日医ニュース
日医ニュース目次 第1170号(平成22年6月5日)

新型インフルエンザワクチン,医療機関在庫の返品を求め要望書提出

新型インフルエンザワクチン,医療機関在庫の返品を求め要望書提出(写真1) 羽生田俊副会長,保坂シゲリ常任理事は五月二十一日,民主党幹事長室を訪れ,小沢一郎幹事長に原中勝征会長名の要望書「新型インフルエンザA(H1N1)ワクチン医療機関在庫の返品に関する要望」を提出した.
 要望書では,「平成二十一年五月の国内発生以降,全国に感染が拡大し,各地域の医療機関は感染者の診療ならびにワクチン接種等,昼夜を問わず懸命に対応してきたと強調.ワクチン在庫の発生は医療機関の責に帰すべきものではなく,このまま放置すれば,今後のさらなる新興感染症等に対する協力体制に深刻な影響を及ぼすことが強く懸念される」として,緊急事態に懸命かつ真摯に対応してきた各医療機関の努力に応えるためにも,医療機関在庫ワクチンの返品および国による費用償還の実現を強く求めた.
 当日,要望書を受け取った青木愛民主党副幹事長は,「今回受けた要望を党に伝え検討したい」と述べた.
 要望書提出に先立ち,羽生田副会長,保坂常任理事は,同日,民主党「厚生労働委員会議員政策研究会 予防接種法小委員会」(座長:田名部匡代衆議院議員,共同事務局長:仁木博文・大西健介両衆議院議員)に招かれ,意見を述べた.
 当日の議事は,「新型インフルエンザ対策の問題点と今後」「予防接種法改正案の検討」「子宮頸がん予防ワクチンの公費助成について」であり,保坂常任理事が予防接種の課題について説明した.
 同常任理事は,要望書の内容を説明するとともに在庫発生の背景と懸念される問題を示し,医療機関在庫ワクチンの返品および国による費用償還の実現を要望.さらに,厚生労働省 新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議に出席した際の資料を提出し,最大の問題点は,「国が一部分のみ統制的に行い,全体について責任を持って取り組まなかったこと」と指摘し,「国の対応が不十分であった点は,現場が犠牲を払って補っており,協力したすべての医療機関と医師をはじめとする医療従事者に対して,国の対応が不完全であったことを謝罪し,その上で深い感謝の意を表すことが必要」と述べた.
新型インフルエンザワクチン,医療機関在庫の返品を求め要望書提出(写真2) また,今後の予防接種の課題として,日本と諸外国のワクチンギャップを取り上げ,現在,任意接種で実費徴収されているワクチン(水痘,おたふく,Hib,肺炎球菌,HPV,B型肝炎など)について,公費負担による定期接種化を要望した.
 つづく質疑応答では,羽生田副会長が,今回の新型インフルエンザについて,「現場では,パンデミック初期の頃,電話相談が非常に多く,ワクチンを接種する時間も制限されるほどであった」と振り返り,パンデミック時に国民を安心させる情報整備が必要と主張した.さらに,諸外国に比べ,日本での死者が少なかったことを取り上げ,「日本の医療提供体制の良さを総括に取り入れるべき」と述べた.
 保坂常任理事は,ワクチンに掛かるコストについて,「購入価格自体も問題のひとつである.一方,大型容器のワクチンは,接種回数どおり使いきれるものではなかった.さらに,今回のワクチン接種料には,診察,ワクチン接種等の技術料だけでなく,接種の予約や,電話相談への応答なども,含められてしまっていた.国は,ワクチン接種の予約代行など,医療機関の負担を軽減する措置を行う必要があり配慮が足りなかった」と述べた.
 議員からは,意見交換を受けて,「新型インフルエンザに対する総括を行い,対応を明確にしなければ,現場の医師からの信用を無くしてしまう.国は,何らかの意思表示をする必要がある」との意見や,今後の予防接種の課題として取り上げられた,公費負担による定期接種化の要望に対しては,ワクチン接種の公費助成は民主党のマニフェストにも盛り込む予定であるとし,「遅れたワクチン行政を進めるため,抜本的な予防接種法の改正に向けて取り組みたい」などの意見が示された.

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