日医ニュース
日医ニュース目次 第1166号(平成22年4月5日)

日医定例記者会見

3月10日
医療事故における責任問題検討委員会答申まとまる

日医定例記者会見/3月10日/医療事故における責任問題検討委員会答申まとまる(写真) 木下勝之常任理事は,医療事故における責任問題検討委員会(委員長:樋口範雄東大大学院教授)がこのほど取りまとめた答申の内容について説明した.
 本委員会に対する唐澤人会長からの諮問は,「医療事故による死亡に対する刑事責任・民事責任・行政処分の関係の整理,並びに今後のあり方に関する提言」であり,今回の答申は,十回の委員会を開催して取りまとめられたものである.
 答申では,医療事故については,現状の刑事処分があった後,行政処分と民事訴訟が行われるといった形式的なシステムではなく,真に医療安全に資するものにするためにも,(一)刑事処分は故意またはそれに準ずる悪質なケースに限定すべき,(二)行政処分についても医療者がいかにして再生を図れるかに焦点を置く処分を基本とし,その内容を決定するに当たっては,事故の後,原因究明と再発防止にどれだけ協力したかも考慮すべき─との考え方のもとに,以下の三つの事項((1)医療事故に対する原因究明と再発防止策を検討するシステムの構築(2)医療事故の原因となった医師について,事故から学び復帰を援助する行政処分のシステムの新たな構築(3)医療事故にかかわるシステムを医療専門家の集団が中心となる自律的システムとして構想するとともに,そのなかに国民の代表も取り込んだ,透明性のあるシステムとすること)を提言.日医に対しては,システムの構築と改善に向けて最大限努力することを求めている.
 会見のなかで,木下常任理事は,不利益を課すだけの制裁型の法的責任追及では,医療本来の業務を阻害し,むしろ弊害の大きいことは明らかだと指摘.
 今日の萎縮医療と呼ばれるような現象や,外科,産婦人科等の医療専門家への志望が目に見えて減少する事態を打開するために,医療事故に対して,制裁型刑事処分を改め,再教育を前面に出した行政処分を中心とする,新たな法の支援の仕組みを構築するため,本委員会を立ち上げたと説明した.
 政府に対しては,「医療事故による死亡に対する新たな死因究明制度について,民主党が作成した『医療の納得・安全促進法案=患者支援法案』を基に議論すると思われるが,新たな法案の作成に当たっては,今回の答申で提言された医療安全に資する新たな法のシステムの考え方も取り入れ,早期に検討を開始して欲しい」と述べた.

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