日医ニュース
日医ニュース目次 第1164号(平成22年3月5日)

竹嶋副会長,中川常任理事
中医協での答申取りまとめを受けて日医の見解示す

竹嶋副会長,中川常任理事/中医協での答申取りまとめを受けて日医の見解示す(写真) 竹嶋康弘副会長,中川俊男常任理事は二月十二日,同日開催された中医協で平成二十二年度診療報酬改定に関する答申が取りまとめられたことを受けて,厚生労働省で記者会見を行い,日医の見解を明らかにした.
 竹嶋副会長は,まず,今回の診療報酬改定について,改定率が小幅にとどまったことから,前回に続いて,財政中立の議論にならざるを得なかったと振り返り,その影響を受けて診療所の再診料が引き下げられたことは誠に遺憾であるとし,今後の診療所経営への影響を危惧した.
 また,中医協のあり方についても触れ,中医協委員は広く医療の現場の意見を集約する必要があるとの考えを示し,日医役員を中医協委員に早期に復帰させるべきだと主張した.
 さらに同副会長は,今回の改定だけでは医療の崩壊を食い止めることは出来ないとして,今後も,「地域医療を守る医療費の確保」「医師・看護職等の不足の解消」等に向けて努力していく意向を示した.

財務省主導の診療報酬改定を批判

 引き続き,中川常任理事が,(一)新政権の見通しの甘さと公約後退,(二)財務省主導の改定,(三)実質ゼロ改定の意味合い,(四)不透明な改定財源による制約,(五)中医協の進め方について,(六)これからの医療政策─の視点から,今回の改定に対する日医の考えを説明した.
 (一)では,政権与党である民主党が先の衆院選前には診療報酬を二割引き上げる必要があるとの認識を示していたにもかかわらず,政権交代後漸次圧縮され,最終的に診療報酬改定率は全体(ネット)でプラス〇・一九%になったことに言及.医療現場は激しく失望したとするとともに,今回の診療報酬改定を通じて,はからずも,現政権の医療政策についての財源論が甚だ甘かったことが露呈されたと指摘.
 さらに,改定率決定に至るまでの間,鳩山由紀夫総理のリーダーシップがまったく発揮されなかったとして,「新政権が診療報酬だけではなく,医療政策全体について,熱意を失っているのではないかと疑問視せざるを得ない」と述べた.
 (二)では,昨年十一月に行われた事業仕分けの議論に診療報酬の配分が取り上げられたことについて,医療費財源を抑制し,財政中立の下で配分するために,不適当なデータを持ち出し,病院と診療所,勤務医と開業医の対立構造に持ち込んだものであったと批判.政権与党は「政治主導」を掲げていたが,事業仕分けはまさに「財務省主導」で行われ,結局,今回の診療報酬改定も財務省に支配されていったと言わざるを得ないとした.
 (三)では,今回の改定率が実質ゼロとの指摘に対して,厚労省が「先発医薬品の追加引き下げ分は,後発医薬品の使用促進と同様,従来,診療報酬の改定財源としていない」と弁明していることについて,後発医薬品の引き下げ分が改定財源として使用された平成二十年度の改定を例に挙げ,厚労省の反論自体が財務省の術中にはまっていると批判した.
 (四)では,(1)医科,歯科,調剤の配分の見直しが行われたことに対する厚労省の明確な説明がないこと(2)中医協で議論される前に,医科本体に関しては,入院プラス三・〇三%,外来プラス〇・三一%との枠がはめられてしまったこと─等を問題視.再診料が六十九点で統一されたことについても,診療所の再診料を引き下げ,病院の再診料を引き上げて統一することこそが財務省が狙った配分の見直しの実現であり,改めて,財務省主導の診療報酬改定であったことが浮き彫りになったと指摘した.
 (五)では,日医の前中医協委員が再任されなかったことについて,日医に特段の相談もなく,中医協委員が内定されたことは非常に遺憾であり,現在も納得していないと主張.
 今回の改定に係る議論については,客観的な立場から,もどかしい思いをしたことも少なくなかったとする一方で,財務省が,病院と診療所の分断を図ろうとするなかで,診療側が一致団結して,対立構造を超越した提言を行ってきたことは評価出来るとした.
 さらに,今回の再診料に関する議論等が時間切れとなり,公益裁定に持ち込まれたことに関しては,時間切れとなるような論点整理,スケジュールにこそ問題があると指摘.「次回こそ,充実した議論を行えるよう体制,計画の見直しを求めたい」と述べた.
 (六)では,現政権が社会保障費年二千二百億円の削減を完全に撤廃したことを評価するとともに,公約に医療費の増大を掲げていることにも期待感を示し,今後の展開に期待を寄せており,引き続き後押ししていく意向を表明.現政権には改めて,医療政策全体の長期ビジョンを示して欲しいと要望した.
 また,「日医としても,『グランドデザイン』をさらに進化させ,政権与党ばかりでなく,野党,関係団体等と,医療政策について,本質的・建設的な議論をしていきたい」と述べた.

