の底上げを図り,医業経営の改善,安定を担保することにあると強調し,国の「救急勤務医支援事業」や「産科医等確保支援事業」は,あくまでも臨時的な措置と捉えているとの認識を示した.
そのうえで,これらの補助制度の実効性を上げるために,日医としては,平成二十二年度予算概算要求に対する要望書で,国庫補助率の引き上げと補助額の増額を要求する方針であると述べた.
また,救急医療は,採算性にかかわらず提供されることが最も求められる医療分野であることから,公的財政支援が必要であり,日医としては,医療費の引き上げによる恒久的な財源確保とともに,平成二十一年度補正予算によって創設される「地域医療再生基金」や各種補助事業によって,医師の確保,救急医療対策を実現していくと主張した.
(二)有床診療所の活用について
山口県医師会から,有床診療所の活用についての質問があり,今村定臣常任理事は,地域医療の重要な担い手として,質の高い医療・介護の提供体制を支えている有床診療所が,今後もその機能を継続して発揮出来るような,制度づくり,診療報酬体系の確立が急務であると述べた.
第五次医療法改正により,新規開設が容易でなくなった感があるとの指摘については,特例が設けられていることを説明したうえで,「事前協議と県医師会の推薦」により極めて容易に新規開設が可能となった山口県医師会に倣って,他の都道府県医師会でも同様な働き掛けをして欲しいと要請した.
また,厚生労働省の担当者とともに視察を行い,有床診療所の重要な役割について理解を得られたことや,厚労省の舛添要一大臣や外口崇医政局長からも,「支援していきたい」との国会答弁を得ていることを明らかにした.
さらに,「八月十九日に都道府県医師会有床診療所担当理事連絡協議会を開催するので,先生方の意見,要望を踏まえ,適切に対応したい」と述べた.
(三)開放型病床の運用について
石川県医師会からの,開放型病床の運用についての質問に対して,藤原淳常任理事は,開放型病床は,開業医と勤務医との連携,あるいはかかりつけの医師と専門医との連携にとって有効な手段であり,また,医師の偏在・不足問題にとっても病院勤務医の負担軽減策となるとの考えを示した.
そのうえで,推進策としては,(1)開放型病院であることを,登録医や地域の医療機関に間断なく周知徹底する(2)開業医が開放型病院で診療等を行い,診療報酬を請求するシステムを,開放型病院の勤務医が住民・患者に説明し,理解を得る(3)開業医と病院勤務医とのディスカッションの機会を得る(4)開業医がIT化の進んだ開放型病院の中で,オーダリングシステムや電子カルテなどに対応出来るよう,医療クラークの設置の推進を図る─などを挙げ,地域医師会を中心とした,開業医と開放型病院との連携体制づくりが重要とした.
さらに,開放型病院共同指導料の届出病院が増加傾向にあることを鑑みつつ,開放型病院共同指導料の弾力的な運用について検討していくと述べた.
(四)新卒看護師の免許登録までの身分等について
秋田県医師会からの新卒看護師の免許登録までの身分等に関する質問には,羽生田常任理事が回答.
医師・看護師を始めとした他の国家資格も,国家試験合格時ではなく,登録して初めて免許が与えられるもので,四月一日から働ける状況ではない.看護師の免許登録の最大のネックは,学校の卒業認定が三月末であることで,その後,免許登録の申請書が,保健所,都道府県を経由して厚労省に提出されるため,時間がかかるとした.
さらに,今後については,本人が早く登録出来るよう,学校で卒業証書を出来る限り早く出すなどの対応をしてもらえるように,協力を求め,日医としても,改善出来る点は,厚労省と協議していきたいとした.
(五)日本医師会館敷地内禁煙について
愛媛県医師会は,日医会館敷地内禁煙について,日医の見解を質した.
内田常任理事は,初めに,六月十三日開催の「二〇〇九年世界禁煙デー記念講演会」で,受動喫煙防止の視点から,敷地内禁煙を前向きに検討していく旨を説明したことを報告(別記事参照)したうえで,次のように回答し,理解を求めた.
