日医ニュース
日医ニュース目次 第1148号(平成21年7月5日)

日医定例記者会見

6月17日
一般紙の誤認記事に対して厳しく抗議

 中川常任理事は,六月十四日付産経新聞「開業医と勤務医の診療報酬配分─納税者の視点で見直せ」の記事を取り上げ,事実誤認も甚だしいと厳しく抗議した.
 同常任理事は,記事の内容に対して,以下の反論を展開した.
 (一)「医師の人件費に当たる診療報酬」「医師などの人件費,つまり診療報酬」について,診療報酬イコール医師の人件費ではなく,医療機関の主たる経営原資である.診療報酬が多少引き上げられても,経営状況が厳しい現状では,内部コストを削るしかなく,その結果,地域医療を最低限維持することも困難になり,医療提供体制にほころびが生じることになると危惧の念を示した.
 (二)「同じように税金を財源とする公務員給与と比べるとどうか.(以下略)」について,公務員給与の財源はすべて税金であるのに対して,国民医療費の公費負担割合は三六・六%であり,「同じように」というのはミスリーディングであるとし,診療報酬イコール人件費ではないので,比較すること自体間違っていると切り捨てた.
 (三)「医師会調査でも勤務医が開業医になりたい主な理由は『激務が給与に反映されない』だった」について,これは医師会調査ではなく,中医協の調査であり,「最低限のマナーとして確認はすべきである」.開業したい理由に「理想の医療を追求したい」といった前向きな選択肢がなく,これだけで開業理由を判断出来ないと述べた.
 (四)医師会が税金や借入金返済を差し引いた手取り年収で示すことを問題視していることについては,給与所得者の年収と事業所得者の収支差額は比較出来ない.財政審があまりに単純に比較し,ミスリーディングするため,日医はあえて「手取り年収」に補正したのである.「一般の会計手法とは違っている」という批判は当たらないと述べた.
 (五)「開業医は週休二・五日,時間外診療も往診もほとんどせずに」について,多くの医療機関が土曜日や夜間も診療しているデータを示し,「産経の記事はエビデンスを示すべきであるし,仮に記事が独断によるものであるとすれば,言語道断である」とした.
 (六)「優遇されすぎた開業医の診療報酬を大胆に削り,その分を不足する勤務医や診療科に配分すれば,診療報酬全体を上げなくても医師不足はかなり是正される」については,これは財政審建議の受け売りであり,開業医と勤務医の対立構造に持ち込んでいるが,それは本質的な問題のすり替えであると批判した.日本の医師不足は明らかで,診療報酬総額を引き上げない限り,解消にはつながらない.また,診療所の収入のほとんどは基本診療料であるのに対し,病院には多くの入院診療報酬の項目が設定されてる.このような診療所と病院の診療報酬の違いを理解せず,開業医が優遇されていると指摘するのは間違いであるとした.
 (七)「中医協はかつて改革が行われ,公益委員や健保団体の代表もいるにはいる.だが,開業医を中心とする医師会の影響力が依然として圧倒的だ」について,第一に,会議,議事録がすべて公表されるなど,中医協ほど透明な会議はない.第二に,診療側,支払側,公益側の各委員が,真正面から議論を展開している.いかにも公益委員や支払側委員の発言力が弱いかのような表現は大変失礼である.第三に,診療側にしても,全日病,公私病連,日医,日歯,日薬の委員が参画し,医療のあるべき姿を考え議論している─と反論し,どのような理由でこのような記事を書いたのかを中医協委員に説明すべきであると非難した.
 (八)「米国は専門医制度での資格取得で診療科間の調整を行うし,ドイツでは保険医(開業医)開業に対し地域や診療科ごとに定員規制を設けている.日本ほど自由な国はないのだ」について,これも財政審建議の受け売りとし,日本では医師不足の解消が最優先課題であるとした.
 最後に同常任理事は,「記事の内容は看過することが出来ない」とし,「財政審のヒアリングでも同様の意見が出されたこともあり,この機会に明確に反論しなければならないと判断した」と述べ,会見を結んだ.

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