日医ニュース
日医ニュース目次 第1155号(平成21年10月20日)

女性医師等相談事業連絡協議会
「保育システム相談員」の普及と「女性医師等相談事業」の推進を目指して

 女性医師等相談事業連絡協議会が9月30日,日医会館小講堂で開催された.
 本協議会は,保育システム相談員を含めた女性医師等相談事業の推進を目的として行われたもので,取り組みが進んでいる7県医師会が事例発表を行った.

女性医師等相談事業連絡協議会/「保育システム相談員」の普及と「女性医師等相談事業」の推進を目指して(写真) 冒頭,あいさつに立った唐澤人会長は,「女性医師が就業を継続するために,出産,子育ての時期における幅広い支援が求められており,保育支援は欠かすことが出来ない.日医では,地域の保育サービスを把握して医師の保育に関する相談に応じられる人材を各都道府県医師会に置くことについて協力要請をし,また,国に予算化の要望も行って来た」と述べ,女性医師等相談事業の取り組みが進んでいる県医師会の事例を参考に,行政機関への働きかけなどをさらに進めるよう要請した.
 続いて,事務局が,「育児・介護休業法の改正」について説明した.
 同法改正(平成二十一年七月一日公布)においては,(一)短時間勤務制度の義務化,(二)所定外労働の免除の義務化,(三)子の看護休暇の拡充,(四)出産後八週間以内の父親の育児休業取得促進,(五)育児休業の専業主婦(夫)除外規定の廃止─などの項目が取り扱われている.
 その後,事例発表が行われ,青森,岩手,秋田,茨城,徳島,山口,宮崎の七県医師会が,女性医師支援のための取り組みを報告した.

青森県医師会女性医師活躍推進事業

 村岡真理青森県医常任理事は,(1)女性医師へのアンケート調査(2)女子医学生と女性医師との交流会(3)女性医師専用のメーリングリスト(4)講演会・研修会における託児室設置の補助(5)女性医師相談窓口─などを実施したことを紹介.
 (5)の相談窓口は,七月に開設し,保育相談に県医師会事務局二名,保育以外の相談に常任理事と女性医師活躍推進委員の各一名が当たっており,三件の保育相談があったことを報告した.
 今後の課題としては,広報や相談員の資質向上,評価・検証を挙げた.

岩手県および岩手県医師会女性医師支援事業

 増田友之岩手県医常任理事は,平成十九年一月から県の費用負担によって実施している「岩手県女性医師就業支援事業」を取り上げ,保育事業者の紹介などの「育児支援」は県医師会に委託され,復帰のための研修先の紹介などの「職場復帰支援」は岩手医科大学医師会が行っていることを報告した.育児支援は八名の利用があり,復帰研修では利用した八名中五名が,一年の研修を終え,すでに復帰したという.
 本事業の問題点としては,支援を必要とする女性医師が休職中のため医師会会員ではなく,情報が届かないことであるとし,現在,同門会等を通じた広報活動を展開しているとした.

秋田県における女性医師支援相談窓口事業

 小笠原真澄秋田県医理事は,「女性医師等復職研修・相談事業」の概要について説明.八月に相談窓口を設置し,医師会会員・非会員を問わず,女性医師と女子医学生から,メールや電話で,(1)地域の保育システム・サービス(2)勤務環境(3)再就業・再教育システム─など,多岐にわたる相談を受け付けている.相談員は,県医師会事務局一名,女性医師委員会委員五名.
 相談窓口の開設から二カ月経ったが,まだ相談は寄せられておらず,ホームページ「あきた女医ネット」(通称)を作成したり,チラシを配布するなど周知に努めているとした.

茨城県医師会医師就業サポート事業

 諸岡信裕茨城県医副会長は,県から県医師会への委託事業として実施している「保育等支援」について,事務局は専門嘱託の事務職員一名とアドバイザー(医師)三名の構成で,働きやすい病院や保育所・保育サポート,再就業講習会などの情報を紹介していく方向で準備していることを説明した.
 また,連携を密にしている筑波大学附属病院における「女性医師看護師キャリアアップ支援システム」の取り組みを紹介し,「キャリアカウンセリング」「環境整備」「診療・研修コーディネート」の観点から,さまざまな支援を行っているとした.

徳島県医師会保育支援事業と若い医師への広報の課題

 松永慶子徳島県医常任理事は,女性医師の保育支援の取り組みを紹介.昨年行ったニーズ調査の結果を踏まえ,(1)二十一時までの延長保育が可能(2)延長保育時には夕飯の注文が可能(3)十六時頃,他保育所に保母同乗で迎えに行き,保護者の立会いなしで二重保育をしてくれる(4)送迎サービスがある─などの託児所への要望仕様を作成し,コンペを開催後,契約託児所を決定した一連の経過を説明した.
 周知のために,ホームページアドレスやメールアドレスが明記されたポケットティッシュの配布,アンケート協力病院の医局でのポスター掲示,医師会報,研修医の会などでの広報を行っているとした.
 また,相談窓口については,十月に設置を予定している.

山口県医師会女性医師保育等支援事業

 小田悦郎山口県医常任理事は,県から県医師会への委託事業として「山口県女性医師保育等支援事業」について,育児と仕事の両立経験を条件に七月に採用した一名の女性医師保育相談員が,育児と勤務の両立支援の相談応対などを行っていることを説明.
 同事業の一環として,育児をサポートしてくれる人の情報を集めた「山口県医師会保育サポーターバンク」を運営し,保育サポーターの登録・養成・紹介をしていることを報告した.女性医師は継続的かつ長期的な支援を必要とするため,可能な限り同一の保育サポーターが支援をする方針で,支援内容は両者の合意に基づき,子どもの預かり保育,保育施設の送迎のほか,女性医師が仕事と家庭の両立に必要なものであるとした.

宮崎県における女性医師支援

 荒木早苗宮崎県医常任理事は,まず,平成十八年に行った実態把握のためのアンケート結果を報告.
 復職支援に関しては,女性医師と復職支援協力医療機関(四十二医療機関が手上げ)との話し合いに県医師会のコーディネーターが同席し,具体的な再教育・ブラッシュアッププログラムを決めていることを紹介した.
 女性医師相談窓口は十月から開始予定であり,県医会館内に設けられた相談ルームや,メール,FAXで,県医師会事務局が幅広い内容の相談を受け付け,相談員である女性医師担当常任理事が面談などで対応すると説明.
 このほか,研修・講習会時託児サービスなどを行っているとした.


 引き続き,保坂シゲリ女性医師支援センターマネジャーが,「来年度の事業の見込み」について報告した.
 保坂氏は,「八月二十九日に出された厚生労働省の来年度予算概算要求が,現在白紙に戻ってしまったので,見込みを話すことが出来ない,つらい状況にある」と前置きしたうえで,相談事業について,継続して都道府県の行政との話し合いを進めていくことを要請した.
 質疑応答では,会場から託児所の充足状況や費用,保険のあり方など具体的な質問が寄せられ,保坂氏の司会のもと,事例発表をした七氏が丁寧に回答した.
 最後に,今村定臣常任理事が総括し,「先進的な取り組みをしている七県医師会を参考に,すべての都道府県医師会において,女性医師等相談事業が,今後,活発に展開されることを期待している」と結んだ.

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.