再診料の引き下げは医療崩壊を深刻化させる

 同日の会見で,中川常任理事は,二月十日の中医協総会で公益側裁定により,病院と診療所の再診料が六十九点に統一されたことに対しても,日医の考えを説明.「今回の診療所の再診料の引き下げは,理解も納得も出来ない」と述べ,引き下げに強い不満を表明した.
 同常任理事は,再診料は,診療所,ひいては地域医療存立の基盤であると強調.これを引き下げることで,診療所に大きな打撃を与え弱体化させることは,結果的に,地域医療連携を完全に断ち切り,病院に負担を集中させて,医療崩壊をさらに深刻化させることになるとした.
 また,今回の中医協における再診料の議論についても,診療側委員は,再診料を診療所の水準で統一するのであれば合意出来るとの見解を示したにもかかわらず,結果的に,統一に合意したという点だけが独り歩きし,なし崩し的に,診療所の再診料を引き下げて統一化することになったと指摘.さらに,中医協の遠藤久夫会長が,今回の公益裁定の理由に「財政制約があった」ことを挙げていることについても,基本診療料の主体である再診料よりも重点課題に財源を優先する理由が全く明確でないと批判.診療所の再診料を引き下げるため,財務省に支配されて,あえて財源がないという既成事実を作らざるを得なかったのではないかと不信感を抱かざるを得ないと述べた.
 今後については,「今回,診療所の再診料が引き下げられたことで,次回改定以降,財務省主導の財政中立による締め付けがさらに進められることを強く危惧する.中医協に対しては,今回の改定結果を確実に検証し,医療現場,国民医療に与えた影響を謙虚に把握して欲しい」と要望した.
 さらに,政府に対しては,「日本の医療全体を見据えた医療政策を構築し,国民的な合意の下で,政治主導により,それを実現して欲しい」と述べた.
 その後の記者との質疑応答のなかで,新たに設けられる「地域医療貢献加算」に対する日医の考えを問われた中川常任理事は,「今回の加算はあくまでも加算であって,基本診療料ではない.加算を設ける代わりに基本診療料を引き下げられたのでは意味がない」と指摘.「基本診療料は,地域医療を支えるわれわれの魂であり,それを引き下げることが常態化されれば,地域医療を支えるわれわれの気力は失われてしまう」と述べた.
 また,厚労省が診療所の三割で「地域医療貢献加算」が算定可能としていることについても,多くの診療所が算定可能となるような要件となるよう働き掛けを行っていく考えを示した.
 外来管理加算の五分要件が撤廃されることになったことに関しては,「民主党のマニフェストにも記載されていたことであり,撤廃されることは当然のことだと思う」と主張.また,診療側の委員の提案により,いわゆる未受診投薬の場合には外来管理加算が算定出来なくなったことについては,「診療側委員も苦渋の提案だったのだろう」として,一定の理解を示した.

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