日医ニュース
日医ニュース目次 第1163号(平成22年2月20日)

日本医師会市民公開フォーラム
ご存知ですか?「肺年齢」〜肺の生活習慣病COPD〜

日本医師会市民公開フォーラム/ご存知ですか?「肺年齢」〜肺の生活習慣病COPD〜(写真) 日本医師会市民公開フォーラムが一月三十日,「ご存知ですか?『肺年齢』〜肺の生活習慣病COPD(慢性閉塞性肺疾患)〜」をテーマに,日医会館大講堂で開催された.
 内田健夫常任理事の総合司会で開会.冒頭のあいさつで唐澤人会長は,「わが国におけるCOPDの大きな影響因子はたばこであり,長い期間喫煙を続けることによりリスクが高まるが,生活習慣を改善することによって,予防可能な病気である.本フォーラムが病気の理解や予防対策に役立つことを期待する」と述べた.
 つづいて,三人のパネリストが,VTRやスライドを示しながら解説を行った.
 久道茂宮城県対がん協会会長/東北大学名誉教授は,COPDの日本での患者数が,二〇〇五年の厚生労働省の調査によると約五百三十万人,治療者数はわずかで,約二十二万人にすぎないことや,年間の死亡者数は一万五千人弱であるが,今後増えることが予想される現状を報告し,早急な対応が求められるとした.
 また,COPDの九〇%以上は喫煙が原因であることを説明.受動喫煙の副流煙に含まれる有害物質が,主流煙よりはるかに毒性が高いことにも触れ,たばこの有害性を強く訴えた.
 さらに,禁煙後は,肺機能の低下がゆるやかになることをグラフで示し,「喫煙は薬物依存症」と考え,ニコチン依存症から離脱するためには,たばこは一気に断つよう勧め,禁煙補助薬についても紹介した.
 相澤久道日本呼吸器学会常務理事/久留米大学医学部呼吸器・神経・膠原病内科教授は,COPDの専門医の立場から解説した.まず,一般にCOPDの認知率が非常に低く,医療者側もCOPDについての認識が不足していると指摘した.そして,階段を上るなど,動いた時の息切れがCOPDの特徴的な症状であることや,COPDは,他の病気も合併,並存しやすいことを説明し,息切れや咳痰があれば早めに検査をし,適切な治療を受けることが望ましいとした.
 また,スパイロメーターによる「肺年齢」の検査を紹介し,「検査結果から禁煙や詳しい検査を受けるきっかけにして欲しい」と述べた.
 さらに,治療により生活の質も改善し,進行も予防出来るとして,決して,悲観する必要はないことを強調.治療については,禁煙,インフルエンザなどのワクチン接種,薬物療法,呼吸リハビリテーション,在宅酸素療法等を組み合わせて行うことが大事だと説明.特に,肺機能が低下した場合の在宅酸素療法は寿命に大きく影響するとしてその重要性を指摘し,そのためには,チーム医療,医療連携が欠かせないとした.
 今村聡常任理事は,かかりつけの医師の立場から,「日々の診療のなかで早期発見・早期治療に努めているが,重症化を防ぐためにもCOPDのことを知って欲しい」と述べ,相談出来る身近なかかりつけの医師をぜひもつよう訴えた.
 また,COPD患者がインフルエンザに罹ると急性増悪する危険性があるとして,ワクチン接種の重要性を指摘.その場合,患者と家族,介護者への接種が望ましいとした.肺炎球菌ワクチンについても,効果が五年であることや再接種が許可されたことを説明したうえで,COPD患者は接種した方が良いとの考えを示した.
 さらに,COPDの治療には,患者さんを中心として地域全体で医療連携ネットワークを構築することが重要であり,日医として,日本呼吸器学会や結核予防会などと協力し,全国的な連携システムの構築に向け準備を進めていることも紹介した.
 北川知佳長崎呼吸器リハビリクリニックリハビリテーション科主任理学療法士は,呼吸リハビリテーションについて,口すぼめ呼吸や腹式呼吸など,呼吸法のトレーニングを実演しながら解説を行った.参加者は,四百九十六名.
 フォーラム終了後には,参加者を対象にスパイロメーターを用いた肺年齢測定の体験会が実施され五十名が参加した.
 なお,当日の模様は,二月二十八日に,NHK教育テレビ「日曜フォーラム」で放映される予定.

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