日医ニュース
日医ニュース目次 第1151号(平成21年8月20日)

視点

「保健師助産師看護師法の改正」にともなう誤情報について

 このたび,「保健師助産師看護師法」(保助看法)および「看護師等の人材確保の促進に関する法律」の一部改正が行われ,平成二十二年四月一日から施行されることになった.この改正を受けて一部団体から,看護教育が「四年制大学卒業を基本とすることが明確に打ち出された」との作為的表現があり,多くの方々に看護師養成のすべてが四年制の大学教育になるかのような誤解を与えることになってしまったことは誠に遺憾である.ここに改めて正しく解説したい.
 この法律の主な改正点は,(一)保健師,助産師,看護師の国家試験の受験資格の改正,(二)保健師,助産師,看護師および准看護師の研修─等である.
 (一)は,保健師ならびに助産師の国家試験受験資格について,文部科学大臣の指定する学校において,従来六カ月の修業年限で国家試験を受験することが出来たものを,それぞれの修業年限を一年に延長するというものである.これは,現在の保健師養成,助産師養成がともに六カ月で行っているところはなく,専門職としての資質向上を目的として一年に延長したものであり,実際の養成体制には影響しないものである.
 もう一つが,誤解を招いた点であるが,看護師国家試験の受験資格に「文部科学大臣の指定する大学(短大を除く)を卒業した者」と追記されたことである.従来の受験資格は,文科大臣の指定した学校において,三年以上必要な学科を修めた者となっており,大学も含まれていた.
 今回の改正は,文科大臣の指定した大学を卒業した者を別立にし,現状を追認しただけのものである.当然,看護師国家試験の受験資格にはまったく変更はないし,看護師免許にも従来どおり区別はない.
 (二)は看護師等の資格習得後の研修等についての新たな記載であるが,医師の臨床研修制度とは異なり,あくまでも努力義務である.なお,新人看護師等の研修ガイドラインについては,現在,厚生労働省の検討会において検討作業中である.
 今回の保助看法の改正は,保健師・助産師の教育年限の延長など,画期的と言えないこともない.しかし,あたかも看護師養成のすべてが四年制の大学になるかのような誤った情報を流すことは容認出来ない.民主主義の日本において,法律の改正などについての情報は正確に伝える必要と義務がある.

(常任理事・羽生田俊)

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