平成十五年三月の代議員会決議『禁煙推進に関する日本医師会宣言』に伴い,館内全面禁煙を実施し,屋外に喫煙所を設置して「分煙」を徹底した.その後,屋外の喫煙場所を開閉扉から離し,さらなる受動喫煙の防止を図っている.一方,会議等で来館した方の中には喫煙者も少なからずおり,敷地内禁煙を実施した場合,喫煙者が戸外の別の場所で喫煙するということになれば,『受動喫煙防止』の視点からは必ずしも好ましくない状況になることも考えられるため,敷地内禁煙には至っていないのが現状である.しかしながら,敷地内禁煙の意義は十分認識しており,改めて会内で検討し,結論を出したい.
(六)要介護認定方法の見直しの問題点について
要介護認定方法の見直しの問題点に関する京都府医師会の質問には,三上裕司常任理事が,仮に,要介護認定で軽度に判定される操作が行われているならば,事業所は減収となり,今回の改定の目的である介護従事者の処遇改善にまで影響する問題だと指摘.この問題については,四月に厚労省に設置された「要介護認定の見直しに係る検証・検討会」で,現場での混乱がこれ以上起きないよう意見を述べていく意向を示した.
また,申請により元の要介護度に戻してもよいとの経過措置については,利用者側だけでなく,施設側からの観点も考慮するよう強く申し入れ,施設が不利益を被らないようQ&Aで示すことを要望していくとした.
さらに,今回の見直しは,一次判定のバラツキを減らし,介護認定審査会による二次判定で特記事項等を勘案して適切に判定を行う方法へと変更したもので,主治医意見書と介護認定審査会の役割は一層重要になったとの認識を示し,利用者への不安解消という趣旨への理解と,円滑な要介護認定実施への協力を要請した.
(七)介護報酬改定の問題点
京都府医師会からの,(1)基本報酬は上げず,加算中心(2)利用者への配慮に欠ける(3)保険料のアップにつながる─といった介護報酬改定の問題点を指摘したことに対しては,三上常任理事が回答した.
(1)については,「サービス提供体制評価加算」の指標に疑問を呈し,地域区分も,サービスや人材の偏在に通じ地域間格差の拡大が懸念されると述べ,社会保障審議会介護給付費分科会の下部組織である調査実施委員会の動向を注視するとともに,日医としても現場から出された問題点について厚労省と協議していくとした.
(2),(3)では,介護サービス費の単位数が上がることによる利用者の負担増と支給限度額の上限に関しては,介護保険法の見直しを含めた,制度全体の議論の中で検討する必要があるとの考えを示した.
さらに利用者の自己負担には一定の軽減措置もあり,また,今回の改定による,介護給付費の増加に伴い保険料の上昇が生じるが,被保険者の負担にも,第二次補正予算で改定に伴う保険料上昇への抑制措置が講じられていると説明した.
(八)新型インフルエンザ(H1N1)対策について
埼玉県医師会から,日医の新型インフルエンザ(H1N1)対策について,三つの質問((1)行動計画ガイドライン見直しに向けた対応(2)災害救助法の適用の可否(3)WHOのフェーズ分類と国の行動計画における段階分類の整合性の調整をする意向)が出された.
飯沼雅朗常任理事は,冒頭,日頃の都道府県医師会の協力に対して感謝の意を表明.その後,舛添厚労大臣に要望書を提出したことなど,これまでの日医の対応を報告したうえで,質問に答えた.
(1)については,日々感染者が増加している状況が落ち着いた段階で,厚労省と対応を協議するとの意向を示した.
(2)に関しては,現時点での同法の適用は困難とし,今後,法整備を含め,引き続き検討していくとした.
また,(3)については,毒性の強弱に応じた弾力的な運用を,より早く決断,実施出来るよう,国に働き掛けていくとした.
(九)日医の「総合医認定制度」創設について
「総合医認定制度」創設に対する日医の考えを問う岡山県医師会の質問には,飯沼常任理事が回答した.
