日医ニュース
日医ニュース目次 第1156号(平成21年11月5日)

第121回日本医師会臨時代議員会
会長所信表明
日本医師会会長 唐澤

第121回日本医師会臨時代議員会/会長所信表明/日本医師会会長 唐澤祥人(写真) 本日は,第百二十一回日本医師会臨時代議員会を開催いたしましたところ,代議員の先生方には早朝よりご出席をいただき,ありがとうございます.また,日本医師会の事業運営につきまして,平素からご理解とご支援をいただきまして,誠にありがとうございます.ここに厚く御礼を申し上げます.
 本代議員会の開催に当たり,ごあいさつと若干の所感を申し上げたいと存じます.
 本年九月,国民の意思による政権交代が実現し,新政権が発足いたしました.そして,鳩山首相は,「これからは,経済に加えて,環境,平和,文化などによって国際社会に貢献し,国際社会から信頼される国を作っていかなければならない.日本が果たせる役割は小さくない」とし,「日本に暮らすすべての人々が,誇りをもって生活を送れる,新しい国家の形を提言していきたい」と強い意欲を示されています.
 また,九月二十四日の国連演説では,五つの挑戦として,「世界的な経済危機への対処」「気候変動問題への取組」「核軍縮・不拡散」「平和構築・開発・貧困」「東アジア共同体の構築」を掲げられました.
 日本では,行き過ぎた市場原理主義によって格差が拡大し,医療崩壊ともあいまって,国民は大きな不安に怯えています.しかし,新政権は,この苦難を乗り越えて,「友愛の社会」を実現しようとしています.そして,さらに,国際平和,低炭素社会に向けた貢献も果たそうとしています.

「国民の生命と健康を守る」活動の一層の強化

 ひるがえって,日本医師会はどうでしょうか.私は本日,まず,これまでの反省からはじめなければなりません.
 日本医師会は,自主独立の専門職種からなる学術団体です.医道の高揚に努め,国民にとって最善の医療を目指して,政策提言を行ってきました.そして,政府与党である自民党の厚生労働関係議員に働きかけ,国民が安心出来る医療,国民の幸せを支える医療の実現を目指してきました.さらに,過去の絆から,先の総選挙においても,政策実現のためのアプローチを変更するにはいたりませんでした.
 しかし,現実には,総選挙で政権が交代しました.新内閣は,総選挙での勝利の要因のひとつとして,「政治へのやりきれない不信感,従来型の政治・行政の機能不全への失望とそれに対する強い怒り」を挙げております.私は,この言葉をそのまま,重大に受け止めております.
 日本医師会は,これまで,政権与党としての自民党を支持し,提言をしてまいりました.しかし,二大政党を中心に,しのぎを削るなかで,医療の現場を預かる医療提供者として,国民が安心出来る医療を目指しているからには,自民党だけではなく,他の政党の多様な価値観を認める包容力が欠けていたことは否めません.
 改めて,今こそ,国民の思いをより強く受け止め,国民の側に立って,「国民の生命と健康を守る」という原点に立ち返り,活動していく所存でおります.

患者負担の見直しと 診療報酬の大幅な引き上げを

 十月二十日,厚生労働省から,全国民の中での低所得者の割合を示す「相対的貧困率」が公表されました.資料によりますと,二〇〇七年の調査で一五・七%という高い数値が示されています.
 また,日本の完全失業率は五%を超えて推移し,深刻化しています.その結果,経済的困窮や窓口負担の重さのため,受診を控えるケースが増えているのではないかと推察されます.
 日本医師会は,国民が経済的負担を心配することなく,いつでも医療機関にかかれる社会を取り戻さなければなりません.そのために新政権に訴えたいことは次の二点です.
 第一に,外来患者一部負担割合を引き下げることです.特に,子育ての心配をなくし,少子化対策を支援するため,0歳から義務教育就学期間中の子どもの外来医療費は無料化することです.そして,義務教育修了後の現役世代については,現在の三割負担を二割負担に引き下げ,七十歳以上は一律一割負担にすることです.
 第二に,診療報酬の大幅かつ全体的な引き上げです.産科・小児科・救急医療の充実,病院勤務医の先生方の過重労働緩和を最優先課題としたいと思います.

「医の本道」に立ち,あるべき医療を提言

 国民にとって,切れ目のない医療を受けられることこそが安心につながります.そのためにも,退院後の受け皿,在宅医療,診療所への通院など,身近な医療機関が健全に存続していかなければなりません.
 社会の状況に目を転じますと,総務省から六十五歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合を示す高齢化率が公表されました.資料によりますと,本年十月一日現在で,高齢化率は二二・七%と,過去最高となったことが明らかとなりました.また,男女別に見ますと,男性は二〇・〇%と約五人に一人,女性は二五・四%と約四人に一人が高齢者ということになります.
 一方で,二〇〇八年度の自殺者は,三万二千人を超え,高い水準にあります.原因・動機別で見ますと健康問題が四八%と一番多く,経済・生活問題二三%,家庭問題,勤務問題等と続きます.
 さらに,独居老人の孤独死や,介護にまつわる悲惨な事件等,医療・介護の現場における,さまざまな社会のひずみは,見過ごすことはできません.
 また,本年三月,新型インフルエンザが北米において確認され,瞬く間に世界的な感染の拡大を見ました.本会では「新型インフルエンザ対策本部」の設置と非常体制の発令を行い,対策を講じました.現場で診療に当たられる先生方をはじめ,医療関係者の皆様方のご苦労は計り知れないものです.そのご活動に敬意を表し,感謝申し上げます.
 また,本年四月には,地球温暖化対策として,「環境に関する日本医師会宣言」を発しました.宣言には,これまでの取り組みの総括と,今後,取り組んでいくべき項目を改めて盛り込んでおります.
 民主党がマニフェストにかかげ,鳩山首相が国連で表明した二〇二〇年までに,一九九〇年比で二五%,二酸化炭素の排出を削減するという公約に,医療界として貢献出来るものと思われます.
 また,九月,フィリピンの東海上で発生した台風十六号,インドネシアのスマトラ島沖地震,南太平洋のサモア諸島で発生した地震と津波,インド南部における洪水等の被害に対しましては,災害発生時に医療・保健分野を中心に緊急人道支援活動を行っている特定非営利活動法人のAMDAを通じて支援を行いました.
 最後になりますが,新政権は,社会保障費削減の撤回,医療費の増加を掲げており,日本の医療,特に地域医療にとって一筋の光が差し込むという期待が感じられます.
 われわれ日本医師会としても,国民の思いに寄り添い,国民の生命と健康を守る責任をまっとうする決意をいっそう強くいたしました.
 そして,「医の本道」に立ち,正しい方向性を持って,改めて医療現場の問題を整理し,国民生活を支えるためのあるべき医療について,現場の担当者として提言していきたいと考えます.
 本日は,各代議員からわれわれ執行部に大変有意義なご質問をいただいております.議長先生の議事進行に従い,縷々ご説明させていただきたいと存じます.本日上程しております六項目の議案につきまして,何卒,慎重なご審議のうえ,ご承認賜りますようお願い申し上げまして,ごあいさつといたします.

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