日医ニュース
日医ニュース目次 第1149号(平成21年7月20日)

参議院厚生労働委員会(7月2日)
臓器移植法改正案で意見陳述
「脳死した者の身体」の定義の踏襲を要望

参議院厚生労働委員会(7月2日)/臓器移植法改正案で意見陳述/「脳死した者の身体」の定義の踏襲を要望(写真) 臓器移植法改正案に関し,日医常任役員の間で慎重に議論を行い,意見整理をしたうえで,木下勝之常任理事は七月二日,臓器移植法改正案を審議している参議院厚生労働委員会に参考人として出席し,衆議院を通過した臓器移植法改正案(A案)のさらなる改正を求めた.
 同常任理事は,はじめに,臓器移植法に対するこれまでの日医の見解を紹介し,平成十九年五月二十四日に,唐澤人会長名で,都道府県医師会長宛に送付した「本人が臓器提供について意思表示をしていない場合は,年齢にかかわらず遺族の書面による承諾で,死体(脳死体を含む)からの臓器提供が可能となるような法の改正を要望する」との考え方は,今でも変わっていないと説明.
 今回の改正案については,臓器摘出・脳死判定に関して,年齢に関係なく,現行法の本人の意思に加えて,遺族が当該臓器の摘出を書面により承諾しているときとしたことは,小児の臓器を含め,臓器移植の機会を増やす方向性を示すものであり,これを評価する意向を示した.
 その一方で,第六条二項の「脳死した者の身体」の規定から,「その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって」との文言が削除されたことを問題視.六月五日開催の厚生労働委員会において,衆議院法制局は,「その文言が削除されたとしても,第六条二項が適用される範囲は,臓器移植の場合に限られる」との見解を示しているが,国民の視点からすると,今回の改正案では,「脳死が人の死である」と受け取られており,臓器移植法の改正案は,本来,国民に誤解されない法文であるべきで,法制局の専門家の解釈を必要とするようなものは避けるべきであるとした.
 そのうえで,現実的な解決策として,「臓器移植を前提としたときに限って,脳死した者の身体を死体と定義する」としている現行法の「脳死した者の身体」に関する定義を今回の改正案でも踏襲することを提案.現行法の「脳死した者の身体」の定義のもとでも,臓器提供,臓器移植が粛々と行われていることを考えれば,これが,わが国における,最も現実的な臓器移植法改正案であると強調した.
 さらに,同常任理事は,法の運用の場面において,虐待を受けた児童が死亡した場合,どのように除外するか,その方策についてさらに検討し,必要な措置を講ずるべきと主張.また,小児の脳死判定に関する診断基準についての検討も早急に具体化すべきとした.

参議院厚生労働委員会(7月2日)/臓器移植法改正案で意見陳述/「脳死した者の身体」の定義の踏襲を要望(表)

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