同常任理事は,いわゆる総合医の認定制度に関する議論は,進んでいないとし,会内の委員会では,現在,生涯教育制度認定証の価値を上げて活用するための検討を行っているほか,制度全般について,学術推進会議で引き続き協議していると説明した.
また,生涯教育推進委員会では,単位取得・換算方法や認定証発行基準を,さらに学術企画委員会では,カリキュラム改訂を踏まえて,アセスメントも含めた日医雑誌の活用を検討しているとした.
そのうえで,この問題については,これらの関連三委員会で早急に検討してもらい,執行部でも検討したうえで,都道府県医師会に日医の考えを明らかとする意向を示した.
(十)受診時の保険証確認について
保険証資格喪失後の受診による過誤調整を防ぐための方策として,受診時に必ず保険証の確認を行う運動を日医が指導して欲しいとの徳島県医師会の要望には,藤原常任理事が回答した.
同常任理事は,日医は以前に,(1)被保険者証の一人一枚のカード化(2)保険証記載内容の自動転記化(3)オンラインによる資格確認システムの構築─をするよう,厚労省に要望していたが,「社会保障カード」導入の検討を行うことが閣議決定されてからは頓挫していると,これまでの経緯を説明.今回の提案については,「この問題は究極的には療養担当規則の問題であり,他への波及を考慮すれば各医療機関で最初に注意してもらうのが良い」との考えを示した.
また,今後も引き続き保険者側の問題や共済組合等の一人一枚のカード化について,厚労省を通じて保険者を指導するよう要請していくとした.
(十一)勤務医の入会しやすい日本医師会にするために
三重県医師会から,勤務医が入会しやすい日医にするための方策について,日医の見解を問う質問が出された.
三上常任理事は,勤務医問題は,すでに会内の「勤務医委員会」「勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会」「医師の団結を目指す委員会」等で検討を進めているが,日医は開業医の利益擁護集団という批判も依然としてあり,われわれ執行部も一層の努力をしていかなければならないと考えていると述べた.
そのうえで,国民に安全で安心な医療を提供していくという共通の使命のもとに,開業医と勤務医が,大同団結していくことが重要だとし,今後も,勤務医に対して,さまざまな機会を捉えて,医政,医学,医療に対する考えを理解してもらえるように努めていくとした.
加えて,各医師会に対しては,それぞれの実情に合わせた取り組みを推進して欲しいと要請した.
(十二)後発医薬品使用促進事業について
後発医薬品使用促進事業についての福岡県医師会の質問に対しては,藤原常任理事が,次のように回答した.
後発医薬品の使用促進は,社会保障費の国庫負担分二千二百億円の手当てを捻出するための対応策の一環として国が打ち出したものである.
厚労省は,後発医薬品について,先発医薬品と品質,有効性,安全性は同等であるとの見解を示しているが,医師の処方権は確保されているのであるから,患者が後発医薬品を希望した場合でも,医師として使用に不安があれば,患者にしっかり説明したうえで,判断すべきであり,そのような対応をすることが,患者との信頼関係の構築につながると考えている.
療養担当規則で「投薬等を行うに当たって後発医薬品の使用を考慮する努力義務」が規定されているが,後発医薬品の使用に消極的な医療機関に対して,指導でプレッシャーを与えるべきではないと考えており,そのような趣旨の通知が出されるよう,現在,厚労省と折衝中である.
報 告
各医師会からの質問の後,日医からの報告として,以下の三題が行われた.
(十三)レセプトオンライン請求については,竹嶋康弘副会長が,レセプトオンライン「対応指針」の内容と周知について説明.(十四)“「医療安全調査委員会設置法案(仮称)」に関するアンケート調査”結果報告については,木下勝之常任理事が,調査結果の概要を解説.また,(十五)地域医療再生基金については,内田常任理事より,都道府県医師会においても,提出した資料を参考として,「地域医療再生計画」の策定に積極的に関与して欲しいと依頼し,今年度第一回目の都道府県医師会長協議会は終了となった.
|